失業率と物価上昇率(=賃金上昇率)で年毎の国の状況をプロットしたフィリップス曲線を使った分析でしたが、通常、このフィリップス曲線は失業率が上がれば賃金上昇率がなだらかに下がっていく右肩下がりのカーブを描きます。
伊藤教授のお話で印象的だった点はふたつ。
ひとつは、本来、日本の場合、このフィリップス曲線については、なだらかな曲線ではなく、鋭角な「L字」を描くということ。
これは、失業率が一定の水準より下がると、急にインフレ率=賃金が上がるという性質を示します。
それがどういう背景なのかは説明されませんでしたが、表にあるとおり、曲線の角度が急になるのは70年代半ば~80年代半ばにあり、派遣や外注など、今ほど、働き方の多様性のなかったころですから、当時の労働組合の強さと見るべきか、または、当時の日本企業の競争力の高さと見るべきか。
そして、印象的だったことのふたつ目は、この曲線を用いると、昨今の失業率の低下から、まもなく、急激なインフレ率上昇=高い賃金上昇率を迎えるだろうということ。
言い換えれば、プロットされたデータから、70年代半ば~80年代半ばの環境に近くなるということです。
これが現実的なことか否かは、これから、徐々に示されていくでしょうが、デフレ経済の象徴である、「ファスト・ファッション」や「アマゾン経済」のような経済活動の結果であるインフレ率/賃金上昇率について、単に失業率という要因だけで説明仕切れるのか、大いに注目したいところです。
#伊藤隆敏 #コロンビア大学 #フィリップス曲線 #アベノミクス #モーニングサテライト