2009年9月1日火曜日

今回の選挙結果に想うこと~富の再分配システムへのニーズ

先の衆院議員選挙は、大方の予想通り、民主党の地滑り的な大勝利に終わった。

4年前の自民党の大勝と全く逆の展開となり、オセロ・ゲームの白黒の駒がまるまるひっくり返ったような印象だ。

この民主党の大勝について、いろんな方がいろんなコメントをしているが、私は、ここ何年かの「小さな政府・タカ派」から「大きな政府・ハト派」へと大きな方向修正が図られた、と見るのが妥当であろうと考えている。

池田勇人、佐藤栄作、田中角栄らが確立した自民党の保守本流は典型的な「大きな政府・ハト派」であり、その流れを汲む民主党・小沢氏がこの路線を引き継ぐ一方、小泉前総理の構造改革路線を修正しきれない自民党は「小さな政府・タカ派」政党と受け取られて、国民にそっぽを向かれたということではないか。

小泉政権は、派閥政治の解消を通じ、自民党が良くも悪くも時間を掛けて築いてきた「富の再分配」を破壊してしまった。

前回の衆議院選挙はそれが有権者に好意的に受け止められたため、大勝したのだが、今回は昨年からの金融危機も手伝い、「富の再分配」システムがなくなることを国民はリスクと受け止めた。

そのために、派閥の領袖や閣僚経験者であるほど、有権者の受けは悪く、結果的に落選の憂き目にあうこととなった。

そして、以前だったら、完全な保守基盤(=自民党基盤)である都道府県は、ことごとく民主党に議席を奪われた。


少しつっこんで考えたい。

2000年になった頃、これまでの再分配システムが受益者よりも供給者が優先されて既得権益の温床となったことで、機能不全のシステムを解体すべく、構造改革・規制緩和といったマーケット・オリエンテッドな手法が支持され(=「新自由主義」と呼ばれる)、小泉政権を誕生させるきっかけになった。

ところが、そのパフォーマンスが低下していたとはいえ、多少なりとも機能していた再分配システムは、構造改革の旗印の下、その機能を完全に失ってしまう。

雇用面では、国内の雇用維持と労働者への柔軟な労働環境を提供することを名目として、製造業の派遣労働が解禁となった。

また、「ハコモノ」行政による、地方の建設業界への予算還流もなくなるとともに、「三位一体」の地方制度改革の下での地方交付金も事実上、削減される。

郵政民営化にしても業務拡大よりも業務効率化が目的だから、再分配機能は働きづらい。


民主党のマニュフェストからは、多少の不公平感も感じなくもないが、手段を変えて、国民一人ひとりに、直接、富が分配されるシステムを確立しようとしている。

再分配を渇望する国民には、魅力的な内容と映っているはずだ。

民主党政権は、様々な予算の無駄を排除するのはもちろん、場合によっては、国債も発行して、次の参議院選挙くらいまで、とにかく「バラマキ」を実施するだろう。

それによって、来年の参議院選挙の単独過半数獲得を狙うはず。

もし、参議院まで民主党に単独過半数を握られれば、自民党は党としての存在意義を失うかもしれない。

そうなれば、2大政党制なる大義名分は機能しなくなるが、そうなったらなったで政界再編などによって政治の世界は体裁を保つと思うのでそこはシリアスな問題にならないかもしれないが、問題は我々の生活のほうである。

再三、ここで述べているが、私は少子化対策よりも世代間雇用格差のほうがより喫緊の課題だと認識しているが、その課題にどう切り込むか、また、既に海外では議論されている、景気刺激策の「出口戦略」をどう取り組むか、そして、一連の対策により、膨らむ国の借金にどう取り組むのか、中期的な対処策が求められるに違いない。

繰り返すが、今回の圧勝により、民主党はこの1年くらいは、彼らのマニュフェストの実現に傾注し、本格的な「バラマキ」政治を実行するだろう。

以前のBlogでも述べたが、しばらく雇用環境は良くならないだろうから、その「バラマキ」政策が厳しい環境にうまくミートすれば、国民からは絶大な信頼を獲得するに違いない。

でも、問題は1年後に民主党がどういう施策に取り組むか、具体的には平成23年予算(平成22年補正予算も?)をどう編成するかでその手腕が問われることになるだろう。

諸外国、特にアジアとの関係強化を図りながら、国内で、環境、農業、エネルギー、社会的起業など、自立回復を果たす、国家戦略を確立できれば、その基盤はゆるぎないものになるに違いない。


K

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