2009年10月4日日曜日

会社の「年齢」とこれからの産業トレンド

未だ暑さを感じるものの、朝や晩は涼しくなり、季節の変わり目を感じる。

なお、昨日は中秋の名月とのことで、非常に綺麗な月が見られる夜だった。

そんななか、最近、週末は恒例になってきているJazzの鑑賞も、一風変わったところがいいと思い、昔の外国人邸宅の洋館で行われたコンサートに行ってきた。

その名も「酒と薔薇の日々 第一夜」。

会場となったベーリック・ホール(The Berrick Hall)という洋館は、以前のイギリス人貿易商 B.R.べリックの邸宅として建設されたもので、現在、横浜市認定歴史的建造物になっており、普段は、一般にも公開されている。

そのリビング・ルームでコンサートが開かれたのだが、まず、入口となっている門扉からの眺める、ライトアップされた建物自体が幻想的で、入った瞬間に日常を抜け出すような感覚になった。



また、そんな素敵な場所で奏でるJazzの演奏もたまらなく魅力的で、スタンダード曲に加え、「天城越え」、「青葉城恋歌」のJazzのアレンジ・バージョンや「月夜野」といったオリジナル曲まで、大変、素晴らしい演奏だった。

MNGというグループの演奏だったが、なんでも先月中旬で行った仙台のライブも、大変好評だったそうだが、それも十分うなずけるものだった。



また、途中の休憩時間でもてなされた軽食やワインもスタッフの方々の気遣いが感じられた。

素敵な講演だったので、次回の24日に行われる、「第2夜」も参加してみたいと思う。

お近くにお住まいの方がいらっしゃったら、参加されることをお勧めする。


さて、本題。

先週、日本とアメリカでの失業率が発表された。

日本の8月の失業率が5.5%、アメリカの9月の失業率は9.8%と、雇用環境の悪化を改めて感じさせるものだった。

一方、政府と各省庁の間では、今年度の補正予算の編成について調整が行われているが、各省庁間での予算削減のテーマは無駄な公共事業の削減であるため、今後、少なくとも半年間は、政府投資による企業業績への貢献は限定されたものになるだろう。

だから、企業は将来の業績不安から採用を手控え、深刻な場合は、社員をさらに解雇する可能性すらあり、そのため、賃金は上がらず、結果として、消費は上向かず、モノの値段も上がらない、という完全なデフレ状況に突入していると言える。

だが、こんななか、業績を上向かせている会社がある。

その代表例が「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングだ。

昨日の日経新聞によれば、9月の既存店の売上高は前年同月比31.6%とのことで、伊勢丹や松坂屋といった、マイナス成長だった百貨店業界を大きく引き離している。

さらに驚かされるのは、売上アップや来店客数のアップもさることながら、客単価が7.8%伸びているということだ。

低価格の衣料品を取り扱う業態であることを考えると、なおさらその凄さが際立つ。

そんなユニクロは、今月のパリの基幹店のオープンに加え、都心でも大型店を次々に出店する計画を発表している。

これら一連の業績好転は、今の世の中の景気の影響が後押ししているのは間違いないだろう。

昨年まで、百貨店で買い物をしていたが、今年はユニクロで、という方もいらっしゃるのではないか。
(現に私もその一人??)

実際に失業された方や、働いていらっしゃる方でも将来の失業不安や、給与ダウンという現実に直面すると、嫌が応にも財布のヒモは堅くなる。

そんな荒んだ消費マインドをやさしく微笑んで迎えてくれているのが、こういう企業なのだろう。


それでは、こういった企業の成長は一過性のものなのだろうか。

もちろん、確実なことはいえないが、私は、ファーストリテイリングのような企業は長期的成長トレンドを描きつつあると考えている。

先週、日経ヴェリタスという金融専門誌が「診断『会社の年齢』」という特集をおこなっていた。

これは企業の売上成長率や企業の収益率、株価などを使って算出した指標を、人間の年齢に置き換えたもので、ファーストリテイリングのようなSPA(製造小売り)業態が押し並べて、20代後半30代前半と診断されたのを見て、妙に納得してしまった。
(ちなみにファーストリテイリングは27.9才!)

ヤフーやカカクコムのようなネット企業は20代前半、自動車が40歳前後、電機が40代半ばから50代といったように、まさしく日本の産業の実態を端的に表しているようだ。

身近に接する各社の状況などを想像すると、なんとなく理解できる気がするのではないだろうか。

異なる側面から眺めると、さらに理解を深められる。

今、再建問題で揺れている日本航空や、海の向こうで一足先に再建に目星をつけたGMなどは、業績不振のみが再建の重石になったわけではない。

それらの会社は、いわゆる先輩社員達の年金などが負債として重くのしかかっていたのだ。

一方、「20代」企業は会社年齢も若いが、スタッフも若い。

年金などを心配するのはまだまだ先のことなので、そういった面からも事業リスクが少ない。

事業の歴史が浅いという決定的な理由もあるが、結局、企業が継続して成長するには、ある一定の新入社員の採用枠は維持して、常にスタッフの循環を行うことが必要という証左ともいえる。

単純に平均年齢を若く保つというためだけでなく、「新鮮な」事業を維持するという意味でも重要なのだろう。

こういったことが一過性にならず、「トレンドを作る」という見方につながっているのだが、日本では、静かに、でも、確実に産業転換が行われているのではないだろうか。


成長ばかりがいいことではないだろうが、若い世代が力を存分に発揮できるような、活力ある社会にはなって欲しいと想いに耽る、中秋の名月であった。

K

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