2010年3月7日日曜日

長期休暇の「ボトルネック」解消は経済効果をもたらすか?

ゴールデンウィークに旅行の計画を立てようとしても、宿がとれない、チケットがとれない、車が混む、と気を揉めたことがある人もいるのではないか。

先週、そういったストレスを解消する画期的な試みを話し合う話し合いが始まった。

渋滞・混雑を緩和することで観光需要を掘り起こし、消費・雇用を喚起することを目的に、政府の観光立国推進本部(本部長・前原誠司国土交通相)は3日の作業部会で、春と秋の大型連休を地域ごとに分散する試案を提示したという。

これは、もともと星野リゾートで有名な星野佳路氏が政府に提起していた案がベースとなっているようだ。


星野リゾートの事件簿

昨年3月の政府主催の「有識者会合」で、星野氏は、5月の連休を地域別にずらすことで混雑の解消や観光需要の平準化を図るなど、「休日改革」の持論を説明していた。

それでは、今回の具体的な案は、どういう内容だったか確認してみよう。

・ 試案では全国を5地域に分ける。

・ 春と秋に地域ごとに週をずらして3日分の休みを月曜日から水曜日に配置し、土日を合わせ五連休にする。月曜から水曜に配置する地域と、水曜から金曜に配置する地域を組み合わせる案も。

・ 春は憲法記念日(5月3日)、みどりの日(同4日)、こどもの日(同5日)の3日分を活用。秋は海の日、敬老の日、体育の日を、それぞれ7月20日、9月15日、10月10日に固定して3日分の休日を確保。




詳細はいろいろあるにしても、私は、今回の話を聞いて、素晴らしいプランだと思った。

なぜならば、政府はほとんど予算を掛けずに景気を喚起することができる一方で、我々一般消費者は、交通機関や宿泊・観光施設の混雑に煩わされることなく、休日を楽しむことができるからだ。

たかが休日、されど休日、休日を過小評価してはいけない。

ある調査では、「成人の日」「海の日」「敬老の日」「体育の日」を月曜日に変更するという「ハッピーマンデー法」の経済効果について、年間7,000億円~2兆円の効果があると推測されているという。

また、今回の連休の変更でより休暇が多くなるという前提で考えれば、経済産業省・国土交通省・自由時間デザイン協会 (2002)の有給休暇の完全取得によって、約12兆円の経済活性化効果があるとした試算も参考になるかもしれない。

3連休と5連休といった連休期間の違いや、年2回という連休回数をどう考えるかによって、今回の地域毎の連休分散の効果も変わると思うが、少なくとも1兆円くらいの上積み効果は出てくるのではないか。

また、連休が分散されることで、従来は、この週で終わり、とされていたものもも、分散期間全般にわたるために、サービス業に従事する方々の安定雇用という影響も見込まれるだろう。

ということで、万事、いいことづくめのように思えるが、産業界の反応は、今のところ、冷ややかなようだ。

主な声を拾ってみよう。

・ 「製造業では工場により休日が異なると、在庫増加や納品までの期間延長につながり、国際競争力に影響する。地域ごとに金融機関や青果市場などの営業日が異なると企業の資金繰りや食材の調達にも支障が生じかねない」(日本経団連)

・ 「全国展開している企業の業務効率が落ちることが予想されるし、本来の祝日の意味がなくなってしまうという議論もある。地域分散型の連休創設による手形決済日のずれが、企業の資金繰りに影響」(日本商工会議所・岡村正会頭)

善し悪しは別にしても、既にグローバルなオペレーションが、一般化しようとしているなかで、上記のようなコメントに対して、やや時代錯誤的な印象を受けるのは私だけだろうか。

また、石原慎太郎 東京都知事はこう言っている。

・「無意味な試みだと思う。観光客の移動を考えればナンセンスな案だ」

・「頭の悪い政治家が考えたんじゃないの。官僚は小利口だからそんなことは考えないと思うな。ただの思いつき、大反対だ」

一言でいうと製造業と自民党の重鎮には、受けが悪いようである。

前述については、産業別抗争(2次産業vs.3次産業)、後述については、政党間対立(自民党vs.民主党)の色彩が強く、いずれも消費者の目線での指摘ではなさそうだ。


また、マクロ経済でみれば、政府は借金だらけだが、国民はそうではない。

1,500兆円ともいわれる個人資産をどうやってポケットから引き出すか。

しかも、政府の予算をほとんど掛けずに、しかも、我々、国民ひとりひとりがメリットを享受できるなら、やらない手はないではないか。

皆さんは、地域別に連休を変える今回の試みは賛成であろうか?それとも反対?


K

P.S.

週一回更新してきたブログですが、大学での講演準備に備えるため、来週からしばらくお休みしたいと思います。

仕事を続けながら、準備をするとなると、週末しかまとまった時間がとれなくなるためです。

もちろん、その時々の時事ネタの意見をご紹介したいときは更新させていただきますが、不定期となることは十分に予想されますので、ご容赦ください。

それでは、また、皆さんに私の意見をご披露できるのを楽しみにしております。

2010年2月28日日曜日

金融業界に続く製造業のグローバル化の課題 ~トヨタのリコール問題が提起するもの

先週、アメリカ議会の公聴会で、一連のリコール問題に絡み、豊田社長が証言した。

President Toyoda.jpg


そもそも、公聴会に(たとえ世界の大企業のトップとはいえ)日本人が発言すること自体が珍しいことだったし、米政府の政治的プレッシャーは行き過ぎた印象を拭えないものの、今回の問題の背後にある製造業のグローバル化の課題を垣間見た気がした。

私には、2008年に起きた金融業界のグローバル化の課題からやや遅れて、製造業のグローバル化の課題が浮き彫りになった感がある。

2008年の金融問題は、サブ・プライムローンを証券化し、それを細分化して世界中にばら撒いたものが、ローンの返却が見込めなくなった時点で証券が焦げ付き、問題が拡大した。

今度のリコール問題は、グローバル化を進める中で、効率化と利益の最大化を追い求めるあまり、設計・部品の共通化の結果、一部部品の不具合ですら、全世界に波及するかもしれないという規模のリスク(サブ・プライムローンの「細切れ証券」と同様)と、その対応如何で世界的に批判を浴びかねないという評価低下のリスク(=Reputation Risk)の可能性を浮き彫りにしたと考えている。

今回のリコール問題については、既に対処済みのアクセル・ペダルの不具合の問題が蒸し返され、また、技術的に不具合と確認されていない電子制御装置がやり玉に上がるという、恐らく当事者(特に関わったエンジニア)からすれば、やりきれない想いであろうと思う。

ただし、顧客から問題が指摘された時に、例え技術仕様では問題ないとしても、迅速、かつ、適切に対応しようという姿勢が足りないと、業界トップの会社といえども、一気に足元をすくわれてしまうことを示唆している。

まして、不適切と思われた対応の裏に、会社が利益を第一にした形跡がある、または、社内の体制維持を優先したと捉えられる形跡があると見られれば、なおさらである。

トヨタの品質への取り組みに関する評価は高く、ほかの企業が学ぶくらいだし、かくいう私も、大学院時代にはトヨタを日本の製造業のベンチマークとして研究したこともあったので、トヨタの取り組みが中途半端でないことは想像がつく。

ただし、そんなトヨタがリコールに端を発し、お家芸としてきた品質について、昨年、破綻の危機に直面し、品質ではトヨタに劣るとの評判だったGM、Ford、Chryslerを援助しているアメリカ政府から攻撃を受けるとはなんとも皮肉である。

ただ、最強とも思えたトヨタにも弱点があったのかと改めて思わせたのは、豊田社長の次の発言である。

「事業拡大のスピードに人材育成がついていけなかった」

2008年の金融危機直後の業績悪化の際の問題点として、トヨタが指摘されたのは、事業を拡大した結果生じた製造設備に関する減価償却費負担の大きさだった。

一度、大きな設備を持ってしまったにもかかわらず、想定した売上を達成できないと、売上を費用が上回ってしまうため、無駄遣いをしなくても、損失が自動的に発生してしまうことが起こる。

ただ、それは会計上の数字の課題であるわけだが、今回は、それを運用する人材のこと、いわば「ソフト」の課題があったことを示唆したわけだ。

また、報道では、日本本社に意思決定が集中し、現地でのリコール対応が遅れたとの指摘がされている。

もし、これが事実なら、経営オペレーションの課題を浮き彫りにしており、トヨタが会社として取り決めた様々なルールが、「対応の遅れ」と指摘されていることと同義だ。

だとすれば、厳密な社内ルールを重んじるトヨタにとっては、根本的な課題の修正を検討せねばならなくなるだろう。

また、私が気がかりに思っているのは、これら拡大路線とその弊害は偶然起こったわけではなく、例えば、2004年の製造業派遣などもそのContextのなかに含めて考えるべきで、これら一連の出来事は、金融業界で起きたFRBとWall Streetの関係ではないが、やはり、日本の経団連と政府、そして、トヨタのようなトップ企業が連動して、取り組んだ結果なのではないかと思うのだ。

というのも、2000年になってから、御手洗現会長が就任するまで経団連の会長を務めてきたのは、何を隠そう、トヨタのトップだった奥田碩氏であり、奥田氏の会長就任期間に製造現場への派遣社員採用が可能となったからだ。

裏を返せば、トヨタの内部で、一連の経営を取り仕切り、いわば実質的な経営の実権を握っている経営層や、それまで、トヨタの海外拡大をサポートしてきた政府・実業界の課題を、一手に握って、豊田社長は公聴会に臨んだという言い方もできるかもしれない。

電子制御の欠陥といった技術的な課題は明確に否定しつつ、「TOYOTA WAY」を説明し、今後、その課題の克服に懸命に取り組むことを必死になって説明している公聴会の豊田社長は、いささか痛々しい印象すらある。

それは、豊田社長のバックには、トヨタ自動車はもちろんのこと、日本政府・自動車業界に収まらない日本の実業界が控えているためだろう。

ただ、私には、この公聴会での発言はもちろん、一連の会見で、豊田社長の創業家ならではの責任感、そして、顧客に対しての謝罪の姿勢が、ひしひしと感じるのだが、いかがだろうか?

これは、豊田社長でなければ発することができないメッセージだろうが、本当の課題は、今後、それがどう実行されるかである。

今回の問題は、トヨタ単独や日本の製造業にとっての課題ではなく、製造業全体のグローバル化の課題だと思うので、今後のトヨタの動向に注目したい。

とりとめもなく、気付いたことをまとめたが、皆さんのご意見をお寄せいただければ幸いである。

K


ザ・トヨタウェイ(上)


ザ・トヨタウェイ(下)

2010年2月20日土曜日

Promise Academyの教育が示唆するもの

アメリカにCharter Schoolという制度があるのをご存じだろうか?

通常の公立学校とは別に、地域住民、教師、保護者などが、学校の特徴や設立後の目標などを定め、行政の特別認可の下で行う独自の学校教育のことである。

当初は、コンピュータ・リテラシー教育、理科教育に特化した学校や、不登校の子ども達を対象にした学校などを目的としたものが多かったようだが、最近は、人口構成比率に伴った人種別の入学者数を制定する学校が出るなど、教育政策的な色彩も併せ持つようになってきたようだ。

そんななかで、脚光を浴びている学校のひとつが、Promise Academyである。

Geoffrey Canada氏が設立し、ニューヨークのハーレムの子どもたちに教育、医療、福祉を包括的に提供するサービスを無料で提供している。

Geoff Canada300.jpg
Geoffrey Canada氏

学校の名前の「Promise」は、この学校で学ぶハーレムの子供たちを全員大学へ行かせることを約束した学校だからだという。

現在、Promise Academyには、幼稚園~高校1年まで1,200名が在籍している。

クラスは、生徒6人につき先生1人、土曜も講義があり、夏休みは3週間。

校内には内科も歯医者もあり、複数のクリニックも併設されている。

入学は抽選で選ばれるが、Promise Academyに入学できなくとも、Harlem Children’s ZONEとよばれるこの地域にはPipelineという補習制度があり、フォローする制度が整っている。

しかも、最も驚くべきはその実績だ。

New York州のデータによれば、小学3年生全員が算数で全国を上り、公立学校に通う白人生徒の成績も上回った。

それに加え、Promise Academyを調査したHarvard大学経済学部 Roland Fryer教授はいう。

「一般的に、17歳の黒人の国語の読解力は13歳の白人と同じと言われており、人種間で4歳も差があるといわれているが、Promise Academyでは、算数と国語の学力差が”小学校の段階”でなくなる」

「また、中学からPromise Academyに入学した場合でも、数学で3年以内に学力差をなくし、国語では差を半分にした」

また、公立学校に通っていて、Pipelineの補習を受ける生徒の9割は大学へ行っているという。

その裏には、厳しい競争原理と生徒へのユニークな「ご褒美」の仕組みがある。

設立者のGeoffrey Canada氏はいう。

「生徒が大学へ行けなければ講師も、補習講師も理事もクビ」

また、生徒は州の学力テストでAをとると、Disney Landに行くことができ、高校生になると成績優秀で皆勤賞となれば月々120ドルの褒賞が渡されるという。

ご褒美の考え方は、日本では賛否が分かれるかもしれないが、設立者のGeoffrey Canada氏の考え方は一貫している。

「お小遣いのためであれ、勉強すればよい。」

また、ウォール街からの寄付で賄われている、年間7,600万ドルの学校運営費を単純計算すると、年間一人当たり5万ドルになるため、その運営費は高いのではないか?との指摘もあるが、

「いやいや、非行で刑務所に入れば年6万ドルの税金がかかる。少年院では10万ドルの税金がかかる。それでいて見返りがない。」

この裏には、子どもを将来の社会を担う貴重な存在と捉え、その子どもたちに、積極的に「投資」すると同時に、犯罪などの社会の負の側面を減らそうという、2つの効果を狙う姿勢が見てとれる。

このような取り組みは、全米のCharter Schoolにも影響を与え、Obama大統領も会見でコメントするなど、注目度が高いという。

この春から、子ども手当を開始する日本だが、パブリックの取り組みとして、貧困・不平等・教育問題を解決する、このような取り組みはほとんど聞かれない。

それは、社会としてそこそこの安全、そこそこな教育は最低限受けられるために、本腰が入らないのかもしれない。

このPromise AcademyやHarlem Children’s ZONEがあるのは、深刻な人種差別、貧困、犯罪など深刻な社会問題を抱えるHarlemだからこそかもしれないが、もし、それが有効であるならば、取り入れない手はないだろう。

皆さんのご意見はいかがであろうか?

K


Whatever It Takes: Geoffrey Canada's Quest to Change Harlem and America[洋書]

2010年2月13日土曜日

雇用創出を真剣に考えるべし ~ 政治スキャンダルで騒いでいる場合ではない

Santa Monica1_S.jpg
(写真は失業者対策では全米でも有数というSanta Monicaの夕日。知人提供)


私が知る限り、最近のテレビをはじめとしたメディアが取り上げる話題と言ったら、小沢幹事長の資金管理団体を巡る「政治とカネ」の問題、普天間基地移設の問題、ハイチの震災の話題に、ほぼ集約されるのではないかと思う。

各々、重要なことであるのはわかるが、今、日本でもっと真剣に考えるべき課題があると思う。

それは雇用についてだ。

なぜ、これについて、政治家もメディアも、積極的に取り上げないのか、不思議である。

また、デフレについて問題視する声のなかには、低価格で商品を提供するファーストリテイリングのような企業を批判するという、お門違いの指摘すらある。

マクロ経済のセオリーでいれば、結局のところ、労働者の所得が上がるか、市中に回るお金の供給量が増やすか、政府が需要を作り出すかしないと、モノの値段は上がらない、つまり、デフレは脱却できない、ということになっている。

政府が需要を作り出すのは今の日本の「台所事情」では厳しい、金利は地を這うような状況なので日銀としては市中に回す手段が限られる(お金を刷るという方法を日銀がやりたがらないのは問題だと思うが・・・)、となると真正面から雇用対策に取り組む政策が必要なはずなのだ。


先月、今年度の補正予算が通過した。

「雇用、環境、景気」が予算編成の「3本柱」だそうだが、総予算7.2兆円のうち、雇用対策は6,140億円に過ぎず、全体の1割にも満たない。

3本柱の1本なら、3割くらい回しておいて欲しいが、所詮、その程度の重要性という認識の裏返しなのだろう。

労働者を支持母体とするはずの民主党(社民党も)が、なぜ、雇用の問題を真正面から受け止めて、限られた予算をつかいながらも、明確な対策を打たないのか、私は不思議である。

1次補正の予算減額やJALの例は典型だが、自民党との政策の違いを打ち出すことを意識しすぎるあまり、早期の景気回復の機会を失わせ、何万人という単位の職が失う事態を容認している。

昨年来からのお金にまつわる、鳩山首相、小沢幹事長のスキャンダルは、高い失業率となっている状況を鑑みれば、やや浮世離れの感さえある。


そんななか、日経新聞はアメリカ政府の雇用創出にむけた取り組みを特集した。

中間選挙を踏まえ、大手金融機関への規制と並び、国民の支持を得たいという政治的な意図を感じるが、大統領以下、政府・地方自治体が、雇用創出に真剣に取り組んでいる様子が伺える。

まずは、雇用状況の解説から。

・ 米国が08年以降に失った雇用は約840万人。特に痛手を受けたのが建設業と製造業で、2業種で失った雇用は約400万人と全体のほぼ半数。

そして、雇用の受け皿の取り組みを紹介している。

(環境)
<政府>
・ オバマ政権は10年間で500万人の「グリーン・ジョブ(環境関連雇用)」創出を表明。約800億ドルを環境企業への減税や融資にあてる。マサチューセッツ大学の試算では、1,000億ドルの投資で2年間に200万人の新規雇用を生み出せるという。

・ 米政府は、昨年11月に工事1件あたり最大1万2,000ドル(約108万円)の補助金を出すことを決めた。住宅の省エネ化は温暖化対策に加え、仕事のない建設業者を助ける一石二鳥の効果がある。

<民間部門>
・ マサチューセッツ州のベンチャー企業コナルカは、閉鎖したポラロイドのフィルム工場を再開発。従業員20人や生産機械を引き継ぎ、08年から太陽光で発電できるプラスチックを生産。

・ 電気自動車メーカーのフィスカーもGMの工場と従業員を引き継いだ。

(転職支援)
<政府>
・ オバマ政権は、景気対策費から120億ドル(約1兆500億円)を投じ、高校と4年制大学の中間に位置する2年制大学のコミュニティーカレッジの教育プログラムを充実させ、今後10年で500万人を卒業させる目標を掲げる。このコミュニティーカレッジでは、機械整備や看護師などの職業訓練が受けられる。米・労働省によると、2018年までに米国で生まれる新規雇用は約1,500万人のうち4分の1近くを病院職員や看護師、在宅医療サービスが占める。看護師の約半数はコミュニティーカレッジで資格を得るとされるが、カレッジを強化する政府の方針も将来の労働市場の変化をにらんでいる。

<地方自治体>
・ ニューヨーク市は昨年春、金融機関の退職者を集め、新興企業にあっせんする事業を始めた。ウォール街の大量リストラで職場を追われた若手トレーダーやアナリストをメディアやマーケティングの企業に10週間派遣。半数が正社員などの契約にこぎ着けた。

(企業への雇用支援)
<政府>
・ 大統領は、雇用を増やした中小企業に、従業員1人につき5,000ドル(約45万円)を税還付する案を超党派で合意にこぎつけようとしている。この雇用対策で、企業が払う社会保障税の一部も免除し、人を雇うコストを下げる。米経済政策研究所(EPI)は、税額の15%還付で最大280万人の雇用が生まれると試算。公共投資と違って、業種や規模に偏りなく効果が期待できる利点もある。
 

景気は浮上しつつあるものの、その恩恵は大手金融機関に限られ、失業率が減らず、事態はほとんど「Change」していないとも批判されるオバマ政権だが、打つべき手は打とうという姿勢が伺える。

特に、コミュニティーカレッジの支援は、中期の労働市場も睨んだうえでの対策と言え、極めて戦略的とも言えるだろう。

一方で、日本の民主党はどうか?

テレビなど影響力のあるメディアが、冒頭申し上げたような、スキャンダルしか報じないせいか、そもそも報じるような雇用対策が政府にないのか、今の政権ではほとんど動きが見えず、効果的な対策が練られている気配すら感じられない。

むしろ、宮城県、神奈川県、徳島県を筆頭に地方自治体のほうが、雇用対策に積極的という印象だ。

今のような政府の対応に危機感すら感じる今日この頃だが、皆さんはどのような感想を持たれるだろうか?

忌憚なき、ご意見をお寄せいただければ幸いである。

K


脱デフレの歴史分析

2010年2月6日土曜日

2つの矛盾した政策から考える民主党の課題

今週、民主党の重点施策というべき、2つの政策について具体的な内容が明らかになった。

いずれも、産業構造を変えかねないものだけに、マスコミでの注目度も高かったようだ。

ひとつは高速無料化の対象区間や実施時期のこと、もうひとつは温暖化ガスの25%削減に向けたロードマップである。

両方の政策ともに、生活者視点を重視する民主党らしさが伺えるのだが、どうもその2つの組み合わせがしっくりこない。

片方は車での移動を活性化させるという意味で温暖化ガスの増加を促すものだが、もう一方は、国内のみならず、諸外国とも連携して温暖化ガスを削減しようというもの。

克服しようとする課題が、各々、違う場合もあろうが、それによってもたらされる結果が、相矛盾するというのはいただけない。

ここらへんが、グラウンド・デザインを描く司令塔がいないと言われる民主党の課題だ。

3日付の日経新聞では、下記のように指摘している。


 「地域と経済を活性化します」――。民主党はマニフェストで高速無料化の狙いをこう訴えた。ただ、今回の無料化政策が地域にどれだけの経済効果をもたらすのか、今の時点では何も見えない。10年度予算編成で大きく道路整備の予算が削られた地方からは「無料化よりも必要な道路整備を」との声も上がる。


今回は実験のフェーズとはいえ、そもそも経済効果の目途がはっきりしない政策に、1,000億円の予算を割くのはいただけない。

しかも、今回、対象となる路線は、政治的な判断の賜物であるようにも感じられる。

言い換えれば、地域との交通網の促進で経済を活性化するという崇高な目的が、無料化で特定地域にメリットをもたらし、夏の選挙対策を行っているとも解釈できる。

一方で、温暖化ガス削減においても、その活動によって生じる経済的な付加価値も見えづらい。

結局、今回の政策を一例に感じるのは、日本の景気をダイナミックに回復させたうえで、経済界も生活者もその利益を享受しながら、そこから得られる税収で財政を健全化させようという意思がみられないということだ。

子ども手当もそうだが、そもそも乾いた雑巾を絞るような感覚に近い政策を推し進め、これまでの日本の「貯金」や将来得られであろう「富」を使いきろうとしているような気がするが、みなさん、いかがお感じであろうか?

「生活者視点」というメッセージは、国民にはとても心地いい。

しかし、企業が業績を上げられず、従業員は満足な定職が得られない状況が続くようにしながら、政府の支出だけに頼るっては、いつまでも「生活者視点」の政治は行えないだろう。

貯金を取り崩すような政策しか押しだせないのは、今の政権の弱みだ。

だから、短期的に、国としてどうやって富を生みだす政策を推し進めるか、それが、国民の日常生活にも波及できるようにするか、それが民主党政権に課せられている喫緊の課題のはずだ。

最近、読んだ「市場対国家」で、サッチャー元首相のコメントがこう引用されている。

(政府の役割の役割はなんなのか、という問いかけに対して)
『第一に、財政を健全にすること。第二に、法律の適正な基盤を作り上げ、産業、商業、サービス、政府がいずれも活発になれるようにすること、第三に、防衛がある。教育が第四で、これは機会を得る道になる。第五は、社会保障だ。』


市場対国家 上巻 世界を作り変える歴史的攻防 (日本経済新聞社)


サッチャーリズムで語られる新自由主義は、その後の金融業界の暴走や格差社会を生みだしたとも指摘もされるが、そもそも、富を生み出せなければ、教育・社会保障の向上も実現できないとする、このメッセージは説得力がある。

サッチャーが語る最初の3つを額面通りに今やったら大変なことになるものの、しかし、一時的な政府予算の膨張は、あくまで、将来の財政健全化を前提に行うべきで、健全化された財政のなかで始めて、安定した社会保障が実現できるというものだろう。

財務省が4日、国会へ提出した2010年度予算案の参考資料で、国の財政を巡って「借金」が税収を上回る異常な事態が長期化するとの試算を示した。

少なからず、いたずらに予算を膨張させかねない、民主党政権へのけん制とも感じられるが、そのなかで、歳出削減や増税などの税制改革を進めない場合、2013年度は税収が40兆7千億円にとどまる一方、国債発行額が55兆3千億円に達する可能性を示唆している。

言い換えれば、来年度から少なくとも3年間は借金による国家運営が余儀なくされると指摘しているわけで、そうなったら、昨今のJAL問題ではないが、年金を含む社会保障へのしわ寄せは避けられなくなるだろう。

だからこそ、富を生み出せるようになる政策が必要なのだが、民主党にはそこに至るロードマップが欠けていると思うが、皆さんは、どんな意見をお持ちだろうか。

忌憚なきご意見をお寄せいただければ幸いである。

K

2010年1月30日土曜日

ついに電子書籍市場に真打ち登場!~本命はiPad?それともKindle?

電子書籍をご存じだろうか?

電子機器のディスプレイで読むことができる出版物を総称して電子書籍と読んでいる。

実は、日本では先駆けて大手電機メーカーから電子書籍用の端末が販売されていたが、結局、ユーザー数が伸びず、撤退した経緯がある。

それが、ネット書籍販売大手のAmazonがKindleをリリースして参入したことで、一気に盛り上がりを見せようとしている。

そんななか、米国時間27日に、かねがね噂されていたAppleのタブレット型PC「iPad」が発表された。

steve-jobs-iPad.jpg
iPadを手にするAppleのSteve Jobs CEO


Apple Unveils New Tablet Computer - The iPad


発表後の反応をみると概ね好評のようで、Appleの参入発表で市場の立ち上がりが本格化する予感がする。


実は、このビジネス、かなり前から気になっていた。

その理由は、現在、電子書籍端末用の薄型ディスプレイ・メーカーの大手となっているE-Inkを題材としたケース・スタディーを勉強したことがあったからだ。

ケースが描かれた当時、まだ、E-Inkはベンチャー企業で、そんなベンチャー企業を、今後、どう成長させるかについて、教室で議論した。

そんなE-Inkも、昨年、台湾の電子ペーパー関連企業Prime View Internationalに買収され、より事業基盤が確かなものとし、もはやアメリカのベンチャー企業としてのステージを終えようとしているから、時代の流れは早いものだ。


ケースを議論するなかで、ビジネスの立ち上げのために参入すべき市場は?といったことも話し合い、電子書籍市場も候補に挙がっていたが、何しろ当時は、商品としてそんな端末はなかったので、重い本を持ち歩くことなく、薄型ディスプレイを持っているだけで、世界中の本が気軽に読めるようになると考えただけで、ワクワクしていたことを覚えている。

また、それに前後して公開されたMinority Reportで、電車や駅の広告に薄型ディスプレイが多数使われ、紙のような薄さで、動画が表示される様子をみて、さらに想像力を描きたてられた。

そうか、将来は新聞で動画も見れるし、広告も自動で切り替わるんだ、と。

今、それに近い世界が現実になろうとしている。


ちなみに、皆さんは、今回のiPadをご覧になってどういう印象を持たれただろうか?

実は、私、昨年秋にKindleをどうしても欲しくなって、発注ボタンを押す寸前までいっていたのだが、AppleがタブレットPCの発売を計画しているという噂を聞き、注文をとりやめ、今回の発表を心待ちにしていた。

kindleDX-420x0.jpg
こちらは、Kindle DXを紹介するAmazonのJeff Bezos CEO

そんな数カ月越しの「ご対面」だったが、PCの薄型ディスプレイ版という印象が拭えず、こんな機能まで外出先でしないのでは?と素朴に感じた。

個人的には、心地よい大きさのディスプレイを持つ電子書籍端末で本を読みたいという意向が強く、Kindleに大きく気持ちが傾いている。

また、将来、Appleが電子書籍事業を止めても本業に大きな影響はないだろうが、Amazonにとって、電子書籍事業は、自社の事業強化、出版社との力関係に影響を及ぼし得るほどのインパクトを持つのでそう簡単にやめないだろうという期待感もある。

それに何より、E-Inkのディスプレイを採用しているし。。。

皆さんはiPad派?それともKindle派?

はたまた、ソニーなど他のメーカーがお好みであろうか?

忌憚なきご意見をお寄せいただければ幸いである。

下記、Redmond Pieで掲載されたiPadとKindle DXとの比較表


K


【メール便対応/送料\160】Sleevz for Amazon Kindle 2 【代引き不可】【10P05feb10】

こちらは、最近、出版された私の知人の本です。


科学することと気づき

2010年1月24日日曜日

日本航空は日本の社会主義システムの遺産だったのか?

JAL_S.jpg

まずは、このショッキングなタイトルが、日本航空の関係者の方々の気分を害したようであれば、ご容赦願いたい。

ただ、今回の日本航空の更生法申請に至る状況の社会的なインパクト、及び業績の悪化のレベルがあまりにも大きく、経営の非効率さ、もっと言うと存在そのものが、社会主義崩壊で見られた国営企業の状況にあまりにも酷似していると感じ、このタイトルをつけた。

20日付日経新聞によれば、「JALグループの負債総額は2兆3,200億円で、金融機関を除く事業会社では過去最大」だという。

一部報道で言われていた8,000億円の債務超過額もかなりのものだが、負債総額2兆3,200億円は想像を絶する額だ。

さらに、今後、企業再生支援機構による支援の下、総額9,000億円の公的資金枠が用意されるという。

この公的資金には税金が投入されることになるから、結局、日本航空再建の一部負担を国民が行うことになる。

9,000億円がどれくらい大きいかというと、民主党マニュフェスト主要項目と比べると、子ども手当の1.7兆円に及ばないものの、農業の個別所得補償(6,000億円)、高校の実質無償化(4,000億円)、暫定税率(2,000億円)よりもはるかに大きい。
財務相「平成22年度予算のポイントより」 

政権交代に影響を及ぼした主要政策よりもはるかに大きな額をJAL再建に投入することになる。

JALは1987年に民営化されたが、航空事業を生業とする規制業種の常として、常に国土交通省の管理下におかれる一方、地方空港ができるたびに路線を拡大、拡大を主導する政治家も一枚噛んで、事業を行ってきた。

地方空港建設の際は地元の建設業も潤っただろうし、JALの運転資金を補充する目的で、大手銀行はさして営業努力することなく、金利をピンはねできた。

まさしく、絵に描いたような政・官・業の癒着で、その影響も大きかったことは想像に難くないが、個人的にそれ以上の問題は組合だったと思う。

JALの組合は、「沈まぬ太陽」でも題材になったように、かなり強力である。

最近、その名残を感じさせたのは、JALの年金問題だ。

このBlogでも、取り上げたことがあるが、JALの年金は、これまで、現在の市中に比べ、破格の利率が保障されていた。

この秋以降、会社そのものが破たんに傾きつつあるのに、回答期限ギリギリまで、財産権を盾に年金減額に応じようとしなかった。

「沈まぬ太陽」以来、JALの組合のことを意識したことはなかったが、年金に対する組合の一連の対応は、その強さを感じさせるに十分だった。


最近、経済と社会の主導権を握っているのは、市場か国家かを描いた「市場対国家」という本を読んでいる。


市場対国家 上巻 世界を作り変える歴史的攻防 (日本経済新聞社)

世界の様々な国の問題を取り扱う興味深い本なのだが、これを読むにつけ、金融危機後、悪玉かのように思われている、市場経済重視の「新自由主義」政策も、その発生において、必然があったと思わされるのである。

なぜなら、社会主義が横行するあまり、組合によるストが横行、公共サービスまで影響を受けるようになる一方で、赤字前提の財政政策によって、インフレが生活を直撃したために、経済が停滞期を迎えてしまうという悪循環になったからだ。

もちろん、働くものの権利を阻害してはならないし、それを担保する組合の役割も尊重すべきと思うが、そもそも、その組合員に給料を払う、会社・団体が弱体化すれば、権利を主張する騒ぎでなくなる。

かといって、市場至上主義でいいのか、といえば、一昨年の金融危機をみれば、わかるようにそんなことはなく、何事も行きすぎはよくないということかと思う。

これらの事例にJALがどう当てはまるかといえば、結局、組合の強さで、会社そのものが弱体化、競争力が失われたということだと考えている。

その意味で、20日の日経新聞の社説は興味深く、関連するポイントを抜粋する。

「日航の経営が本格的におかしくなるのは21世紀に入ってからだ」

「過去10年の日航の合算純損益は1千億円を軽く突破する巨額の赤字だ。それでも破綻を免れてきたのは、ひとえに公的金融機関の支えがあったからだ」

「状況が悪化しても、危機感はなかなか浸透しない。部門間の対立や複雑な労使関係も改革のスピードを鈍らせた」

「その象徴が今回の再建でも大きな問題になった企業年金だ。積み立て不足は10年以上前から指摘されていたが、OBの反発を恐れて、手をつけなかった。ライバルの全日本空輸が早くも03年に後年度負担の発生しない確定拠出型の年金を導入したのとは対照的だ」
 
「日航を追い詰めたもう一つの要因は自由化の進展、競争の激化だ。98年にスカイマークなどが新規参入し、東京―福岡などの幹線で価格競争が加速した。民営化の成功で体力を回復したJR各社は新幹線の高速化に乗り出し、空の客を奪った」


先に述べたように、JALは87年に民営化し、株式まで公開していたが、新規参入をもたらす規制緩和を行った後も、「国営企業」的な経営を続けてきたことがわかるだろう。

公的金融機関が資金繰りを支え、ライバルがいち早く切り込んだ年金処理も先送するなかで、収益に対して余りある負債は膨らみ続け、結局はそのツケを国民が公的資金で支払うこととなった。

JALを利用しないANAユーザーも、ライバル会社のANA社員も、まして、飛行機を利用しない人さえも、そのツケを支払うことになるのだ。

これを社会主義と言わずして、何と言えばいいのか。

一部、政治家や官僚、そして、関連する企業がJALを利用し、甘い汁を吸ったからJALの経営が傾いたという指摘もあるが、国内線に強いとされたANAが、依然、存続しているのだから、これは誇張に過ぎるというものだろう。


今回のJALの会社更生法に至る皮肉は、生活者目線を重視する、民主党政権下で行われたことだ。

昨年9月の時点で前原大臣によるJALの自主再建案の見直しがなければ、さらにいうと、自民党政権なら、更生法申請には至らなかったかもしれない。

労働者よりも企業寄りとされた自民党政権が組合の強いJALを生き延ばし、企業よりも労働者寄り民主党がJALを更生法に導く。

本来であれば、労働者の見方で、失業者を最小限に抑えたいリベラルな民主党政権が、産業再生支援機構の下、会社更生に向けて、新自由主義的な厳しい再建アプローチで臨み、その結果、多くの失業者を生みだす、という皮肉。

今回のJALの会社更生法の善し悪しを議論する段階ではないが、ここにも、民主党政権の矛盾が垣間見えてしまう。


実は、私は、個人的にJALに強い思い入れがある。

学生で就職活動を行っていたとき、航空会社に興味もないくせに、JALの就職試験を受けた。

ミーハーなノリでOBの方とお会いしたのだが、空港のレストランで話した仕事がとても刺激的で魅了されてしまった。

こういう方がいる会社なら勤めてもいいなという気持ちが芽生え、2次試験に臨んだが、そもそも希望していない業界だったために不勉強ぶりをさらけ出してしまい、結局、採用の切符を得ることはできなかった。

それでも、OB面接のことが忘れられず、それ以来、海外への渡航はJALがメインで、初めてマイレージカードを作ったのもJALだった。

また、カレンダーのお気に入りはJALの「世界の美女」シリーズだ。

大学院時代、寝る前にそのカレンダーに眺めて、世の中にはいろんな国にいろんな美しい人がいるものだと、勉強で堅くなった頭を休めてくれた。

今でも、居間を飾るのは、この「世界の美女」カレンダーである。

だから、今回の結果は残念だし、複雑な想いなのだが、将来、「あぁ、やっぱりJALはいいなぁ」と思えるように、再生を期待したいのだ。

K

2010年1月17日日曜日

相次ぐ政治スキャンダルで得をするのは誰か?

昨年末の鳩山首相が実の母親から多額の現金を受け取っていたことということに続き、以前よりくすぶっていた民主党・小沢幹事長の「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金の虚偽記載の問題が、ついに逮捕者を生む結果となった。

昨年の総選挙で政権を獲得し、予算の無駄やその背後にある政治とカネの問題に鋭くメスを切り込むことを期待された民主党にとって相当な痛手であろう。

いわずもがなであるが、事実を解明し、事件性があるものについては、法に則って裁かれるべきで、個々のスキャンダルは適正に対処されるべきである。

よって、当たり前のことであるが、政治的な立場を利用して、法を犯すことがなきよう、政治家自身は襟を正さねばならない。

これら一連のスキャンダルをみるにつけ、事態が深刻だと思うのは、我々の国のトップ、及びその出身政党が、政治を取り組むうえで、腰が据わらないまま、脆弱な状態が続くことが国民にとってHappyかどうかである。

選挙で選ばれて生まれた政権なのだから、理屈としては、その政権は国民の総意が反映されていることになるが、日本国民が選んだはずの政党、及びそのトップがスキャンダルやよくわからない理由で足元をすくわれたり、交代するという事態は、国民にとっても喜ばしいこととはいえないだろう。

そういった図式でみると、結局は、国民がダメージを受けているといえるかもしれない。

言い換えれば、これは国民と政治をつなぐ機能・システムへの打撃であり、政権が変わることで適切に時々の民意の変化を反映させるという、本来のメカニズムが達成できない、ということにつながりかねない。

小泉政権以降、毎年、首相が交代するような状況がつづき、その他もろもろの弱さを露呈した自民党が昨年の選挙で惨敗、期待されて誕生した鳩山政権も窮地に立たされている。

そんな一方的に不幸な環境にあると思えるなかで、得をしている人はいるのだろうか?

米・コンサルティング会社「Eurasia Group」が発表した、今年の10大リスクのなかで、「日本」を5番目に掲げていることを紹介している。

「The new Democratic Party of Japan’s (DPJ) efforts to limit the influence of bureaucrats and industrialists are creating higher policy risk, especially after upper house elections in the summer.」
(興味のある方は、英語の原文を参照)

それについて、1月5日の読売新聞は、下記のように紹介している。

「発表によると、「官僚と産業界の影響力を制限しようとする民主党の活動が、より高い政治的リスクを生み出している」と指摘。鳩山首相を「選挙だけでなく、効果的な意思決定にも長(た)けていない」と酷評し、「今年1年と続かない可能性がある」とした。また、「真の実力者である小沢民主党幹事長は閣外におり、正式の政策(決定)ラインからも隠れている」と、解説している。」

政治・官僚・財界の3つの関係は、いつも取り沙汰されていることではあるが、自民党時代に比べ、より政治指導色を強めようとしている民主党にとって、特に官僚との関係で利害が相反することが考えられる。

官僚制度にメスを入れようとした民主党政権に対して、決して前向きな反応を示さなかったであろうことは、想像に難くない。

さらにいえば、次々と政権が交代することで、自身の影響力はさらに強まるであろうことも容易に想像できる。

いわば、古株のお局さんのいる職場の上司が毎年変わるようなものだ。

日本の政治システムは、政策(What)という、最も本質的、かつ重要なことよりも、政策を実行に移す運用面(How)で問題を抱えているようだ。

運用側の思惑が優先され、常にスポットライトがあたり、矢面に立つのは政治家だから、本質的な課題もなかなか明らかにされない。

そういったなか、一国民として思うのは、どこのネタなのかわからないマスコミの報道に一喜一憂せず、冷静に成果となる政策を見極めて、選挙でその成果への評価を反映させることが重要なのだろう。

逆風が強まる鳩山政権ではあるが、未だ政治的な成果を生みだしたとは言い難い。

政治的成果を生みだすプロセスで世論として意見を反映させることも重要であるが、一度、選んだ政権なのだから、政治的成果が出るのを見届けるのも重要である。

一連のプロセスで政治家は襟を正さねばならないが、我々国民も運用面の課題を意識しつつ、政治と向き合うことが重要であろう。

みなさんは、どう思われるだろうか?

ご批判も含め、ご意見をいただければ幸いである。

K

2010年1月10日日曜日

2010年最初のBlog

年末年始を挟み、3週間ぶりのBlogである。

この間、思えば、いろいろなことがあった。

世間に目を向ければ、政治の世界ではかなり大きい動きが続いている。

民主党・小沢幹事長と鳩山首相、およびその政権との微妙な駆け引きの下、民主党が掲げる主要なマニュフェストのうち、子ども手当は所得制限を設けないという従来路線は堅持する一方、暫定税率は廃止、別途、同等の課税措置を導入することを決めた。

また、来年度予算(総額92兆円)であるが、収入面で、戦後初めて国債(44兆円)が税収(38兆円)を上回る見通しである。

その予算案の発表後に閣議決定された新たな成長戦略においては、日本の強みである環境技術や介護・健康分野など成長市場と位置づけ、2020年度までの平均で、名目成長率3%、実質成長率2%を上回る成長を目指すとした。

そして、年が明けて、予算編成の要となる財務大臣が国会審議を前に管氏に交代、いきなりの円安容認発言で為替が円安基調となっている。

これら一連の内容をみるにつけ、いずれも唐突感が否めない。

鳩山首相の温室効果ガスの25%削減も同じだが、結果に対してよりも、むしろ、そこに至るプロセスについての説明が決定的に欠けている。

使えるリソースには限界があるので、ある段階でプライオリティをつけざるを得ないのは止むをえないのだが、なぜ、そうなったのか、なぜ、当初の見込みと変更せざるを得なかったのか、は説明する必要があるだろう。

予算については、このBlogでも何度か申し上げたように、この景気の状況を考えれば、ある程度、国債発行を増やしても、増額せざるを得ないのは明らかだろう。

問題は、そこまで膨張させた予算で、本当に景気の腰折れを防ぎ、理想的には力強い復活を描けるのか、ということであろうが、今回の予算案や財務大臣人事、そして、中期成長戦略などで、「よし、いける!」と思える人が、どれくらいいるだろうか。

残念ながら、現時点で政府の案を積極的に支持できる人はかなり少ないだろう。

政府としては、少なくとも、結果に対する意見の相違は受け入れても、そこに至るプロセスはきちんと公開し、政策的意図や誤算も含めて明らかにしたうえで、国民に是非を問うべきだ。


という堅めの話題から打って変わるが、私の年末年始について簡単に述べておきたい。

年末のBlogでも述べたように、この年末にバリに行ってきた。

Blogでは、「ヨガ修行」と書いたが、現地で、実際にヨガは、朝一度、行うのみで、ほかはヴィラ周辺でゆっくり過ごす日々だった。

DSC00204_S2.jpg

DSC00205_S2.jpg

<ここがヨガのレッスンを受けたところ>

バリと聞いて、海を思い浮かべる人も多いだろうが、今回の私がStayしたところは、ビーチから離れた山奥のUbudというところにある、Bagus Jatiというヴィラタイプのホテルだ。

Ubudは、バリの文化を象徴するところとも言われているようで、ほかに棚田の風景なども有名で、米はよくとれるところのようだ。


バリ島ウブド楽園の散歩道

Tegallantang_S2.jpg

<棚田も綺麗!>

そんなヴィラでの生活は、朝一のヨガから1日がスタートし、周辺の自然や村をウォーキングしたり、火山に登ったり(きつかった…)、ヴィラに宿泊している海外や日本のゲストの方とお話したりと、充実した休日を過ごした。

当初は、退屈するかなとも思ったが、全くそんなことはなく、いろんな意味で「お腹一杯」になったので、また、機会があれば、今度は、乾季の7~9月くらいに訪れてみたいと思う。


新年最初のBlogはとりとめもなくなったが、今年の私のBlogのスタイルは、一回にアップする量をやや減らし、読者の方が読みやすくなるように心掛けたいと思う。

そんなささやかな「バージョン・アップ」も感じていただきながら、また、今年1年、お付き合いいただければ幸いである。

K