2008年12月21日日曜日

Review of 2008

実は、今回のブログが今年最後の更新になりそうだ。

今週から早めの休暇をいただき、オーストラリアに行く予定なので次週の更新が難しそうだからだ。

貯まったマイレージと豪ドルに対する円高を利用した旅で、さぞ安上がりになるものと期待していたのだが、サーチャージという原油高騰の「置き土産」は重くのしかかった。。。

今回の旅行の様子は、また、改めてご紹介する予定したいと思う。


さて、今年を締めくくるにあたり、簡単に今年を振り返りながら、今の日本の現状を自分なりに考察してみることにする。

(為替~円高の影響)

今年に入って早々、日経新聞では「YEN漂流」という特集が組まれた。

記事のトーンとしては、円の価値が高まることによっておこる円高は歓迎せず、円安になることを歓迎するような日本の風潮は考え直すべき、という内容だったと記憶している。

本当にそうなのか?

その答えは今の状況が物語っているが、輸出型製造業が経済をけん引する、「日本型ビジネスモデル」にとっては円高への耐久力は、残念ながら、乏しいと判断せざるを得ない。そういった日本経済の「体質」の読み違えに加えて、当時、金利の安かった円でお金を借りて、金利の高い通貨で運用する「キャリートレード」のインパクトをUndervalueしていたとも言えるだろう。

金融危機をきっかけに、世界中の金融システムがマヒしてしまい、景気の後退期に入ったこともあるので、円高になったことだけが日本経済の不振を招いていると言えないとも思う。ただ、円高が企業活動のベネフィットになっているということは、ついぞ聞かれない。最近の日経新聞で、ホンダの2009年3月期下期営業赤字、トヨタの2009年期通期営業赤字が報じられているが、電機業界のこの年の瀬の業績不振を含めて考えても、為替インパクトがいかに大きいかが容易に想像できる。

改めていう必要もなかそうが、通貨の価値は様々な要因が絡み合って決まるものだから、通貨の価値をセオリー通りに語ったところで、説得力に乏しい。日経新聞は、毎日目にするのであえて苦言を申し上げたいと思うが、結論ありきで記事をまとめるのではなく、様々な現状・環境を踏まえた上で、丁寧に取材をしていただきたいと思う。彼らの情報収集力からすれば、時々のトレンドを読む力は、われわれ一般人よりはずっとすぐれているはずである。

話を戻すが、今回の一連の円高を通じてはっきりしたのは、日本は、依然、「輸出型製造業」のビジネスモデルを脱却しておらず、一部の例外を除いて円高をアドバンテージにできる構造になっていない、ということだろう。

(雇用)
また、非正規社員の問題が取りざたされている。突然の解雇に世界的な大企業は理不尽だ、とも受け取られるトーンが散見される。

だが、これは企業の責任なのか?

2004年の労働者派遣法改正により、「物の製造業務(製造業)」への派遣が解禁され、工場で派遣社員を雇うことができるようになった。一節によれば、国際競争力の低下を恐れた産業界からの強い要望で叶った法律らしいが、いずれにしても、その法律を立法化するのは政治的判断だ。よって、今回の「ハケン切り」とも言われる、行為の根本的な責任は政府にあると考えるべきだと思う。

もちろん、法的・道義的に対応が的確か否かというレベルの話はあるだろう。ただし、会社を存続させ、適正利益を出し続けなければならない企業にとっては、苦しい時に人件費を調整することで、もともと固定費である人件費を変動費に変えられる、労働者派遣法の改正は、大変、都合が良いだろうし、活用しない手はないだろう。

解雇される派遣社員の取扱は、派遣法の改正を承認した政府がきちんとケアする必要がある。それができないならば、もう一度、法律を再考する必要もあるだろう。だから、これは個別の企業が考えるべき課題ではなく、その法律を承認した政府が解決すべき課題なのだ。よって、矛先を間違えてはいけない。

(今の日本経済の主役の弱み)

為替と雇用の問題は結び付かないような気がしたが、接点を見出した。それは、輸出型製造業が経済の主役である、「日本型ビジネスモデル」の弱みである。

なぜ、輸出型製造業が経済の主役といえるか?

2005年2月以降経団連の会長にトヨタ自動車の奥田元会長、キャノン会長の御手洗社長が就任しているのは偶然ではないだろう。

(製造業の恩恵と方向転換)

輸出主導の製造業は極端に円高に弱い。他の通貨と比べ、通貨の価値が上がることは、本来、生活水準を上げる良いトリガーになるはずであるが、日本は、輸出主導型ビジネスの比率があまりにも高いために、主役の輸出型製造業の停滞は即座に企業の業績、ひいては、社員の給与や周囲の産業にネガティブ・インパクトをもたらす。

そもそも製造業は一定の雇用をもたらすので、国にとっても、地方にとっても良いことと受け止められる。○○デンキが、町や村に工場ひとつ作ってくれれば、何百人、規模によっては、何千人の一定規模の安定雇用を生み出す。一定の収入を得る人がコミュニティ単位で飛び出すから、それなりにコミュニティのなかで顔が見えることとなり、社会的にも「安定」するし、行政にとっては、税収も安定するので、大きなメリットだったわけである。

中国のWTO加盟などと前後して、グローバル化の本格的な開始され、製造プロセスが海を渡り、中国など低賃金の諸外国と競合することになった。今度は会社側が、「利益確保・追及」という目的で、製造拠点をアジアを中心に海外に設ける動きに出て、国内は空洞化した。経済界と政界がどのような話し合いをもったか詳細は知らないが、そういった国内の雇用減少を危惧した政界からの雇用増の要請に対して、経済界は「コスト削減」を錦の御旗に人件費減少の方策を要求し、先の労働者派遣法改正議論が出てのではないか。

結果、製造・生産活動の季節調整も行えるようになったはいいが、生産現場の労働者が派遣社員になったことで、雇用が流動化したために、「技術の継承」という理想的なモノづくり現場のスタイルもなくなり、一定期間が終われば次の現場に、とサイクル化し、コミュニティは崩壊し、安定感が失われていく。その負の側面の象徴的な出来事として、「無差別」殺傷の事件が出てくるものと思われるが、もし、人と人との関係が築かれたコミュニティのままであれば、あのような事件は起こらなかったのではないか。以前のコミュニティは、大金持ちにはなれないが、家族を養うレベルの収入はあり、世帯間・個々人との結びつきは保たれたものだったに違いない。最も成功した「社会主義」といわれる日本の社会・経済活動はこうやって所得の再配分と社会の安定をもたらしたわけだ。

(新しいビジネスモデルの模索に向けて)

米国の金融産業をベースとしたビジネスモデルが危機だと言われる。ただ、日本のビジネスモデルも危機的な状況であることに間違いはない。先に触れた為替の弱みは、日本の収入面でみれば、欧米の金融市場主義に支えられていたともいえる。ただ、その支えをなくしつつあるわけだから、これまで、コスト面(=雇用など)だけを気にしていれば良いのとは異なることに配慮しなければなくなる。以前、流行した「ザ・ゴール」という本のポイントではないが、国家レベルで収入とコストの「最適化」を図ることができる、新しい日本型ビジネスモデルを考えなければならない。アメリカがこの10年強で築き上げた金融至上主義の経済モデルでは、製造業と比べて雇用は生まれないだろうし、今回の金融危機で、同様のモデルを目指すのも難しくなったであろう。

課題はクリアになってきているが、それを解決できる人材がいるかということがもうひとつの課題である。日本には、50歳前後の、政治・経済をリードするだけの人材がどれだけ育っているのか、甚だ疑問である。来年以降徐々に、アメリカのオバマ大統領やイギリスの保守党キャメロン党首など、世界の政界は、おそらくフレッシュな顔ぶれになっていくものと予想される。一方、日本の政治はといえば、安部元首相の辞任で政界の若返りは遠のいたままだ。

このように日本には根の深い課題はあるが、一方で、それだけ、改革の余地も多いということ。来年は、革新的なビジネスモデルとそれを支える政治を築くことができる年になればと思う。自身もそれも念頭にこのブログを続けていければいいと思う。

K

2008年12月14日日曜日

US dollar

米ドルの動きから目が離せない、と先週のブログでお伝えした。先週の動きは、結果的にそれを裏付け、金曜日にはドルは円に対して値を下げ、1ドル90円を割るところまできた。



一体、どうなっているのか?

まず、先週発表されたアメリカの各種統計結果の悪化がその原因と指摘されている。具体的には、貿易赤字の拡大(10月に572億ドル)、失業率の悪化、家計における資産価値の低下(4.7%ダウンで4四半期連続の低下)、担保を元にした借入の記録的な低下、などだ。

The dollar fell sharply on Thursday – and gold rose – as a surprise deterioration in the US trade balance undermined a key prop for the US currency and economic growth.
The figures, which showed the trade deficit widening to $57.2bn in October in spite of lower fuel prices, came as analysts increased sharply their estimate of the pace of economic contraction in the US this quarter. Macroeconomic Advisers, a consultancy firm, estimated that the US is on track for an annualised decline of 6.6 per cent.

Fresh data on unemployment claims also suggested there was no respite in the deteriorating jobs market. Meanwhile, a Federal Reserve survey showed US household net worth decreased by 4.7 per cent in the third quarter, the fourth consecutive quarterly decline. US mortgage borrowing fell at the fastest pace on record.

(The Financial Times, “US dollar falls on poor trade figures”, December 11 2008, Krishna Guha, Michael Mackenzie, Norma Cohen)

こういった金融を取り巻く厳しい環境のために、安全資産に資金を移動する志向が強まり、ついに米国短期国債はマイナスになったという。

 九日のニューヨーク債券市場で代表的な短期国債である米財務省証券(TB)三カ月物の利回りが史上初とみられるマイナス圏に低下した。金融危機や景気減速を背景に「少しでも安全な資産にお金を投じたい」と考える投資家が増えているため。自ら金利を払って国にお金を預けるという異例の事態になっている。

 利回り低下の主因は、投資家がリスクの高い証券を敬遠していること。現金は保管や盗難対策にコストがかかり、預金も銀行に破綻リスクがある。半面、国が相手のTBはお金を取り戻せなくなる可能性が限りなく低い。マネーが消去法的に「安全資産」のTBへ流入、利回りを押し下げた。

 みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「投資家は手数料を払い貸金庫に預ける感覚で買っている」と指摘。日本も信用不安が高まった一九九八年十一月に割引短期国債三カ月物と六カ月物の利回りがマイナスになった。
(「金融危機で日米の金利異変――米短期国債の利回りマイナス」、2008/12/11, 日本経済新聞)

国債が貸金庫代りになるという見立てであるが、これは、国債の価格上昇も意味する。

元に戻るが、米ドルの下落は、3大自動車メーカーの救済策が議会を通過しなかったのも大きな痛手であったに違いない。今回、議会をパスしなかったことで、今後の選択肢は限られ、Chapter11の可能性も出てきており、そのため、米ドルを買う理由が見当たらず、1ドル85円になる可能性も指摘されている。というのも、PRDC(Power Reverse Dual Currency bonds)といわれる、通貨のコール・オプションを組み合わせて円の上昇をリ・ヘッジする、リバースデュアルカレンシー債(発行と償還は円で、利払いが外貨で行われる債券)の一種が、1ドル90円の突破をきっかけに、85円、80円になるという。

The dollar slid to its lowest in 13 years against the yen on Friday as the US Senate failed to agree on a bailout for the three US automakers.
The dollar fell to as low as Y88.40 against the Japanese currency before stabilising at around Y89.38 in recent trading.

“It seems like they’ve all but given up,” said Yuji Saito, head of the FX group at Societe Generale in Tokyo. “The concern out there is what will happen now and the few choices that are left, which could include Chapter 11, so that leaves no reason for investors to buy dollars.”
There was a possibility that the yen could reach Y85 in New York trading time, he said.

(中略)

Societe Generale’s Mr Saito said that today’s sudden gains had been exacerbated by knock-outs for so-called power reverse dual currency bonds, which were triggered at Y90, with still more believed to be at Y85 and Y80, he said.
PRDCs are currency-linked bonds that need rehedging when the yen suddenly rises.
(“Dollar slides to 13-year low against the yen”, Lindsay Whipp, December 12 2008 )

このようななか、政府はどう立ち居ふるまうのか。

まず、日本政府であるが、財務省高官は状況次第で適切な処置を施すとし、中山財務大臣は、現段階での通貨への介入を否定している。

 Japan’s Ministry of Finance voiced concern over the sudden strength of the yen. Naoyuki Shinohara, vice finance minister for international affairs, said the currency moves were excessive and that he was concerned about it. He told reporters that the ministry would act “appropriately” depending on the situation.

 Shoichi Nakagawa, finance minister, said the ministry was not considering intervening at the moment, according to Dow Jones.
(“Dollar slides to 13-year low against the yen”, Lindsay Whipp, December 12 2008 )

また、米政府当局が、近々、発表される住宅ローン金利を下げるのではないか、との見方も紹介されている。
 
 Some analysts speculate that the US authorities could soon announce a plan to drive down mortgage rates, possibly involving banks issuing low-rate loans securitised by Fannie Mae and Freddie Mac and acquired by the Fed.
(The Financial Times, “US dollar falls on poor trade figures”, December 11 2008, Krishna Guha, Michael Mackenzie, Norma Cohen)

 今週は、FOMCが16日(火)に政策金利を発表する。
 
 このような環境であれば、金利引き下げを予想するほうが順当であろう。これはとりも直さず、米ドル下落につながるであろうから、先週末からの円高傾向は収まらないだろう。

 最近、読んだ松藤民輔氏の理論に基づけば、この金利低下は株式市況の悪化につながり、Dowの下落も予想される。五月雨式に日経平均も下げてしまうだろう。

  米政策金利低下→ドル安/円高、アメリカ市場の株価低下→日経平均の下落

というのが来週の動きか。日本の自動車、電機など輸出系企業は試練になりそうだ。

松藤氏のことは、また、別な機会にまとめたいと思う。

K

2008年12月7日日曜日

This week's policy rate announcement

結果的に今週発表されたオーストラリア準備銀行、ニュージーランド準備銀行、ECB、イングランド中央銀行の政策金利発表は、想定の範囲内という結果だったであろうか。

12月2日:オーストラリア・ドル- 4.25%(1.0%利下げ)
12月4日:ニュージーランド・ドル-5.00%(1.5%利下げ)
同:  ユーロ-2.50%(0.75%利下げ)
同:  ポンド-2.00%(1.0%利下げ)

その証拠に通貨の変動は思ったほど大きくなく、ボックス圏内の動きという印象で、終わってみれば、ポンド以外は先週の終値とそれほど変わってはいない。

オーストラリア・ドル


ニュージーランド・ドル


ユーロ


ポンド


また、12/5の日経新聞では、特にオセアニアの2通貨について楽観的な見通しを示しており、一段の利下げも見通されるものの、その後、様子見に転じ、反発の可能性すらもあるという。依然、高水準の金利レベルであるがために、両通貨に投資を行っている人も少なくないだろうから、こうした見方は歓迎すべきところであろう。

以下、その記事の抜粋である。

外国為替市場でオーストラリア・ドルとニュージーランド(NZ)ドルの売り圧力が和らいできた。両国は相次ぎ大幅な利下げに踏み切ったが、通貨はむしろ買い戻された。金融当局が政策金利は緩和的な水準になってきたとの見解を示し、市場で大幅な利下げ観測が後退したためだ。これまでの金融緩和や通貨安による景気の下支えを期待する声も出ている。

 ▼…「金融政策は緩和的な水準に達した」。NZ準備銀行(中央銀行)は四日、一・五%の大幅利下げを実施した。同中銀のボラード総裁は追加利下げに含みを持たせつつ、政策金利水準についてこう言及した。二日に一%の利下げを決めた豪準備銀行(中銀)のスティーブンス総裁も自国の金利水準に同じような見方を示している。
 「オセアニア圏は緊急利下げモードを解除しつつある」(野村証券金融経済研究所)。NZ中銀は七月から急ピッチで金融緩和を実施。八・二五%あった政策金利は五%になり、利下げ幅は合計で三・二 五%に達した。豪州中銀も九月から政策金利を三%引き下げ、四・二五%とした。

 ▼…世界経済の減速のあおりで両国とも金融政策はなお緩和方向とみられるが、市場ではあと一%程度の利下げを実施した後は様子見に転じるとの予想が浮上している。米国のようにゼロ金利に追い込まれるとの見方はない。
  「豪州とNZの利下げは為替相場にかなり織り込まれ、目先は反発の可能性もある」(ロイヤルバンク・オブ・スコットランドの山本雅文氏)。豪ドルもNZドルも利下げ直後は買いが優勢となった。豪ドルは一豪ドル=六〇円前後で急落に歯止めがかかり、NZドルも一NZドル=四九円程度で踏みとどまっている。四日の利下げ後に通貨安が進んだスウェーデンとは対照的だ。

 ▼…新光証券の林秀毅氏は「これまでの利下げが豪州の内需に効いてくる」と指摘する。 豪州経済は七―九月期もプラス成長を保ち、十月の小売売上高は市場の予想に反して増加した。NZでは住宅ローン申請件数の減少幅が縮小傾向にあるなど、景気指標が悪化一辺倒の日米欧とは状況がやや異なる。急速に進んだ通貨安も、輸出に追い風となる。景気刺激策の実施に伴い、追加的な財政出動も見込まれている。

 世界経済や金融情勢は予断を許さず、市場が混乱すれば豪ドルやNZドルは再び下落基調になる可能性も否定できない。ただ、このところ株価も 急激な下落に歯止めがかかるなど、市場心理は少し変わりつつある。二〇〇〇年のITバブル崩壊後の金融緩和局面も、豪州とNZはいち早く脱した。オセアニア地域の金融政策スタンスの変化は、世界の先取りになるかもしれない。(M)
(「豪州・NZ、通貨売り圧力が緩和、大幅利下げ観測後退で(マーケットウオッチャー)」2008/12/05, 日本経済新聞 朝刊)

オセアニアの楽観的な見通しの一方で、米統計の発表は悪い内容が相次いだ。

12/3: 11月の非農業部門の全米雇用者数(ADP社調査)-前月比25万人減

同: 米サプライマネジメント協会の非製造業景況感指数-37.3(前月比7.1ポイント減)/好不況の分かれ目である50を二カ月連続で割り込み、市場の事前予想(42.0)も大きく下回った。

同: 地区連銀経済報告(ベージュブック) -「経済全般は全地域で弱まった」と判断。

12/5: 米11月の雇用統計-失業率 6.7%/前月比 53.3万人減少

これを受けて、円に対する米ドルは徐々に弱含んで推移している。ただ、市場のなかには、この円高傾向は長くは続かず、一定レベルで留まると予測している声もある。決算による米企業の海外拠点から本社への送金や、円の買い持ちの手仕舞いなどが予想されるからだ。ただ、これもクリスマス休暇に入る、22日にはおさまり、そこから、円高に再び、向かうという予測だ。

米ドルは、しばらく予断が許さない。

2008年11月30日日曜日

Gap between real economy and financial assets

今回の金融危機のインパクトが「100年に1度」といわれるくらいマグニチュードが大きく、かつ、その被害を大きくしているのは、実体経済と金融資産のかい離ではないか、と考察している。ここでいう実体経済をGDPとして実際に金融資産とどれくらい開きがあり、また、それはどのような影響を及ぼしているのであろうか。

2006年の週刊エコノミストのデータによれば、下記のような状況とのこと。

-世界の金融資産: 152兆ドル
-世界の名目GDP:  48兆ドル
-両者の開き:  3.2倍

どの指標を使うかにもよるが、その差は3倍強(だった)と考えるのが相場らしい。

木村証券の北村氏は、「日本の個人金融資産は潤沢」という通説に対して、名目GDPと金融資産の比較において、

・アメリカよりのほうが金融資産の比率が高いこと
(金融資産÷名目GDP=日本:303%、アメリカ:317.8%)

・名目GDPに対する現金・預金の比率は日本のほうが圧倒的に高いこと
(現金・預金÷名目GDP=日本:152%、アメリカ:40.2%)

を引き合いに出し、「個人金融資産の現金・預金の名目GDPに対する倍率が、米国の3.65倍と経済の規模に対して明らかに過剰な状況になっている」ことを指摘している。
(http://www.kimurasec.co.jp/column/2007/column07-06.html)

この発表が行われた当時の北村氏の論調は、その現預金の余剰が必然的に低金利をもたらし、銀行セクターの収益にネガティブ・インパクトをもたらす、として、必ずしも肯定的に捉えてはいない。だが、今回のような信用収縮による金融危機の状況であれば、キャッシュ・リッチな日本の状況に悲観的な見方ばかりをするべきではないだろう。

すなわち、現金比率が高い国ほど、信用を基にした、「レバレッジ型金融ビジネス」の比率は低くなるわけだが、その分、金融をとりまく環境が反転したときの信用収縮の影響は受けにくい。他方、「Debt調達・Equity投資」を得意とした、近年の投資銀行型ビジネスモデルは、現金比率が低い分、信用収縮の結果、デレバレッジが進行すると、あっという間に駄目になってしまう。

現在、円はいずれの通貨に対しても強含んでいるが、これは裏付けとなる現金の比率の高さが通貨の価値を支えているわけである。

先の北村氏は、当時、

現金の多さ→低金利→キャリートレードの活発化→円安

というフローをなると示唆しているのだが、

今回の金融危機においては、

現金の多さ→(他の通貨の利下げを受けて)相対的な金利の上昇→キャリートレード解消→円高

という逆転を生んでいる。

これはとりもなおさず、レバレッジ全盛期では評価が低かった国民による蓄積された預貯金が、逆にこの厳しい状況で海外投資家より評価されているという意味では、現在の円の評価は政界、官僚、産業界の努力の賜物とは言い難い。やや酷かもしれないが、昨今の株価低迷を考えると、金融を含む産業界の勢いのなさが目立つともいえる。

さて、今週は、12月2日(火)の豪準備銀行、12月4日(木)の欧州中央銀行、イングランド銀行、ニュージーランド準備銀行といった中央銀行の発表ラッシュである。市場では、オーストラリアが1%の利下げ、その他が0.5~1%の利下げという見方のようであるが、順当に考えられば、やはり円高に動くと見るのが妥当であろうか。目が離せない1週間になりそうである。

K

2008年11月23日日曜日

Investment strategy under deflation

最近、気になっているトレンドはデフレである。

ご存じのように、デフレとはモノの価格の低下することだが、Wikipedia日本語版によれば定義は以下のとおりとなる。

デフレーション(deflation)とは、物価が持続的に下落していく経済現象を指す。物価の下落は同時に貨幣価値の上昇も意味する。同じ金額の貨幣でより多くのものを買えるようになるからである。なお、株式や債券、不動産など資産価格の下落は通常デフレーションの概念に含まない

この夏までは原油高騰などもあり、インフレが騒がれたが、ここ最近、一転、デフレを警戒する声が出始めている。

まず、イングランド銀行の総裁である、Mervyn King氏のコメントを引用した、Financial Timesの記事から紹介したい。

“Mr King also declined to rule out the possibility of deflation. However, he said “there is a great likelihood” that RPI inflation – a rate which includes a measure of housing costs – will turn negative next year.”
(”Bank predicts deep recession next year”, Vanessa Houlder and Norma Cohen, November 12 2008 16:42)

来年には、イギリスにおける住宅価格の数値がマイナスになることを示唆している。

また、これを書いている最中に、イギリスの消費者物価が下がったとのニュースも届いている(” Consumer inflation falls to 4.5%”, BBC NEWS, November 18 2008)

“The Consumer Prices Index (CPI) measure dropped to 4.5% from 5.2% in September.”

続いては、今月9日に閉幕した20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議での声明から(Nikkei Net 11月10日「世界同時デフレへの危機感共有 G20会議」)。

“日米欧の主要国と新興国が「グローバルデフレ」への危機感を共有した。(中略)共同声明で「インフレ圧力が減少した」と指摘し、議長国ブラジルのマンテガ 財務相は「デフレへの懸念が強まった」と語った。”

また、アメリカにおいても、原油価格の値下げから、今後の不良債権処理も加わり、デフレが懸念されているとのことだ(日本経済新聞 10月30日「米、デフレ懸念が浮上、原油安で物価下落基調、低金利継続の環境整う)。

“米国で物価の継続的な下落を示すデフレの懸念が浮上してきた。原油価格の急落を主因に八月から輸入、卸売りの各段階の物価が前月比でマイナス基調に転じ、消費者物価はほぼ横ばいとなった。景気低迷や金融機関の不良債権処理が物価を一段と抑える可能性も膨らむ。米連邦準備理事会(FRB)が低金利政策を継続する環境が整ってきた。

 米労働省によると、輸入物価指数は八月に季節調整済みの前月比で二・六%、九月は三・〇%の幅でそれぞれ下がった。九月は石油以外にも工業用原料、自動車、消費財、飲食料などが軒並み低下。ドル安だけでなく需要の減退が響いており、卸売物価でも原材料の値下がりが急だ。
  メリルリンチの北米エコノミスト、ローゼンバーグ氏は二十七日公表したリポートで「次のマクロ経済の課題はデフレだ」と主張。住宅の値下がりや金融の収縮、雇用の悪化などもデフレに働くと指摘し、今は前年比でプラスの消費者物価指数が「マイナスになるのも時間の問題」との見方を明らかにした。
 一方、アトランタ連銀のロックハート総裁が「エネルギーと商品の値下がりでインフレ圧力はさらに後退する」との判断を示すなど、日ごろはインフレに敏感なFRBの関係者からもデフレ傾向への転換を示唆する発言が相次いでいる。

 米国の最大の課題である不良債権の処理も、担保となる不動産などの売却を迫る過程で物価を下押しする要因になる。原油価格が再び高騰するなど事態が急転しない限り、米国の物価の弱含みはしばらく続く見通しだ。

  金融政策も今後、デフレ対応が迫られそうだ。FRBのバーナンキ議長は日本のデフレに関心を持ってきた。二〇〇二年の講演で、克服に手間取った日本と対比 し、金融システムの安定性や経済の柔軟性を理由に「米国で顕著なデフレが起きる可能性は極めて低い」と述べたこともある。

 今は金融危機と景気後退の懸念が米国を覆い、かつて議長が挙げた前提は崩れた。利下げ観測にさらされる議長が担当外の財政出動を伴う景気刺激策を促すのも、需要不足がデフレを招く危機感のためだとみられる。”

そういったなか、どういう投資スタンスで臨むかは考えどころである。

一般的にデフレ期には土地や株式の価格が下がる一方、国債の価格は上昇する。そういったデフレ時に向けた投資のセオリーに則れば、通貨(特に為替リスクのない「円」)、もしくは国債への投資への投資へとウェイトを移すべきかもしれない。そうなれば、選択できるオプションとしては、以下のとおりであろうか。

・円建て預貯金
・(デフレ時には金利が下がり、債券価格(日本国債)が上がるという前提で)債券へ投資
・余裕があれば、日本国債など債権の「買い」に加え、下向きになる景気を見越して株式先物の「売り」を組み合わせる

余裕資金次第で、しかも、デフレへの移行の見極めが難しいが、これがデフレ移行期の投資としてはベストではないかと思う。

デフレへの脱却は半年から1年くらいのレンジで考えるべきだと思うが、その底値を見極めたらデフレからインフレに向かう移行期を見越す前提で、藤巻健史氏が推奨している、(デフレ期で)お買い得になった土地や株式を買い、国債や現金は売る、という戦略となるだろう。

下記のWebは参考になるので、参照されることをお勧めして、今回のBlogは終えたいと思う。

藤巻健史プロパガンダ 最新記事:
http://www.fujimaki-japan.com/propa/200811673336.html

FXスワップ派サラリーマンのまったり資産運用:http://salarymanmoney.blog79.fc2.com/blog-entry-615.html

K

2008年11月4日火曜日

Shanghai



先の3連休にプライベートで上海に行ってきた。中国は何回か訪れているが、上海は初めてだった。

すっきりと晴れた日はなく、雨なのか煙なのかわからない空模様だったが、それが却って神秘的に見えた。

街は高層ビルが立ち並ぶ浦東地区のような一角がある一方で、低層で昔ながらの建物が建つ古い街並みも残ってはいる。

ただ、これも万博が開かれる2010年には、ずいぶん、変わっているのかもしれない。


旅行先では、英語で読める地元の新聞を読むようにしている。

今回は、ホテルの部屋にデリバリーされた「Shanghai Daily」(http://www.shanghaidaily.com/)に目を通した。これはWebでも無料で読めるので、興味のある方は、ぜひ、ご覧いただきたい。上海現地のニュースはもちろんわかるし、世界のニュースも確認できるので、とてもコンパクトに情報がまとまっている。とても便利な新聞だ。

訪問期間中に特に印象だったのは、上海市長がホスト役を務め、世界の一流企業のエグゼクティブを集めたミーティングに関する記事だ。
(「Mayor to global CEOs: help us grow Shanghai」: http://www.shanghaidaily.com/sp/article/2008/200811/20081102/article_379166.htm)

まず、上海市は、中国における「直轄市」となっており、中国の「省」と同格、日本でいえば「県」のような位置づけとなっている。

また、人口は、中国国内で重慶に次ぐ第2位(1,857万人、2007年末)、一人当たりGDPは深圳市、香港に次ぐ水準(2008年推定で13189米ドル)とのことだ。

とここまではだいたい想像がつきそうであるが、驚くべきは、先の記事における招待客の顔ぶれである。

・Pricewaterhouse Coopers LLP Samuel A. DiPiazza CEO
・ABB Ltd. Joseph M. Hogan CEO
・Investor AB Jacob Wallenberg Cairman
・University of ColumbiaのSach教授

など

実業界から教育界までそうそうたる顔ぶれだ。

これら世界のVIPを相手に、Han Zheng上海市長がホスト役として会議を取り仕切るわけである。

内容はといえば、翌日のShanghai Daily(http://www.shanghaidaily.com/article/?id=379242&type=Business)を見る限り、上海の今年の経済発展の状況や、昨今の世界経済を見据えたうえで、今後の上海の経済見通しについて語るといったことで、特筆すべき内容ではないかもしれない。

ただ、こういうイベントでひとりの地方行政の首長が世界のVIPを招待できることに驚くとともに、日本からの参加は一人もいない、という状況にさみしさを憶える。

逆に、日本の地方の首長で、これだけの催しを取り仕切れるトップや団体がいるであろうか?

これは、単なるひとつのイベントだといって軽視はできないだろう。

こういったイベントを行うたびに、確実にエグゼクティブ・レベルの交流は深まるし、今後、ビジネスの連携の可能性が出た時に、確実にポジティブに左右するだろう。

こうしたしたたか、かつ、たくましい中国のアプローチをみるにつけ、いつの間にか、日本はいつか蚊帳の外で生活を営んでいました、という状況になるのではと危惧する次第である。

K

P.S.

下記YouTubeのサイトで今回の旅行の様子を紹介しているので、興味のある方は、ご覧いただきたい。

http://jp.youtube.com/watch?v=yGlkamL3gUw

2008年10月26日日曜日

CDS spreads: an indicator to measure corporation's life

先週の円高への動きは急激だった。

日本経済新聞やNHKなど主要なメディアで、米ドルに対する各国通貨の変動率を示したグラフが紹介されていたが、唯一、円のみが上昇している通貨となっていた。

円の立場で見ると、数十年ぶりの安値水準となっている通貨もいるが、27日(月)以降、円安方向に向かうのかどうか・・・FXや外貨預金で高い金利の通貨に投資している人には残念なニュースだが、もう一段の円高を予想する声が多いようだ。

と通貨の話を掘り下げたい気持ちはあるのだが、今回は、CDSスプレッドから、現在の金融状況を俯瞰してみたいと思う。

歴史的な円高水準の一方で、歴史的な下落に見舞われている日本株だが、実力に反して「安すぎる」と言われる株がある一方で、今後の先行きを懸念される会社が、このCDSスプレッドで垣間見えてくる。

東京金融取引所は、主要な日本企業のCDSスプレッドを公表(http://www.j-cds.com/index.html)しているのだが、すでに破たん寸前の「ファイナルカウントダウン」(三菱UFJ証券・藤戸則弘氏)というスプレッドの値を示している会社がいくつかある。

1,000bpを越える数値を示すとそれに該当するようであるが、このCDSスプレッドの高い上位5社をあげてみよう。

1.アイフル  1,970.00
2.武富士  1,704.00
3.日本航空  1,167.00
4.ソフトバンク  868.75
5.プロミス   539.00

先の基準に照らせば、これら5社のうち、上位3社が「ファイナルカウントダウン」を迎えているというわけだ。

さらに言えば、リーマン・ブラザースの破たん直前のCDSは、700bp台だったことを考えると、ソフトバンクを加えた4社の今後の動向は着目すべきであろう。

ちなみにCDSスプレッドの6~10番の企業は以下のようになる。

6.オリックス 458.75
7.全日本空輸 437.50
8.住友不動産 437.25
9.アコム 385.00
10.西松建設 383.00

業種としては、消費者金融と航空会社が目立つ。消費者金融各社については、株主上位に名を連ねる都市銀行各社(三井住友→プロミス、三菱UFJ→アコム)への影響も気になるところだ。

CDS関連でいえば、今週の日経ヴェリタスの国別の債務不履行リスクの保険料率も注目に値する。

直近の料率として、為替の「優等生」の日本は0.30%と最も低く、アメリカ、ドイツと上位は続くが、BRICsの一角を占めるロシアが、危険水域といわれる2ケタに乗せている(10.70%)のは要注意だ。

インドは紹介されていないのでわからないが、中国、ブラジルともに2ケタには届いていないので、その点でも余計に目立ってしまう。


今週は、最近、メディアでも取りざたされている、CDSスプレッドに注目した。

これらの値をにらみつつ、今週も金融動向に目が離せない1週間となりそうだ。

2008年10月19日日曜日

Dollar currency swaps and the influence on emerging currencies

米ドルは底堅さを見せている。

先週末と前週末のNYダウ、ナスダックと比較すると、

円/米ドル: +1%(ドル高)
NYダウ:  -4.75%
ナスダック: -3.75%

となり、昨今の景気見通しを考えれば、米ドルの動きはなかなか理解に苦しむところ。

この現象について、今週の「日経ヴェイタス」は「外国銀行のドル買い需要」と分析する。

その裏付として、

1) 日本株を売ってドルに戻す
2) (経営不安説が流れた)外国銀行がドル資金の調達目的でドルを買っている

としている。

ここでは、2)について注目してみたい。

ヴェリタスは、これまで外銀は円とドルの為替スワップを使ってドルを調達していたが、為替スワップ市場でのドル調達コストがリーマンの破綻後に2倍に膨らんだ結果、外銀が、直接、為替市場からドルを調達しており、それが結果的にドルの急落を阻んでいる、という。

ドル資産を持つ人には朗報のようだが、一方でドル以外の外国通貨を持つ人には、意外な落とし穴がありそうだ。高金利の有利性をうたい文句にしている、新興市場の通貨に影響を及ぼす可能性があるという指摘があるのだ。

17付Financial Times「Financial crisis stalks new victims」は、この課題に言及している。

連邦準備(銀行)と中央銀行の間で行われる無期限のドルの為替スワップは、超短期の資金需要を満たすためにスポット市場で直接ドルを調達したいという金融機関の負担を和らげ、通貨安定に寄与する、としているため、通貨スワップが有効でなくなった、とするヴェリタスの見立てと、やや異なる見解を示している。

しかし、より注目すべきは、東京三菱UFJ銀行のDerek Halpenny氏のコメントとして、紹介されている、次のコメントだ。

“In contrast, the lack of currency swaps put in place between the Federal Reserve and emerging market central banks has likely helped exacerbate the pick up in emerging market currency volatility,”

ドル需要を満たすドルの為替スワップも、結果として、新興国通貨に対するドルの為替スワップ分が不足することを予測しており、それが新興国の為替のボラティリティ(=リスク)を膨らませてしまうだろう、としている点だ。

米ドルの安定化とは裏腹に、昨今、FXや外貨預金で流行っている、新興国通貨(トルコ・リラ、南アフリカ・ランドなど)を持つ人は注意が必要だ。

K

2008年10月13日月曜日

Crutial plan for financial crisis in Europe

先週の欧州の為替の落ち込みはひどかった。2週間前と先週末の終値を比較して、円に対して7%、ドルに対して3%ほど、下落したユーロ。また、ポンドも円に対しては8%も下落した。

こうした弱含みに対し、

“It will be crucial for the eurozone to adopt a zone-wide plan to free up interbank lending, otherwise the euro will continue to suffer.”(Geoffrey Yu,UBS/10月10日 Financial Times)

という、欧州における幅広い対策、特に銀行間市場での短期の資金取引への対応を望む声が出ていた。

そうしたなか、日本時間の13日未明、欧州主要国首脳が銀行への資本注入に合意、といったニュースが飛び込んできた(”European Leaders Agree to Inject Cash Into Banks”,The New York Times)

そのニュースでは、2つのポイントが紹介されている。

・ 現地時間日曜日の夜、欧州各国の財務・政治の首脳は、動揺を見せる金融システムへの信用を回復することを目的に、数十億ユーロレベルで行き詰った銀行への資本注入を行う計画を発表。最大5年までの融資を保証。

原文: European financial and political leaders agreed late Sunday to a plan that would inject billions of euros into their banks in a bid to restore confidence to the teetering financial system.

Taking their cue from a rescue plan announced last week by Britain, the European countries led by Germany and France pledged to take equity stakes in distressed banks and vowed to guarantee bank lending for periods up to five years.

・ 欧州中央銀行はコマーシャル・ペーパー(企業が資金調達を行うために発行される短期の約束手形のこと。出典:All about マネー)市場を再開することをコミットメント(ベルギー財務大臣 Reynders氏)

原文: Mr. Reynders said the European Central Bank had also committed to helping to unfreeze the commercial paper market, which companies use to finance day-to-day operations.

また、そのニュースのなかで、Reynders氏は、”目的は銀行間取引に弾みをつけること”とコメントもしている。これは、ユーロ安/ポンド安の原因に踏み込んだ内容とも受け取られるものだ。

では、具体的には、どんな取り組みが行われるのか?

たとえばイギリスでは、アメリカ・日本の債券市場が休場となる月曜日に、英・政策当局が、不振の銀行に資本注入する計画を早急にまとめる。そのトップリストに挙げられているのが、時価総額が、6月の資本注入を下回る、120億ポンド(約2兆円)となっている、Royal Bank of Scotland(ちなみに、みずほフィナンシャルグループの直近の時価総額は4兆円弱)。

原文: With the bond market in the United States and all Japanese markets closed on Monday for holidays, British policy makers appeared to be speeding plans to inject capital into their troubled banks. At the top of the list is Royal Bank of Scotland, whose market value has fallen to below £12 billion pounds, or about $20 billion — less than the amount of capital it raised from private investors in June.

また、「日経速報ニュース」では、その具体策を以下のように報じている。

・ インターバンク(銀行間)市場での短期の資金取引に際し、資金の出し手が持つ債権を政府が保証する。付保は来年末までの時限措置とする。まずは金融機関どうしのお金の巡りをよくして、貸し渋りを防ぐ狙いだ。付保に際しては各国政府の判断で、銀行に個人や企業への融資増など「実体経済への貢献」を課すこともあると明記した。

・ 公的資金の注入では、優先株の取得などを通じて政府が経営危機に陥った銀行に資本を供与する。資本注入時には経営者や株主の責任を問うほか、適切なリストラ策をつくる。

詳細は「日経テレコン」などを参照願いたい。

気になる為替だが、今朝、ユーロ、ポンド共に円安で始まったものの、今のところ、円安への急な動きは見られない。

2008年10月6日月曜日

Yen and Japan's stock

今週の株価と為替は、めまぐるしく変化した。実際に株や債券、為替に投資している人は落ち着かなかったのではないか。

数字で振り返ってみると、3日(金)の終値と10日(金)の終値を比較すると、日本円は米ドルで4%、ユーロで7%、ポンドに至っては8%の円高となった一方、日経平均株価は24%の下落となった。

この数字から何が推測されるか?

為替相場で円は「優等生」である。昨今の欧米の金融機関が抱える課題の大きさ、円キャリー取引の解消、そして、金融不安という状況によって、円は「買い」対象だ。

7日付の英Financial Timesのなかで、あるエコノミストは、

 "There has been a high correlation between the performance of the yen and signs of financial stress" (Colin Asher, senior economist at Nomura)

と語っており、マーケットが避難先として円を選んでいることが推測される。

一方で、総じて日本の会社の株式は「売り」対象だ。

バブル崩壊の結果生じた3つの過剰(設備・雇用・債務)の克服になりふり構わず取り組んだ日本の企業は、高い生産効率を誇り、「昨年度の設備稼働率は最低だった01年度に比べて19%も高い水準上がっており、欧米に比べても、余分な設備をもたずに競争力を誇っている」(日本経済新聞 10月6日 朝刊)そうである。

リスク資産からの逃避により、世界を見渡しても押し並べて株式相場は低い水準となったが、ついに日経平均銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は1倍を割れ込んだ(10日付 0.98倍)。このPBRとは、一株あたり純資産額に対する株価の倍率(状況)を測る指標で、PBRが1倍であるとき、株価が解散価値と等しいとされる(引用 Wiki Pedia)。別な言い方をすると、理論上は、1倍を割っている会社の株を買ってその会社の資産を売却するだけで、利益が出せるのである。10日時点で、ソニーが0.69倍、トヨタが0.85倍、ホンダが0.84倍、という状況だ。

買われる円と、売られる日本株の構図は、下の図からも明らかであろう。



特に9月にアメリカの金融機関の破たんが相次ぐなか、この負の相関が顕著となっているのである。日本を代表する各企業がこの困難にどう対処するのか、引き続き、行方を見守っていきたいと思う。

2008年10月5日日曜日

Motivation

 今、世界は「大揺れ」だ。

 ここ10年以上、金融業界でわが世を謳歌してきたアメリカが、その金融で躓きを見せている。既に、欧州、アジアにまでその影響は及んでいるが、今後、さらに広がっていくに違いない。それまで保守的な金融政策を保った日本は、海外で起こっていることに比べれば、比較的その被害が少ないと言えるだろう。むしろ、東京三菱UFJ銀行によるモルガン・スタンレーへの出資や野村ホールディングスのリーマンブラザースの一部オペレーションの買取など「救済」する側になっている。ただ、日本全体を眺めれば、安閑とはしていられない。

 資産運用の勉強という認識で、特にこの5年くらいはいろいろな金融商品に投資を行ってきた。国内の個別株式だけにとどまらず、海外への興味もあって、外貨預金からFXへ、そして、新興国への投資も行ってきた。「儲かるだろう」という、かなりの思い込みで投資を行った商品のなかにはそれなりの儲けがあるものもあった。高金利の通貨に、しかも高いレバレッジをかけて行った投資では、一瞬にして儲かる気分を味わい、「これだけで暮らしていけるかも」という希望さえ持てたこともあった。しかし、その状況が長続きすることはなく、1か月足らずで高い「授業料」を払う結果になった。思いきり両頬を殴られたようなものだ。

 しばらくは立ち直れなかったが、気を取り直し、これをきっかけに、本来、投資でやりたかった「勉強しながら儲ける」ことを実践しようと考えた。かくして玉石混交と思われる情報から自身の頭を整理する意味と、私が発信する情報についていろいろな意見をお聞きしたい、という動機で、今回、Blogを作ることにした。これまでも、GoogleのBlogを利用し、備忘録的に気になる記事を貯めてきたが、それらを自分なりに解釈しながら、経済動向、為替、気になる国や地域の状況といったマクロレベルのものから、関心のある会社のことといったミクロレベルのものまでトピックスとして取り上げて行きたい。時々のテーマは主観的にならざるを得ないと思うが、その点はご容赦いただきたい。まずは週1回の更新を目標に、最近気になってる為替の内容から始めたいと思う。