2009年10月25日日曜日

今、民主党政権に必要なもの

私は、民主党政権になってから、ちょっと気にかけていたことがあった。

前にブログでも触れたのだが、鳩山政権が予算決めをどうするのかにとても興味があった。

私の読みでは、今年度は福祉でも公共工事でも予算をバラまいてとにかく景気回復を早める一方で、来年度の予算で民主党の色を強く打ち出すものと考えていた。

来年度予算について大ざっぱにいえば、今年度のバラまきで生じる「貯金」も利用しつつ、緊縮型にして短期的な景気回復を犠牲にして国の借金を減らす方向を目指すか、または、景気浮揚を目指して大幅に支出を増やすか(→歳入の増加が見込めない現状では、後者は国の借金を増やすことに他ならない)の2つの選択肢があると思うが、どちらを選択するかで民主党政権の方向性が理解できると思っていたのだ。

ここ最近のニュースで、来年度予算の概要がメディアを通じて伝わってきたので、自分の読みに対して、現実的にどうなっているのか検証してみた。

BGT

結論から言うと、現段階では、私の予測は最初から見込み違いであったようだ。

というのも、そもそも今年度の補正予算からして緊縮型でバラまきではないのである。

自民党政権が決めた補正予算を、結果的に3兆円減らすことを決めた。

国土交通省の並々ならぬ予算削減作業が報道されたのは記憶に新しいと思う。

これにより、今年度補正予算は10.8兆円になり、当初の規模から2割以上カットされた。

そして、来年度予算だが、今年度の補正予算を除いた当初予算は各省の要求を積み上げると95兆円規模になり、今年度予算を組んだ自民党政権より6.5兆円も多くなる。

数字だけみると、歳出増加による景気浮揚を目指すように思えるが、行政刷新担当相の仙石さんが92兆円、財務相の藤井さんは90兆円まで減らしたいと言っており、その言葉から、少なくとも両氏は来年度の予算編成については、借金を減らす緊縮型財政を目指していると伺える。

ここから見出せるのは、基本的に民主党の政策は景気の先行きとそれに伴う雇用創出にプライオリティは置かず、借金を減らす予算緊縮を目指しているものの、マニュフェストで掲げた子ども手当(10年度 2.3兆円)などの福祉政策の実現を目指す結果、予算規模は増大し、借金も増えてしまうという構図である。

よって、よく言われる、施策実施に向けた財源の確保と景気の二番底への配慮が見えない。

環境問題と高速道路無料化への対応が矛盾するという指摘がよく言われるが、ひとことでいうと全体としてチグハグなのだ。

同じ国債を切るなら、景気が落ち込み、失業率の高い今、すなわち、今年度の補正予算のほうが来年度予算より、社会的課題と景気浮揚の両面で効果的だろうと思う。

経済の側面から考えれば、そもそも職を得て消費が活発にならない限り、景気も良くならないので、企業の業績も上がらない、また、税金の面から捉えると、経済活動が活発にならない限り、所得税、消費税、法人税のいずれも増えないので、借金依存が長引く構図となる。

国債を打つなら今年度の補正でドン打つ、という真意は、こういうことで、早く手を打つほうがいいのだろうと思うし、(あまりこういうこうとは言いたくないが)世論も味方にしやすいだろうから、来年の参議院選にもいい影響が出るはずなのだ。

先週、管直人副総理・国家戦略担当相が「予算の在り方に関する検討会」を開催、有識者を集めた結果、「中長期的な財政規律の在り方」を明確にしたうえで、3年間という中期スパンで歳入見込みと歳出削減を一体で示す、複数年度予算の導入が検討されたが、結果的に23日の閣議決定における予算改革の方針からはこのプランも先送りされたそうだ。

このエピソードから、予算編成の見通しを現時点では明確にしたくないという政権の意思表示とも受け取れるし、そこまでのコンセンサスが民主党内、そして、連立を組んだほか2党との間でとられていない証左であるかもしれない。

この予算編成について、極めて単純に、かつ、厳しい言い方をすれば、実入りを増やすことも考えないで、受け取るお金以上のお金を使うことばかりを考えているようなものだ。

ここで予算面でも社会政策面でも非常に存在感を示す省庁がある。

メディアは、八ツ場ダムやJAL、高速道路無料化などで国土交通省にスポットをあてるが、実は、その存在感は厚生労働省の比ではない。

何しろ、概算要求額の4割近くの予算(これはほぼ来年度の税収に匹敵する額です)を提示し、子ども手当も管轄しつつ、年金問題への取り組みや新型インフルエンザの対応も迫られる。

高齢化社会を迎えたことで構造的に重責を担わざるを得ないのだが、民主党政権になったことで、さらにそのプレゼンスが増したといえよう。

ミスター年金こと長妻大臣の手綱さばきに期待したいところだが、一方で早くも大臣間の予算折衝では「長妻包囲網」が始まっていると聞く。

そういった姿勢が厚労省から冷やかに受け止められると、今後の活動にも悪影響が出てくるだろう。

こういった一連の民主党政権の運営を見るにつけ、発足した当初の安倍政権の様子が思い起こされるのは私だけだろうか。

フレッシュな顔ぶれで小泉構造改革路線を引き継ぐと期待されたものの、結果的に自民党内部の守旧派に取り崩される一方、郵政民営化反対議員の自民党復党問題や閣僚人事で世論からも袋叩きにあい、禅譲を余儀なくされた。

やはり、政治においては、崩してはいけないことをしっかりと堅持しつつ、その実施のために、したたかに策を打つことも必要だろうと思う。

今、民主党に必要なのは、政策の軸が何でそれを何で支えるかという政策のプライオリティ付けなのかもしれない。

K

2009年10月17日土曜日

社会貢献活動とシニア層の存在感

まだ、私が経営学の勉強をしていた頃、気になる女性Jazzミュージシャンがいた。

それはヴァイオリン奏者の寺井尚子さんで、演奏の実力もさることながら、ルックスの良さに加え、情熱的な演奏はこれまでにないもので、当時、私が読んだ新聞記事は、今までにない新しいジャンルを切り拓く期待の新星、と紹介していたように記憶している。

勉強を終え、会社勤めに復活したら、いつかコンサートに行こうと思いながら、この数年、なかなかそれが実現しなかったのだが、今週、その機会が突如、訪れた。

先週のJazzイベントのさなか、会場のポスターで近くのホールでコンサートが催されるのを知ったわけだが、平日開催だったために行けないことも考えられ、あまり意識しないように過ごしてきた。

だが、コンサート当日となる昨日金曜日、仕事が早く切り上げられそう期待がもてた時点で、早速、空き状況を確認するため、電話をしてみた。

「はい、いのちの電話 事務局でございます」

ん?

この一週間というもの、仕事のことを気にしつつ、チケットが手に入るか否かは私にとって相当な懸案事項だったが、いのちに関わるほど深刻ではない。

間違い電話??

「あの~、本日の寺井尚子のコンサートのことでお電話したのですが・・・」

「ご連絡、ありがとうございます。このお電話で承ります」

あれっ?この電話でよかった??

手元の資料を見てわかったのだが、今回のコンサートは、いのちの電話が企画したコンサートだったのだ。

電話で当日券に余裕があることを確認し、早々に仕事を切り上げて会場に向かったわけだが、会場に着いてさらに驚いた。

先週の市を上げてのJazzイベントや日頃出掛けるJazzバーとは明らかに異なるシニアの方々で、会場がごった返していたからである。

会場のホールは、おじさま、おばさま方でほぼ満員、入口の付近で催されていたバザーにもシニアの方々がたくさんいらっしゃった。

おそらく、寺井さんのコンサートを通じて、いのちの電話の活動を広く知っていただくとともに、同時に催されるバザーや寄付などで活動資金を集めるのが目的なのだろう。

まさしく寺井尚子さんにつられてきた私のような新参者は格好のターゲットだったわけだが、来場者の多くはいのちの電話の活動を支援している方と思われ、会場ではその熱気に押されるようだった。

寺井さんのライブは予想に違わず、素晴らしく、そのヴァイオリンの音色にすっかり魅了されてしまったが、純粋な音楽好きが集う会場とは、また、違う雰囲気に触れて、こういう社会的な支援の仕方もあるんだなと実感した次第である。

家に帰って調べたところ、いのちの電話のボランティアスタッフも高齢化が進み、これまで続けてきた24時間対応ができない地域もでてきたようなので、今回のような活動によって、少しでも、いのちの電話に助けを求める人たちや運営側に回っているスタッフへの理解が高まり、社会的に後押しできる機運が拡がればいいと思う。

それにしても、その主役の一端を担っているのが、その会場にいらっしゃったシニアの方々かと思うと、「世代間格差」などと軽はずみに、シニアの方々に対してやや刺激の強い主張をしてきた自分が恥ずかしくなってしまった。

一方で、私も含め、もっと若い世代が後押ししてもいいんだろうとも思う。

前回紹介した、Virgin GroupのRichard Branson氏の本(
僕たちに不可能はない)によれば、Virgin Groupはチャリティー活動として、いのちの電話と同じような活動をVirgin Uniteというプログラムで行っているとのこと。

しかも、この取り組みはVirginが大きくなってから始めたものではなく、Virginの初期の事業のひとつである、「Student」という雑誌を発行していたときから行ってきたものだという。

社会貢献活動において先駆けた取り組みの多いイギリスならではの話だと思うが(いのちの電話ももともとはイギリスの活動にヒントを得たものとのこと)、近年、うつ病を発症する方や自殺者が増加している日本でも、もっと社会的なインパクトを持てるように、活動に厚みが出てくることを期待する。

個々人の活動に対する支援の気持ちが重要なのは疑いようもないが、今回のような著名なアーティストやVirginのような世界的な企業の協力を仰ぐような、広報的なアプローチも必要だろうと思う。

これはマーケティング活動と同じような考え方だと思うのだが、認知もなく、関心も持たれないことにサポーターの協力は得られない。

そう思うと、対象がなんであれ、自分の得意な分野で社会に役立つことができるのではないか思えるわけである。

楽器がまともに演奏できない自分には音楽で社会貢献はできないだろうが、自分の好きなことや強みと思えることで何か役立つことができるかもしれない。

そういう想いに至ったことで、今回のコンサートはいいきっかけを与えてくれたと思うと同時に、自分に何ができるのか真摯に考えなければならないという想いが強くなった次第である。


K



P.S.

本当は、今日、参加したイベントで実感した、シニアの方々によるもうひとつの社会貢献活動を紹介したかったのだが、やや長くなったので、また、機会があったら、紹介したいと思う。

2009年10月11日日曜日

経済発展と環境にやさしい社会の実現 ~『Gaia Capitalism』

私の住むこの街では、昨日と本日、年に一度の大イベントが開かれ、大いに賑わっている。

「Jazz Promenada2009」と題される、そのイベントは、日本からはもちろん、海外からもJazzミュージシャンが集い、それこそ、一日中、市内の各ホール・イベント会場で何かしらJazzの演奏が楽しめる。

ここ最近、Jazzライブに足しげく通う私にとって、(今の若い人の表現を借りれば)「やばい」イベントなのである。

昨日は、今月から始めたヨガのレッスンで精神と肉体を「清めた」後、その足で会場に向かい、ほぼ半日、いろんな場所でそれこそJazzで「お腹がいっぱい」になるような気分が味わえた。

ヴィブラフォンとピアノのデュオから始まり、ブラジル出身のアーティトが奏でるサンバのリズム、アメリカからの参加したピアニストがリードする伝統派Jazz、そして、日本のJazzの重鎮が集ったオールスターセッションなどを満喫、本当に素晴らしい演奏ばかりだった。

なかでも、最後のセッションのSaxの音色はとても「艶やか」に感じ、会場を出るころはうっとりしてしまった。

やはり、たまにはこういう右脳の刺激は貴重である。


さて、本日の本題。

昨今の「ホットな」課題の一つに環境問題がある。

鳩山総理の国連の演説で、温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減する中期目標を表明したのは記憶に新しい。

読売新聞によれば、国民の7割以上がこの表明に賛成の意向を示したというが、これに対し、産業界の反応はやや冷やかだ。

いまのところ、7日に経済同友会が賛同の意を表明した以外、反対と慎重な姿勢を表明するほうが多い。

こちらの以前のBlogでもお伝えしたが、この課題について話す経団連の御手洗会長の表情はとても堅く、バブル後に日本経済をけん引してきた会社のトップとは思えないほどだ。

この背後には、温暖化ガス削減の取り組みが企業に大きな負担がある。

特に日本は輸出主導の製造業がけん引する産業構造なので、工場などで排出される温暖化ガスの取り扱いは、極めてSensitiveな課題と言わざるを得ない。

しかし、だからこそ、前向きに取り組む価値があるという見方もあるはずで、その辺は先の経済同友会の会長 桜井氏が会長を務めるリコーや、2日の会見でハイブリッド車の供給などを通じて積極的に温暖化ガス削減に取り組むことを表明したトヨタ自動車などの姿勢をみると、明るい材料もあるのも確かだ。

確かに、当初、企業側は大きな負担を強いられるのだろうが、その取り組みは最終的には環境意識の高い消費者から支持されるはずだ。

また、CSRの観点で投資先を選別する投資ファンドもこれまでになく、増えてきているので、投資家からの支持もほぼ間違いないだろう。

だから、もっと地球温暖化に積極的に賛同の意を示す企業、及び経営者が出しきて欲しいと強く思っているのだが、世界には既にトップ自らが旗を振って積極的に取り組んでいる会社もある。

メディアや航空会社、鉄道など参加に幅広い事業を持つ、Virgin Groupはひとつのベンチマークになるだろう。

今、そのVirginを率いるトップ Richard Branson氏の著書「
僕たちに不可能はない」を読んでいるが、その本では、Branson氏が提唱している『Gaia Capitalism』というコンセプトが紹介されている。

一言でいえば、自社の事業の発展と環境問題を両立させようというコンセプトなのだが、2006年にAl Gore氏のプレゼンで環境問題に「目覚めた」Branson氏が、自社グループで何ができるか検討を重ねて打ち出したひとつの方向性である。

本のなかでは、Branson氏は以下のように述べている。

「この名前(=Gaia Capitalism)の下にベンチャー・キャピタル的ビジネス手法によって、今後10年間、Virginが正々堂々お金を稼ぎながら世の中に本当の変化をもたらすと信じている」

航空事業などを傘下に収めるVirginにとっても、少なからず、負担を強いられる課題であるはずなのだが、Branson氏の想いは相当なものだ。

なんでも、2004年から2006年の間にVirginが支払う航空燃料は5億ドル(当時のレートで約520億円)も上昇していたそうで、そういったコスト要因の解決という意味合いもあるようだ。

例えば、航空滑走路において一部飛行機を特殊車両でけん引することで燃料代を削減する案や代替エネルギーの研究なども提唱している。

結果的に具体策としては、温暖化問題の解決につながるアイディアに賞金を出すような、先にコメントにもあるベンチャー・ファンドの創設に結びついた。

様々な具体策のひとつひとつについての是非はあるだろうが、最も大事なことは、企業が、特にそのトップ自らが環境問題の重要性を理解し、Sustainableな社会の実現に向けて取り組むことである。

引退を目前に、花道を飾りたいトップでは無理かなぁとは思いつつも、先のBranson氏も来年は還暦を迎える(イギリスにはそういう考え方はない?)。

その氏がここまで情熱を燃やすのだから、年齢は関係ないはずだ。

要は、課題に取り組む意思(Intent)と、状況変化に応じてプライオリティを置き換えられる柔軟さ(Flexibility)である。

早く産業界版「鳩山イニシアティブ」を打ち出す気概に満ちた日本の経営者が出てきてほしいものである。

K

2009年10月4日日曜日

会社の「年齢」とこれからの産業トレンド

未だ暑さを感じるものの、朝や晩は涼しくなり、季節の変わり目を感じる。

なお、昨日は中秋の名月とのことで、非常に綺麗な月が見られる夜だった。

そんななか、最近、週末は恒例になってきているJazzの鑑賞も、一風変わったところがいいと思い、昔の外国人邸宅の洋館で行われたコンサートに行ってきた。

その名も「酒と薔薇の日々 第一夜」。

会場となったベーリック・ホール(The Berrick Hall)という洋館は、以前のイギリス人貿易商 B.R.べリックの邸宅として建設されたもので、現在、横浜市認定歴史的建造物になっており、普段は、一般にも公開されている。

そのリビング・ルームでコンサートが開かれたのだが、まず、入口となっている門扉からの眺める、ライトアップされた建物自体が幻想的で、入った瞬間に日常を抜け出すような感覚になった。



また、そんな素敵な場所で奏でるJazzの演奏もたまらなく魅力的で、スタンダード曲に加え、「天城越え」、「青葉城恋歌」のJazzのアレンジ・バージョンや「月夜野」といったオリジナル曲まで、大変、素晴らしい演奏だった。

MNGというグループの演奏だったが、なんでも先月中旬で行った仙台のライブも、大変好評だったそうだが、それも十分うなずけるものだった。



また、途中の休憩時間でもてなされた軽食やワインもスタッフの方々の気遣いが感じられた。

素敵な講演だったので、次回の24日に行われる、「第2夜」も参加してみたいと思う。

お近くにお住まいの方がいらっしゃったら、参加されることをお勧めする。


さて、本題。

先週、日本とアメリカでの失業率が発表された。

日本の8月の失業率が5.5%、アメリカの9月の失業率は9.8%と、雇用環境の悪化を改めて感じさせるものだった。

一方、政府と各省庁の間では、今年度の補正予算の編成について調整が行われているが、各省庁間での予算削減のテーマは無駄な公共事業の削減であるため、今後、少なくとも半年間は、政府投資による企業業績への貢献は限定されたものになるだろう。

だから、企業は将来の業績不安から採用を手控え、深刻な場合は、社員をさらに解雇する可能性すらあり、そのため、賃金は上がらず、結果として、消費は上向かず、モノの値段も上がらない、という完全なデフレ状況に突入していると言える。

だが、こんななか、業績を上向かせている会社がある。

その代表例が「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。

昨日の日経新聞によれば、9月の既存店の売上高は前年同月比31.6%とのことで、伊勢丹や松坂屋といった、マイナス成長だった百貨店業界を大きく引き離している。

さらに驚かされるのは、売上アップや来店客数のアップもさることながら、客単価が7.8%伸びているということだ。

低価格の衣料品を取り扱う業態であることを考えると、なおさらその凄さが際立つ。

そんなユニクロは、今月のパリの基幹店のオープンに加え、都心でも大型店を次々に出店する計画を発表している。

これら一連の業績好転は、今の世の中の景気の影響が後押ししているのは間違いないだろう。

昨年まで、百貨店で買い物をしていたが、今年はユニクロで、という方もいらっしゃるのではないか。
(現に私もその一人??)

実際に失業された方や、働いていらっしゃる方でも将来の失業不安や、給与ダウンという現実に直面すると、嫌が応にも財布のヒモは堅くなる。

そんな荒んだ消費マインドをやさしく微笑んで迎えてくれているのが、こういう企業なのだろう。


それでは、こういった企業の成長は一過性のものなのだろうか。

もちろん、確実なことはいえないが、私は、ファーストリテイリングのような企業は長期的成長トレンドを描きつつあると考えている。

先週、日経ヴェリタスという金融専門誌が「診断『会社の年齢』」という特集をおこなっていた。

これは企業の売上成長率や企業の収益率、株価などを使って算出した指標を、人間の年齢に置き換えたもので、ファーストリテイリングのようなSPA(製造小売り)業態が押し並べて、20代後半30代前半と診断されたのを見て、妙に納得してしまった。
(ちなみにファーストリテイリングは27.9才!)

ヤフーやカカクコムのようなネット企業は20代前半、自動車が40歳前後、電機が40代半ばから50代といったように、まさしく日本の産業の実態を端的に表しているようだ。

身近に接する各社の状況などを想像すると、なんとなく理解できる気がするのではないだろうか。

異なる側面から眺めると、さらに理解を深められる。

今、再建問題で揺れている日本航空や、海の向こうで一足先に再建に目星をつけたGMなどは、業績不振のみが再建の重石になったわけではない。

それらの会社は、いわゆる先輩社員達の年金などが負債として重くのしかかっていたのだ。

一方、「20代」企業は会社年齢も若いが、スタッフも若い。

年金などを心配するのはまだまだ先のことなので、そういった面からも事業リスクが少ない。

事業の歴史が浅いという決定的な理由もあるが、結局、企業が継続して成長するには、ある一定の新入社員の採用枠は維持して、常にスタッフの循環を行うことが必要という証左ともいえる。

単純に平均年齢を若く保つというためだけでなく、「新鮮な」事業を維持するという意味でも重要なのだろう。

こういったことが一過性にならず、「トレンドを作る」という見方につながっているのだが、日本では、静かに、でも、確実に産業転換が行われているのではないだろうか。


成長ばかりがいいことではないだろうが、若い世代が力を存分に発揮できるような、活力ある社会にはなって欲しいと想いに耽る、中秋の名月であった。

K