2009年1月31日土曜日

Winners and losers in IT Industries <1> - IBM

以前は、パソコン・サーバーを販売するハードウェア・メーカーの代表格だったIBMも、Louis V. Gerstner 元CEOのリーダーシップの下、サービスとソフトウェアに事業の軸足を移す大胆なTransformationを行い、今となっては、第3次産業に属するサービス会社の様相を呈している。Gerstner氏の著書「巨象も踊る」に氏が取り組んだTransformationの模様が生々しく描かれているので、興味のある方は、お読みになられるのがいいかもしれない。サービスとソフトウェア事業を推進する一環として3年前に行ったLenovoへのパソコン事業売却のニュースは皆さんも記憶に新しいところであろう。



さて、まずはIBMの事業別売上構成と事業別売上成長率をご覧いただきたい。

1) Global Technology Services: アウトソーシング・サービス、インフラ・サポートサービス、メンテナンス 等
2) Global Business Services: コンサルティング、パッケージ・ソフトに関するアプリケーション開発・サポート 等
3) Systems and Technology: サーバー、ストレージ、セミコンダクター 等
4) Software: WebSphere(ミドルウェアソフトウェア)、Tovoli、Lotus、データベースソフトウェア、OS 等
5) Global Financing: 販売店向け短期在庫、売掛金の短期ファイナンス、クライアント向け中期リース・ローン 等

<事業別売上構成>



<事業別売上成長率>


全体の売り上げであるが、前回のブログの表では、270億ドルと、前年同期比6%減となっているが、為替変動を調整すると減少幅は1%だけだという。この混乱のさなか、売上が落ちていないといっても過言でないだろう。

それを実現するのは、同社の約80%の収益を支える、サービスとソフトウェアのビジネスだ。New York Timesはその内訳について以下のように報じている。

「売上の40%、利益の60%は、毎年更新される、ライセンスや契約ベースで定期購入される商品・サービスからなる」

About 40 percent of its revenue and 60 percent of its profit come from products and services sold on a subscription basis as licenses or contracts that are renewed every year or so.

顧客業務をそのまま請け負う、アウトソーシングが代表例であろうが、そのようなサブスクリプション契約であれば、売上がブレることもなく、高収益が期待されるというわけだ。

そのように無敵にみえるIBMも弱みがなくはない。上記のグラフのSystems and Technologyという部門は、サーバー・ストレージなどのハードウェアを扱う部門であるが、前年比20%の減少である。おそらく他のハードウェアメーカーと同様、顧客の意向に沿ったスポットでの販売が主な販売形態と思われ、今回のような経済環境では他のハードウェアメーカー同様、一気に売上が落ち込む。

そういう事情もあり、好業績を残したIBMといえども、「Resource action」という人員削減策(16,000人規模とも言われている)を通じて経営レベルでの「グリップ」を利かせることも忘れてはいない。

世界経済の回復には早くても1年、遅ければ2年くらいかかるという経済専門家の声が大勢であるが、IBMは自社の業績にかなり楽観的である。2009年の一株利益は、2008年の$8.93から、少なくとも$9.20になるという予想をしている。Wall Streetの$8.80という予測も上回っており、かなりの強気予測であることが伺える。今年もIBMの動きには目を離せない。

次回は、もうひとつの「勝ち組」 Appleに注目したいと思う。

K

2009年1月24日土曜日

Winners and losers in IT Industries <Introduction>

今週発表されたマクロ経済指標はどれも悲観的なものばかり。中国の経済成長率は現在の雇用維持に必要な8%達成は容易ではなさそうで、イギリスは金融業界の業績悪化でしばらく落ち着く兆しを見せず、お隣韓国も見通しは明るくなく、日本のGDPも向こう2年はマイナス成長・・・しばらく好転しそうがないのは明らかだが、マクロ指標だけではどうすればよいかの目星がつかない。

そんななか、今週、アメリカでIT業界の主要企業による昨年10-12月期の決算発表が相次いだ。先行して発表されたIntelの業績悪化のインパクトが大きかったので、こちらもあまり期待できないかと思いきやそうではなかった。以下に主要な業績結果と前期比をまとめる。


      売上・純利益の単位: 億米ドル

金融危機のなか、最もハードルが高いであろう、純利益が前期比からプラスとなった企業を「勝ち組」、それ以外を「負け組」(そう呼ぶには少し酷な環境かもしれないか・・・)としてまとめた。

まず、「負け組」からハイライトすると、Microsoftは高い利益率ながら、その成長率に陰りが見られ、先に発表された5,000人規模の人員削減策発表と関連づけても、ビジネスの成熟度が進んでいる様子が伺える。また、Googleは、売上高が7社中、唯一2ケタ成長しているが、純利益の急減から、これまで享受してきたネット広告頼みの収益構造に限界を露呈した格好といえそうだ。Intel、ソニー(正式な決算発表は来週)、Samsungの製造業3社の業績は見ているだけで痛々しく、miserableとしかいいようがない。製造業特有の課題として在庫リスクも抱えるだけに、今後、一層、厳しい対応が迫られるだろう。

これに対して、「勝ち組」2社の強さが際立つ。純利益ベースの増加、高い利益率・・・こういう厳しい環境に関わらず、目を見張る実績である。

次回以降、この「勝ち組」2社の売上構成と事業別の売上成長率から、「負け組」と異なる業績を生む特徴を考察してみたいと思う。

K

2009年1月17日土曜日

China to become third largest economy

相変わらず不景気なニュースが多いなか、今週の歴史的エポックなニュースといえば、中国のGDPがドイツを抜き、3位になったということだろう。

14日、中国の国家統計局(National Bureau of Statistics)が、2007年のGDPについて昨年4月の公表値より3.1%多い25兆7,306億元に上方修正を行い、GDPランキングが改定され、ドイツを抜く結果となった。WTO加盟以来、存在感を増している中国であるが、その経済レベルが裏付けられた格好だ。

グラフ1(IMFのデータより筆者が独自に作成)



Goldman Sachsの予測によれば、2040年頃までには、中国経済はアメリカを抜くとし、さらに、Economist Intelligence Unitは、各国での収入により実際の購買力を反映させて価格差を調整する、消費力購買力平価(purchasing power parity)を用いると、2017年(10年もない!)には中国がアメリカを抜く見込みであるという。日本がかすんでしまうくらいの勢いである。

ただ、こんな中国にも弱みがないわけではない。

日経新聞などでは、そもそも、今回の改定の下になった、中国 国家統計局の集計に対する信頼度そのものを指摘していたが、それを言い出しても本質的ではないので、まず指摘されるのは、一人当たりのGDP(GDP per capita)の低さがあげられるだろう。

1月14日付 Financial Timesの「China becomes third largest economy」(Geoff Dyer)という記事では、世界銀行のデータを引用し、中国の一人当たりGDPは2007年で$5,370と、エジプトやエル・サルバドル、アルマニアよりも低く、ランクは122位と指摘している。

Despite rapid growth and hundreds of millions of people lifted out of poverty, China remains relatively poor. In the World Bank’s rankings of GDP per capita for 2007 using purchasing power parity, China took 122nd place at $5,370, behind Egypt, El Salvador and Armenia.

グラフ2(前出と同様IMFのデータから筆者作成)


注釈: 上記データによれば、中国は5,325インターナショナルドルで100位。ちなみに、日本は、33,596インターナショナルドルで22位。日本の意外なほどの順位の低さは、格差社会の表れか。


また、以下のWEBでは、世界地図で一人当たりGDPの比較を行っている。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/87/GDP_PPP_per_capita_2007_IMF.png

そのような実態を踏まえ、日経新聞によれば、「中国は自らが「発展途上国」であるとの立場を変えていない」という。

また、先のFinancial Timesの記事では、一人っ子政策の影響による急激な老齢化や環境破壊への費用面の課題の指摘もされている。

In the medium-term, economists say that there is plenty of scope for China to maintain relatively high growth rates. Urbanisation and technology catch-up have decades to run. But the outlook is complicated by a rapidly ageing population and costs of damage to the environment.

万事がすべて順調というわけにはいかないようだが、そんな上り調子の中国と日本はどう付き合えばいいのか。

ドイチェ・アセット・マネジメントで中小型株を運用する越智明彦マネジングディレクターは、昨年12月19日のブルーバーグとのインタビューのなかで、以下のように述べている。

「金融危機による実体経済の悪化を受け、「世界各国が同時に財政出動するのは見たことがない。このインパクトが需要サイドに与える影響がサプライズとなる可能性がある」(同氏)中、特に中国の財政出動の規模は他国にないほど大きく、「その効果によって、世界経済は09年前半に底打ちするかもしれない」(同氏)と期待する。

中国が11月9日に発表した景気刺激策の総額は4兆元(約57兆5300億円)。昨年の国内総生産(GDP)の5分の1に相当するこの額を、2010年末までに使う計画だ。不良債権の根源地である欧米の需要は期待できないが、中国が年8%の経済成長を維持していけば世界経済の下支えが予想される」
(詳細はWEBにて: http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=90003011&sid=axgPqLzbNhVA&refer=jp_asia#)

このWEBでは紹介していないが、Bloombergのテレビ放送のほうでは、日本のビジネスモデルを中国に輸出すべしと述べ、たとえば、楽天の中国進出や、日本ですぐれたオペレーションを行っている、レストラーン・チェーンの進出などに期待していた。

これまで、どちらかといえば、「世界の工場」をあてにした第2次産業である製造業の進出が目立っていたが、これからは、サービス業である、第3次産業の進出が進むのであろうか。注目されるところである。

K

2009年1月11日日曜日

Exploring “New economy”

新しい年を迎え、世界の株式相場は上り調子で始まった。おもな要因は、オバマ新政権の政策期待によるものという。昨年末までの悲観論から一転して、このアメリカ側の「変わり身の早さ」には舌を巻くばかりである一方で、新しいトレンドを貪欲につかもうとする姿勢は見習うところもあるといえよう。

今回2回目のブログは、昨年の一連の金融機関で起こった出来事を各種メディアの情報をピックアップしてレビューしつつ、これからの新しいトレンドを自分なりに考察してみたいと思う。

まず、昨年の金融資産の損失額についてであるが、昨年12月16日の日経新聞がみずほ証券の試算として下記データを紹介していた。

金額単位:10億ドル 金融資産残高 推定損失率 損失
米証券         23,210     18.8%     4,370
英証券          1,095     24.0%      263
ユーロ証券      7,830     14.5%     1,134
米欧総合計     32,135     17.9%     5,767

米証券は損失額にして4.3兆ドル(≒400兆円)、損失率も英証券の24%にトップを譲るものの、米欧総合の損失率17.9%を軽く上回る。

ちなみに米証券の内訳は、証券の損失が2.6兆ドル(損失率24.3%)、ローンの損失が1.7兆ドル(損失率14.0%)とされており、昨年問題視されたCDOなどの新しい金融証券の損失インパクトがいかに高かったが推測される。米証券だけで、英証券やユーロ証券の損失総額を上回るのだから。

また、7,750億ドル(約71兆円)がオバマ次期大統領の初年度の景気刺激策として報道されているが、ひと桁違うボリュームの損失額分を補い、景気浮上のきっかけがつかめるか。注目されるところである。

こういった金融損失は信用収縮も引き起こしており、欧米のいくつかの企業では、社債利回りが、株式利回りを上回るという逆転現象が生じているという。

社債利回り 株式利回り
・ Unilever 4.6% 3.5%
・ Wal-Mart 4.9% 1.7%
・ Vodafone 7.2% 5.9%

出典:Financial Times, 2008 .12.29

この現象を報じたFinancial TimesのコラムニストTony Jacksonは、

"That expresses investors’ belief in a prospect of zero growth, zero inflation and high risk. Such an outlook, if correct, means corporate bonds should be worth more than equities, simply by virtue of their priority in the pecking order."

と語り、ゼロ成長、ゼロ・インフレ、ハイ・リスクという見方の下、社債は株式よりも価値があるべきとみなされている、という見解を示している。これまでのハイ・リスクの代わりにリターンも多いとされた株式のプレゼンス低下だ。

また、一連の金融業界の動きを世界の銀行・証券の時価総額から眺めるとさらに興味深い。

メガバンクとして君臨していた、Citi Group(2003年時点 時価総額2,502億ドル/2003年末の為替レートで約26.79兆円)は主役の座を明け渡し、代わりに

1. 中国工商銀行 (時価総額 16.80兆円)
2. 中国建設銀行 (時価総額 12.54兆円)
3. HSBC  (時価総額 11.82兆円)
・・・・
12.Citi Group (時価総額  3.81兆円)
(2008年12月12日の株価/出典:日経ヴェリタス, 2008.12.21)

のような順位になり、6位にランクインしている中国銀行(時価総額 7.15兆円)も含め、中国勢の存在感が急速に増しているのが現状である。

日経ヴェリタスは、この時価総額ランキングを紹介した記事のなかで、「中国が米国を上回り、先端の金融工学を武器に米国勢が金融界の頂点を占める構図が崩れた」としている。政府直轄の国有企業という中国の銀行の性格をどう捉えるかという点は見方が分かれるかと思うが、米国債の保有残高も、昨年9月に日本を抜いて中国がトップ(6,529億ドル ≒587兆円)になったこともあるので、中国のますますの存在感の高まりは無視できなくなっているといえるだろう。

言い換えれば、既に中国は「世界の工場」という形容詞で留めることはできず、欧米金融機関(当時の政府も含めて)の自己崩壊も手伝い、金融業界ひいては実業界を牽引する存在に名実ともになったということである。

このようななか、今年からの新しい取り組みとして、いくつかのメディアで紹介されたもののなかで目を引いたものがあるので、それを紹介しようと思う。

まず、2008.12.29付Financial Times で2009年の世界経済への提言を「Three priorities for recovery」というタイトルで紹介した、Wolfgang Munchau氏が、その3つの提言のひとつに、金融セクターの縮小ということを紹介していた。

"The second priority is to shrink the financial sector.
(中略)
We should instead focus on breaking up too-large-to-fail banks and reducing the size of the financial sector in relation to a country's GDP. In particular, we should not try to guarantee the obligations of a banking sector several times the size of our economies."

各国のGDPに応じて金融セクターの規模を縮小し、「大きくてつぶせない状況」を回避すること、また、経済規模の数倍もの規模の銀行セクターを救済する義務はなくすべき、と提言している。

具体的なスキームとなると、実現はかなり難しいかもしれないが、金融救済の際に、結局、そのツケが税金、はたまた、国債という手段で国民に跳ね返ってくることを考えれば、考えるべきことだと思う。

次に、冒頭にも紹介したような壊滅的な打撃を被ったアメリカを再生する役割を担うオバマ次期大統領だが、その政策の予測として、2008.12.28付日経ヴェリタスで行われたアナリスト3氏の討論にヒントがあった。

みずほ投信投資顧問 柏原延行執行役員はそのなかで以下のように述べている。

「テーマはクリーンエネルギーや排出量取引。オバマ氏は、排出量取引をテコに自動車産業や投資銀行の再生を狙うのではないか。自動車会社に環境の負担が少ない自動車を開発させる一方で、排出量取引を新たな金融ビジネスとして確立する、という展望を描いているだろう」

「グリーンニューディール」という旗印の下、太陽光発電など具体的なキーワードは既に紹介されているが、自動車・金融というアメリカの基幹産業を復活させ、環境問題の克服を一気に解決するとためにはこれほど(都合のいいほどに)有効なものはないように感じられ、納得させられる指摘ではある。オバマ氏の具体的な方向性を公式見解する最初の場になるであろう、一般教書演説が注目である。

最後に、草の根の投資活動として注目されるのが、マイクロクレジットである。2009.1.6付日経新聞で、ある会社員の取り組みが紹介されている。

「都内の会社員、堀内大(30)は貧困国の起業家十人に計二百七十五ドルを融資する。アゼルバイジャンの喫茶店経営、カンボジアのタクシー業……。米サンフランシスコに本拠を置くマイクロファイナンスの非営利組織(NPO)キヴァを通じた資金提供だ。
 起業家がネットで事業計画を示し、貸し手がクレジットカードなどで送金する。堀内は「自分のお金の使い道が分かるのが魅力」という。キヴァではこれまで先進国の四十万人が貧困国の十万人に計五千万ドル以上を貸し出した。
  お金を幅広く集め、貧困国に小口融資するマイクロファイナンス。直近の残高は前年比約三割増の三百億ドルに達したとの推計もある。〇六年には同分野のパイ オニア、グラミン銀行を率いるムハマド・ユヌス(68)がノーベル平和賞を受けた。「超」が付く小口分散の徹底、融資を受ける側の共同責任……。こうした 手法で貸し倒れをコントロールし、貧困国への援助を「施しの論理」ではなく「金融の論理」で実現した。」

これをどう捉えるかは個人的な見解の分かれるところであろうが、私は従来のベンチャー企業への投資活動における「エンジェル」からさらに対象を拡げた「ニミ・エンジェル」として発展できるように思えた。

従来は、個人的な企業への資金提供者である「エンジェル」が、自ら起業し、事業を成功に結び付けた裕福な個人が後世の若者に自身の経験の伝授とともに出資するものであったが、上記のようなものであれば、「ミニ・エンジェル」として、大金をもたなくても、また、事業を大成功させた経験をもたなくても、数千円から数万円規模で参加できる。自身で事業を立ち上げる経験も貴重だが、出資者として参加する経験も一方で貴重であろう。

少なくとも、現在のような資金供給が枯渇し、信用が収縮、株式利回りが社債を低下するといった状況では、社会的にも意義は大きいはずだ。また、こういう仕組みが、特に日本のリタイヤ世代の膨大な金融資産と結びつくようになれば大きい。出資者は数千円単位での小口参加が可能、加えて政府がそこで提供される資金であげた収益について減税するなどの施策(上記の途上国向け資金であれば、ODA予算を充当するとか・・・)で後押しすれば、地域間、および世代間の資金還流にも繋がる。出資者が希望すれば、出資先の現地視察なども可能とすれば、ささやかながらかもしれないが、旅行業の後押しにつながる。

これまでの、政府・官僚・産業が主役となる、政官民の複合体的な組織が主役で、どちらかといえば存在が軽視され、情報が遮断されてしまう個人が孤立するような環境で、耐久消費財の消費によって経済をけん引する、いわゆる「ハード」な経済よりは、個人が主体となって集団になることで「マス」を構成し、対象となる産業も重厚長大な初期投資が必要になるようなものでなく、比較的小さな資本で始められるサービスが主体になるような「ソフト」な取り組みについて考えなおすべきではないか。

こんなことを考えつつ、今年もこのブログを続けていきたいと考えていた次第である。

K

2009年1月5日月曜日

A Happy New Year ?

年明け早々のアメリカ市場はよいスタートで幕を開けた。

国内のニュースを見ていると、新しい年について悲観的な見通しを伝えるニュースが多く、また、「派遣村」の年越しの様子などを見るにつけ、マスコミがその責任を問わない「様子見」な姿勢であるが故にいたたまれない気持ちになってしまう。

ところが、海の向こうはどうやら様子が異なるようだ。株式市場が2日に初日を迎えた、アメリカ市場では、

ダウ・ジョーンズ: 9,034.69(前取引日比 2.94%アップ)
S&P500種: 931.80(前取引日比 3.16%アップ)
ナスダック総合: 1,632.21(前取引日比 3.50 %アップ)

と軒並み上昇である。

これも、同時に発表された、米サプライマネジメント協会(ISM)発表の12月製造業景況感指数が、前月より3.8ポイント下がって、28年ぶりの低水準である32.4となり、更なる景気悪化を示していたことから、さらに鮮明な対比だったと言えよう。

なぜ、株は上がったのか?

日米いずれのマスコミの論調では、早くもObama次期大統領が実施するとしている、6,750億ドルに及ぶ景気浮揚策への期待感が織り込まれているというのが、大筋の見方だ。

それに加えて翌3日のNew York Timesの記事が痛快である。

“Stocks Rally to Start Year; Will January Be an Omen?”と題した記事では、John J. McConnell教授と、S&PのアナリストのHoward Silverblatt氏の説を引用して、McConnell教授曰く、“January barometer effect”により、1月の株価がその年のその後のトレンドを占う材料になるとしている。

“On the one hand, I am a believer in the efficient market hypothesis,” said John J. McConnell, a finance professor at the Krannert School of Management at Purdue University who has studied the January phenomenon. “On the other hand, given that the other January effect was such a powerful predictor of the market during the past year, I am chastened. The market has a way of humbling us all.”

In fact, in 60 of the last 80 years the performance of the S.& P. 500 in January has accurately predicted whether stocks would end higher or lower for the full year, according to Howard Silverblatt, an index analyst for S.& P. He added that among the 12 months, January had by far the best record as a harbingerfor future performance.

非常に幸先が良いではないか!

本日放送された、テレビ朝日の「サンデープロジェクト」で岡崎氏は、Obama次期大統領のチームの入れ替わりにより、White Houseは非常に雰囲気が明るいというし、また、同じく本日放送のBloombergに出演していた藤巻健史氏は、「経済の回復は、周りが予想するよりも早いのでは?」とコメントしていた。

これは昨年からも言われていたことではあるが、経済回復のカギは、いずれにしても、住宅関連の指標回復である(住宅着工と住宅価格)。これが回復さえすれば、米経済の回復も期待できるに違いない。これについても、「春には底打ち」との見通しも伝えられており、回復もそう遠くないことが期待される。

さあ、明日は今年の仕事始め。
取引所も開き、株価の動きが気になるところである。

先のNY Timesの記事では、過去の経験則は何の保証もないといってはいるが(”Past performance is no guarantee of future returns.”)、やはり、期待してしまうのは、人間の性であろう。

K