2010年2月13日土曜日

雇用創出を真剣に考えるべし ~ 政治スキャンダルで騒いでいる場合ではない

Santa Monica1_S.jpg
(写真は失業者対策では全米でも有数というSanta Monicaの夕日。知人提供)


私が知る限り、最近のテレビをはじめとしたメディアが取り上げる話題と言ったら、小沢幹事長の資金管理団体を巡る「政治とカネ」の問題、普天間基地移設の問題、ハイチの震災の話題に、ほぼ集約されるのではないかと思う。

各々、重要なことであるのはわかるが、今、日本でもっと真剣に考えるべき課題があると思う。

それは雇用についてだ。

なぜ、これについて、政治家もメディアも、積極的に取り上げないのか、不思議である。

また、デフレについて問題視する声のなかには、低価格で商品を提供するファーストリテイリングのような企業を批判するという、お門違いの指摘すらある。

マクロ経済のセオリーでいれば、結局のところ、労働者の所得が上がるか、市中に回るお金の供給量が増やすか、政府が需要を作り出すかしないと、モノの値段は上がらない、つまり、デフレは脱却できない、ということになっている。

政府が需要を作り出すのは今の日本の「台所事情」では厳しい、金利は地を這うような状況なので日銀としては市中に回す手段が限られる(お金を刷るという方法を日銀がやりたがらないのは問題だと思うが・・・)、となると真正面から雇用対策に取り組む政策が必要なはずなのだ。


先月、今年度の補正予算が通過した。

「雇用、環境、景気」が予算編成の「3本柱」だそうだが、総予算7.2兆円のうち、雇用対策は6,140億円に過ぎず、全体の1割にも満たない。

3本柱の1本なら、3割くらい回しておいて欲しいが、所詮、その程度の重要性という認識の裏返しなのだろう。

労働者を支持母体とするはずの民主党(社民党も)が、なぜ、雇用の問題を真正面から受け止めて、限られた予算をつかいながらも、明確な対策を打たないのか、私は不思議である。

1次補正の予算減額やJALの例は典型だが、自民党との政策の違いを打ち出すことを意識しすぎるあまり、早期の景気回復の機会を失わせ、何万人という単位の職が失う事態を容認している。

昨年来からのお金にまつわる、鳩山首相、小沢幹事長のスキャンダルは、高い失業率となっている状況を鑑みれば、やや浮世離れの感さえある。


そんななか、日経新聞はアメリカ政府の雇用創出にむけた取り組みを特集した。

中間選挙を踏まえ、大手金融機関への規制と並び、国民の支持を得たいという政治的な意図を感じるが、大統領以下、政府・地方自治体が、雇用創出に真剣に取り組んでいる様子が伺える。

まずは、雇用状況の解説から。

・ 米国が08年以降に失った雇用は約840万人。特に痛手を受けたのが建設業と製造業で、2業種で失った雇用は約400万人と全体のほぼ半数。

そして、雇用の受け皿の取り組みを紹介している。

(環境)
<政府>
・ オバマ政権は10年間で500万人の「グリーン・ジョブ(環境関連雇用)」創出を表明。約800億ドルを環境企業への減税や融資にあてる。マサチューセッツ大学の試算では、1,000億ドルの投資で2年間に200万人の新規雇用を生み出せるという。

・ 米政府は、昨年11月に工事1件あたり最大1万2,000ドル(約108万円)の補助金を出すことを決めた。住宅の省エネ化は温暖化対策に加え、仕事のない建設業者を助ける一石二鳥の効果がある。

<民間部門>
・ マサチューセッツ州のベンチャー企業コナルカは、閉鎖したポラロイドのフィルム工場を再開発。従業員20人や生産機械を引き継ぎ、08年から太陽光で発電できるプラスチックを生産。

・ 電気自動車メーカーのフィスカーもGMの工場と従業員を引き継いだ。

(転職支援)
<政府>
・ オバマ政権は、景気対策費から120億ドル(約1兆500億円)を投じ、高校と4年制大学の中間に位置する2年制大学のコミュニティーカレッジの教育プログラムを充実させ、今後10年で500万人を卒業させる目標を掲げる。このコミュニティーカレッジでは、機械整備や看護師などの職業訓練が受けられる。米・労働省によると、2018年までに米国で生まれる新規雇用は約1,500万人のうち4分の1近くを病院職員や看護師、在宅医療サービスが占める。看護師の約半数はコミュニティーカレッジで資格を得るとされるが、カレッジを強化する政府の方針も将来の労働市場の変化をにらんでいる。

<地方自治体>
・ ニューヨーク市は昨年春、金融機関の退職者を集め、新興企業にあっせんする事業を始めた。ウォール街の大量リストラで職場を追われた若手トレーダーやアナリストをメディアやマーケティングの企業に10週間派遣。半数が正社員などの契約にこぎ着けた。

(企業への雇用支援)
<政府>
・ 大統領は、雇用を増やした中小企業に、従業員1人につき5,000ドル(約45万円)を税還付する案を超党派で合意にこぎつけようとしている。この雇用対策で、企業が払う社会保障税の一部も免除し、人を雇うコストを下げる。米経済政策研究所(EPI)は、税額の15%還付で最大280万人の雇用が生まれると試算。公共投資と違って、業種や規模に偏りなく効果が期待できる利点もある。
 

景気は浮上しつつあるものの、その恩恵は大手金融機関に限られ、失業率が減らず、事態はほとんど「Change」していないとも批判されるオバマ政権だが、打つべき手は打とうという姿勢が伺える。

特に、コミュニティーカレッジの支援は、中期の労働市場も睨んだうえでの対策と言え、極めて戦略的とも言えるだろう。

一方で、日本の民主党はどうか?

テレビなど影響力のあるメディアが、冒頭申し上げたような、スキャンダルしか報じないせいか、そもそも報じるような雇用対策が政府にないのか、今の政権ではほとんど動きが見えず、効果的な対策が練られている気配すら感じられない。

むしろ、宮城県、神奈川県、徳島県を筆頭に地方自治体のほうが、雇用対策に積極的という印象だ。

今のような政府の対応に危機感すら感じる今日この頃だが、皆さんはどのような感想を持たれるだろうか?

忌憚なき、ご意見をお寄せいただければ幸いである。

K


脱デフレの歴史分析

0 件のコメント: