2008年10月26日日曜日

CDS spreads: an indicator to measure corporation's life

先週の円高への動きは急激だった。

日本経済新聞やNHKなど主要なメディアで、米ドルに対する各国通貨の変動率を示したグラフが紹介されていたが、唯一、円のみが上昇している通貨となっていた。

円の立場で見ると、数十年ぶりの安値水準となっている通貨もいるが、27日(月)以降、円安方向に向かうのかどうか・・・FXや外貨預金で高い金利の通貨に投資している人には残念なニュースだが、もう一段の円高を予想する声が多いようだ。

と通貨の話を掘り下げたい気持ちはあるのだが、今回は、CDSスプレッドから、現在の金融状況を俯瞰してみたいと思う。

歴史的な円高水準の一方で、歴史的な下落に見舞われている日本株だが、実力に反して「安すぎる」と言われる株がある一方で、今後の先行きを懸念される会社が、このCDSスプレッドで垣間見えてくる。

東京金融取引所は、主要な日本企業のCDSスプレッドを公表(http://www.j-cds.com/index.html)しているのだが、すでに破たん寸前の「ファイナルカウントダウン」(三菱UFJ証券・藤戸則弘氏)というスプレッドの値を示している会社がいくつかある。

1,000bpを越える数値を示すとそれに該当するようであるが、このCDSスプレッドの高い上位5社をあげてみよう。

1.アイフル  1,970.00
2.武富士  1,704.00
3.日本航空  1,167.00
4.ソフトバンク  868.75
5.プロミス   539.00

先の基準に照らせば、これら5社のうち、上位3社が「ファイナルカウントダウン」を迎えているというわけだ。

さらに言えば、リーマン・ブラザースの破たん直前のCDSは、700bp台だったことを考えると、ソフトバンクを加えた4社の今後の動向は着目すべきであろう。

ちなみにCDSスプレッドの6~10番の企業は以下のようになる。

6.オリックス 458.75
7.全日本空輸 437.50
8.住友不動産 437.25
9.アコム 385.00
10.西松建設 383.00

業種としては、消費者金融と航空会社が目立つ。消費者金融各社については、株主上位に名を連ねる都市銀行各社(三井住友→プロミス、三菱UFJ→アコム)への影響も気になるところだ。

CDS関連でいえば、今週の日経ヴェリタスの国別の債務不履行リスクの保険料率も注目に値する。

直近の料率として、為替の「優等生」の日本は0.30%と最も低く、アメリカ、ドイツと上位は続くが、BRICsの一角を占めるロシアが、危険水域といわれる2ケタに乗せている(10.70%)のは要注意だ。

インドは紹介されていないのでわからないが、中国、ブラジルともに2ケタには届いていないので、その点でも余計に目立ってしまう。


今週は、最近、メディアでも取りざたされている、CDSスプレッドに注目した。

これらの値をにらみつつ、今週も金融動向に目が離せない1週間となりそうだ。

2008年10月19日日曜日

Dollar currency swaps and the influence on emerging currencies

米ドルは底堅さを見せている。

先週末と前週末のNYダウ、ナスダックと比較すると、

円/米ドル: +1%(ドル高)
NYダウ:  -4.75%
ナスダック: -3.75%

となり、昨今の景気見通しを考えれば、米ドルの動きはなかなか理解に苦しむところ。

この現象について、今週の「日経ヴェイタス」は「外国銀行のドル買い需要」と分析する。

その裏付として、

1) 日本株を売ってドルに戻す
2) (経営不安説が流れた)外国銀行がドル資金の調達目的でドルを買っている

としている。

ここでは、2)について注目してみたい。

ヴェリタスは、これまで外銀は円とドルの為替スワップを使ってドルを調達していたが、為替スワップ市場でのドル調達コストがリーマンの破綻後に2倍に膨らんだ結果、外銀が、直接、為替市場からドルを調達しており、それが結果的にドルの急落を阻んでいる、という。

ドル資産を持つ人には朗報のようだが、一方でドル以外の外国通貨を持つ人には、意外な落とし穴がありそうだ。高金利の有利性をうたい文句にしている、新興市場の通貨に影響を及ぼす可能性があるという指摘があるのだ。

17付Financial Times「Financial crisis stalks new victims」は、この課題に言及している。

連邦準備(銀行)と中央銀行の間で行われる無期限のドルの為替スワップは、超短期の資金需要を満たすためにスポット市場で直接ドルを調達したいという金融機関の負担を和らげ、通貨安定に寄与する、としているため、通貨スワップが有効でなくなった、とするヴェリタスの見立てと、やや異なる見解を示している。

しかし、より注目すべきは、東京三菱UFJ銀行のDerek Halpenny氏のコメントとして、紹介されている、次のコメントだ。

“In contrast, the lack of currency swaps put in place between the Federal Reserve and emerging market central banks has likely helped exacerbate the pick up in emerging market currency volatility,”

ドル需要を満たすドルの為替スワップも、結果として、新興国通貨に対するドルの為替スワップ分が不足することを予測しており、それが新興国の為替のボラティリティ(=リスク)を膨らませてしまうだろう、としている点だ。

米ドルの安定化とは裏腹に、昨今、FXや外貨預金で流行っている、新興国通貨(トルコ・リラ、南アフリカ・ランドなど)を持つ人は注意が必要だ。

K

2008年10月13日月曜日

Crutial plan for financial crisis in Europe

先週の欧州の為替の落ち込みはひどかった。2週間前と先週末の終値を比較して、円に対して7%、ドルに対して3%ほど、下落したユーロ。また、ポンドも円に対しては8%も下落した。

こうした弱含みに対し、

“It will be crucial for the eurozone to adopt a zone-wide plan to free up interbank lending, otherwise the euro will continue to suffer.”(Geoffrey Yu,UBS/10月10日 Financial Times)

という、欧州における幅広い対策、特に銀行間市場での短期の資金取引への対応を望む声が出ていた。

そうしたなか、日本時間の13日未明、欧州主要国首脳が銀行への資本注入に合意、といったニュースが飛び込んできた(”European Leaders Agree to Inject Cash Into Banks”,The New York Times)

そのニュースでは、2つのポイントが紹介されている。

・ 現地時間日曜日の夜、欧州各国の財務・政治の首脳は、動揺を見せる金融システムへの信用を回復することを目的に、数十億ユーロレベルで行き詰った銀行への資本注入を行う計画を発表。最大5年までの融資を保証。

原文: European financial and political leaders agreed late Sunday to a plan that would inject billions of euros into their banks in a bid to restore confidence to the teetering financial system.

Taking their cue from a rescue plan announced last week by Britain, the European countries led by Germany and France pledged to take equity stakes in distressed banks and vowed to guarantee bank lending for periods up to five years.

・ 欧州中央銀行はコマーシャル・ペーパー(企業が資金調達を行うために発行される短期の約束手形のこと。出典:All about マネー)市場を再開することをコミットメント(ベルギー財務大臣 Reynders氏)

原文: Mr. Reynders said the European Central Bank had also committed to helping to unfreeze the commercial paper market, which companies use to finance day-to-day operations.

また、そのニュースのなかで、Reynders氏は、”目的は銀行間取引に弾みをつけること”とコメントもしている。これは、ユーロ安/ポンド安の原因に踏み込んだ内容とも受け取られるものだ。

では、具体的には、どんな取り組みが行われるのか?

たとえばイギリスでは、アメリカ・日本の債券市場が休場となる月曜日に、英・政策当局が、不振の銀行に資本注入する計画を早急にまとめる。そのトップリストに挙げられているのが、時価総額が、6月の資本注入を下回る、120億ポンド(約2兆円)となっている、Royal Bank of Scotland(ちなみに、みずほフィナンシャルグループの直近の時価総額は4兆円弱)。

原文: With the bond market in the United States and all Japanese markets closed on Monday for holidays, British policy makers appeared to be speeding plans to inject capital into their troubled banks. At the top of the list is Royal Bank of Scotland, whose market value has fallen to below £12 billion pounds, or about $20 billion — less than the amount of capital it raised from private investors in June.

また、「日経速報ニュース」では、その具体策を以下のように報じている。

・ インターバンク(銀行間)市場での短期の資金取引に際し、資金の出し手が持つ債権を政府が保証する。付保は来年末までの時限措置とする。まずは金融機関どうしのお金の巡りをよくして、貸し渋りを防ぐ狙いだ。付保に際しては各国政府の判断で、銀行に個人や企業への融資増など「実体経済への貢献」を課すこともあると明記した。

・ 公的資金の注入では、優先株の取得などを通じて政府が経営危機に陥った銀行に資本を供与する。資本注入時には経営者や株主の責任を問うほか、適切なリストラ策をつくる。

詳細は「日経テレコン」などを参照願いたい。

気になる為替だが、今朝、ユーロ、ポンド共に円安で始まったものの、今のところ、円安への急な動きは見られない。

2008年10月6日月曜日

Yen and Japan's stock

今週の株価と為替は、めまぐるしく変化した。実際に株や債券、為替に投資している人は落ち着かなかったのではないか。

数字で振り返ってみると、3日(金)の終値と10日(金)の終値を比較すると、日本円は米ドルで4%、ユーロで7%、ポンドに至っては8%の円高となった一方、日経平均株価は24%の下落となった。

この数字から何が推測されるか?

為替相場で円は「優等生」である。昨今の欧米の金融機関が抱える課題の大きさ、円キャリー取引の解消、そして、金融不安という状況によって、円は「買い」対象だ。

7日付の英Financial Timesのなかで、あるエコノミストは、

 "There has been a high correlation between the performance of the yen and signs of financial stress" (Colin Asher, senior economist at Nomura)

と語っており、マーケットが避難先として円を選んでいることが推測される。

一方で、総じて日本の会社の株式は「売り」対象だ。

バブル崩壊の結果生じた3つの過剰(設備・雇用・債務)の克服になりふり構わず取り組んだ日本の企業は、高い生産効率を誇り、「昨年度の設備稼働率は最低だった01年度に比べて19%も高い水準上がっており、欧米に比べても、余分な設備をもたずに競争力を誇っている」(日本経済新聞 10月6日 朝刊)そうである。

リスク資産からの逃避により、世界を見渡しても押し並べて株式相場は低い水準となったが、ついに日経平均銘柄の平均PBR(株価純資産倍率)は1倍を割れ込んだ(10日付 0.98倍)。このPBRとは、一株あたり純資産額に対する株価の倍率(状況)を測る指標で、PBRが1倍であるとき、株価が解散価値と等しいとされる(引用 Wiki Pedia)。別な言い方をすると、理論上は、1倍を割っている会社の株を買ってその会社の資産を売却するだけで、利益が出せるのである。10日時点で、ソニーが0.69倍、トヨタが0.85倍、ホンダが0.84倍、という状況だ。

買われる円と、売られる日本株の構図は、下の図からも明らかであろう。



特に9月にアメリカの金融機関の破たんが相次ぐなか、この負の相関が顕著となっているのである。日本を代表する各企業がこの困難にどう対処するのか、引き続き、行方を見守っていきたいと思う。

2008年10月5日日曜日

Motivation

 今、世界は「大揺れ」だ。

 ここ10年以上、金融業界でわが世を謳歌してきたアメリカが、その金融で躓きを見せている。既に、欧州、アジアにまでその影響は及んでいるが、今後、さらに広がっていくに違いない。それまで保守的な金融政策を保った日本は、海外で起こっていることに比べれば、比較的その被害が少ないと言えるだろう。むしろ、東京三菱UFJ銀行によるモルガン・スタンレーへの出資や野村ホールディングスのリーマンブラザースの一部オペレーションの買取など「救済」する側になっている。ただ、日本全体を眺めれば、安閑とはしていられない。

 資産運用の勉強という認識で、特にこの5年くらいはいろいろな金融商品に投資を行ってきた。国内の個別株式だけにとどまらず、海外への興味もあって、外貨預金からFXへ、そして、新興国への投資も行ってきた。「儲かるだろう」という、かなりの思い込みで投資を行った商品のなかにはそれなりの儲けがあるものもあった。高金利の通貨に、しかも高いレバレッジをかけて行った投資では、一瞬にして儲かる気分を味わい、「これだけで暮らしていけるかも」という希望さえ持てたこともあった。しかし、その状況が長続きすることはなく、1か月足らずで高い「授業料」を払う結果になった。思いきり両頬を殴られたようなものだ。

 しばらくは立ち直れなかったが、気を取り直し、これをきっかけに、本来、投資でやりたかった「勉強しながら儲ける」ことを実践しようと考えた。かくして玉石混交と思われる情報から自身の頭を整理する意味と、私が発信する情報についていろいろな意見をお聞きしたい、という動機で、今回、Blogを作ることにした。これまでも、GoogleのBlogを利用し、備忘録的に気になる記事を貯めてきたが、それらを自分なりに解釈しながら、経済動向、為替、気になる国や地域の状況といったマクロレベルのものから、関心のある会社のことといったミクロレベルのものまでトピックスとして取り上げて行きたい。時々のテーマは主観的にならざるを得ないと思うが、その点はご容赦いただきたい。まずは週1回の更新を目標に、最近気になってる為替の内容から始めたいと思う。