2010年2月6日土曜日

2つの矛盾した政策から考える民主党の課題

今週、民主党の重点施策というべき、2つの政策について具体的な内容が明らかになった。

いずれも、産業構造を変えかねないものだけに、マスコミでの注目度も高かったようだ。

ひとつは高速無料化の対象区間や実施時期のこと、もうひとつは温暖化ガスの25%削減に向けたロードマップである。

両方の政策ともに、生活者視点を重視する民主党らしさが伺えるのだが、どうもその2つの組み合わせがしっくりこない。

片方は車での移動を活性化させるという意味で温暖化ガスの増加を促すものだが、もう一方は、国内のみならず、諸外国とも連携して温暖化ガスを削減しようというもの。

克服しようとする課題が、各々、違う場合もあろうが、それによってもたらされる結果が、相矛盾するというのはいただけない。

ここらへんが、グラウンド・デザインを描く司令塔がいないと言われる民主党の課題だ。

3日付の日経新聞では、下記のように指摘している。


 「地域と経済を活性化します」――。民主党はマニフェストで高速無料化の狙いをこう訴えた。ただ、今回の無料化政策が地域にどれだけの経済効果をもたらすのか、今の時点では何も見えない。10年度予算編成で大きく道路整備の予算が削られた地方からは「無料化よりも必要な道路整備を」との声も上がる。


今回は実験のフェーズとはいえ、そもそも経済効果の目途がはっきりしない政策に、1,000億円の予算を割くのはいただけない。

しかも、今回、対象となる路線は、政治的な判断の賜物であるようにも感じられる。

言い換えれば、地域との交通網の促進で経済を活性化するという崇高な目的が、無料化で特定地域にメリットをもたらし、夏の選挙対策を行っているとも解釈できる。

一方で、温暖化ガス削減においても、その活動によって生じる経済的な付加価値も見えづらい。

結局、今回の政策を一例に感じるのは、日本の景気をダイナミックに回復させたうえで、経済界も生活者もその利益を享受しながら、そこから得られる税収で財政を健全化させようという意思がみられないということだ。

子ども手当もそうだが、そもそも乾いた雑巾を絞るような感覚に近い政策を推し進め、これまでの日本の「貯金」や将来得られであろう「富」を使いきろうとしているような気がするが、みなさん、いかがお感じであろうか?

「生活者視点」というメッセージは、国民にはとても心地いい。

しかし、企業が業績を上げられず、従業員は満足な定職が得られない状況が続くようにしながら、政府の支出だけに頼るっては、いつまでも「生活者視点」の政治は行えないだろう。

貯金を取り崩すような政策しか押しだせないのは、今の政権の弱みだ。

だから、短期的に、国としてどうやって富を生みだす政策を推し進めるか、それが、国民の日常生活にも波及できるようにするか、それが民主党政権に課せられている喫緊の課題のはずだ。

最近、読んだ「市場対国家」で、サッチャー元首相のコメントがこう引用されている。

(政府の役割の役割はなんなのか、という問いかけに対して)
『第一に、財政を健全にすること。第二に、法律の適正な基盤を作り上げ、産業、商業、サービス、政府がいずれも活発になれるようにすること、第三に、防衛がある。教育が第四で、これは機会を得る道になる。第五は、社会保障だ。』


市場対国家 上巻 世界を作り変える歴史的攻防 (日本経済新聞社)


サッチャーリズムで語られる新自由主義は、その後の金融業界の暴走や格差社会を生みだしたとも指摘もされるが、そもそも、富を生み出せなければ、教育・社会保障の向上も実現できないとする、このメッセージは説得力がある。

サッチャーが語る最初の3つを額面通りに今やったら大変なことになるものの、しかし、一時的な政府予算の膨張は、あくまで、将来の財政健全化を前提に行うべきで、健全化された財政のなかで始めて、安定した社会保障が実現できるというものだろう。

財務省が4日、国会へ提出した2010年度予算案の参考資料で、国の財政を巡って「借金」が税収を上回る異常な事態が長期化するとの試算を示した。

少なからず、いたずらに予算を膨張させかねない、民主党政権へのけん制とも感じられるが、そのなかで、歳出削減や増税などの税制改革を進めない場合、2013年度は税収が40兆7千億円にとどまる一方、国債発行額が55兆3千億円に達する可能性を示唆している。

言い換えれば、来年度から少なくとも3年間は借金による国家運営が余儀なくされると指摘しているわけで、そうなったら、昨今のJAL問題ではないが、年金を含む社会保障へのしわ寄せは避けられなくなるだろう。

だからこそ、富を生み出せるようになる政策が必要なのだが、民主党にはそこに至るロードマップが欠けていると思うが、皆さんは、どんな意見をお持ちだろうか。

忌憚なきご意見をお寄せいただければ幸いである。

K

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