2009年9月27日日曜日

政治的リーダーシップと国民の責任

先週、鳩山総理の動向が何かと注目された。

国連での二酸化炭素排出削減目標の提言と非核三原則堅持の明言、米・ロ・中といった各国首脳との会談など、なかなかの振る舞いだったと思う。

気の早いメディアや評論家からはそれらの実現性を問う声が聞かれたが、私は具体的な内容如何よりも日本が目指す方向性の一端が諸外国に向けて明示できたことが素晴らしいと思う。

そもそもそういった方向性がない限り、MovementやTrendは生まれない。

政府内で提示した方針達成に向けた裏付けが何もないとは思わないが、一方で、それらを実現するために何をどうすべきかの政策決定については、広く人々を巻き込み、一定のconsensusを持って、実行していくのだろうと予想する。

例えば、二酸化炭素削減目標に対して厳しい意見を寄せる産業界について、このところ、いわゆる「抵抗勢力」的な報じられ方をされているように感じるが、私は産業界の受け止め方を一元的に捉えるのはいかがかと思う。

ややストレートないい方だが、産業界は自社の利益に適うことには素直だから、声高に反対表明をする業界・会社がある一方で、待ってましたとばかりに今回の政府指針を好機ととらえ、積極的に取り組む企業も出ていくるだろう。

往々にして、これまで「大企業」と捉えられてきた企業が守旧派に回るであろうことは、経団連会長を務める御手洗氏の発言からもうかがい知れるが、例えば、御手洗氏の会社のような製造業にしても、このイニシアティブをチャンスと捉える企業もあるだろう。

風力発電、原子力発電、スマートグリッド、電気自動車などなど、今回のイニシアティブに関わりそうな分野に、日本のなかで少なくと1、2社くらい思いつく会社があるはずだ。

ややもすると発言が厳しくなりがちな産業界ですらそうだから、日本のリーダーたる鳩山首相が提示する指針の実現に向けて、政界・官界・実業界に渡って、新しいWork Groupが形成されていく期待を持てる。

今度の総理交代によって、政府の方向転換が顕在化した具体例として、国土交通省管轄下の事業がある。

八ツ場ダムや日本航空再建問題がその典型だが、これら課題への対応も矢継ぎ早で、ニュースを見ているほうがスリリングな印象さえもってしまうほどだ。

そのひとつである八ツ場ダムについては、そこに住む住民だけの問題と捉えるべきではないだろう。

今は緊縮予算のなかで、福祉・社会保障分野では実現すべき課題も多いから、ある均衡のなかで予算をやりくりしなければならない。

そういった観点から、今回の八ツ場ダム建設中止で削減された税金が、例えば、子供手当に充当されるとしたら、皆さん、どう思うだろうか?

それでも八ツ場ダム建設続行に反対? 賛成??

地域住民の方には大変申し訳なく思うが、情緒に流されず、日本全体の最適化のために下す決断が、政治的判断ではないだろうか。

日本航空問題にしてもそう。

これまでの政官癒着や労使問題の影響もあり、何度再建計画を打ち立てても立ち上がらず、しまいには、デルタやアメリカン航空との交渉を行いながら公的支援を仰ぐ状況まで追い込まれた。

それに対する前原大臣の対処は明確で、早速、旧産業再生機構OBを集めた、特別チーム「JAL再生タスクフォース」を設置して対応に当たることにした。

これまでのしがらみに拘束されたら、できない対応であるし、だからこそ、文字通り政治的決断が必要とされる根の深い課題なのだろう。

しかも、国民の血税を無駄にしない、という政治的意思の表れと捉えれば、もろ手を挙げて国交省の対応を支援すべきではないだろうか。

一説によれば、今回のタスクフォース結成は、アメリカのGM再建をモデルにしていると言われているが、類似した対応を行うとして現在のGMの状況から想像するに悪くないアプローチといえるのではないか。

今朝のサンデープロジェクトでの前原大臣のインタビューの内容は、冷静かつ論理的である一方で、八ツ場ダムについては住民への配慮を見せるなど、これまでの自民党議員には感じられなかった、ある種の清々しさを感じさせた。


これら一連の動きから、政治的リーダーシップとはこういうことなんだろうと思う。

その時々の優先課題に対して、国全体の利益のために、取り組むべき方向性を明確にして、それに必要なリソースを投入する。

だから、実現性の可否を問う前に、我々、一人ひとりの国民にとって、何が利益だと判断し、その政策に支援するのか、しないのかの立場を明確にすることのほうが大事なのだろうと思う。

それが、8月の衆議院選の結果に対する国民の責任だと考えるが、いかがだろうか。


それにしても、鳩山政権の滑り出しを見る限り、変化を予感させるに十分なものがある。

K

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