2009年8月2日日曜日

株価浮上の裏側にあるものは?

このところ、株価が上昇してきている。

本日の日経新聞によれば、2009年4~6月期決算を集計したところ、世界的な不況で1~3月期に赤字に陥った全産業の連結経常損益は黒字に転換したという。

自動車や電機を中心に合理化が進展、企業業績は1~3月期を底に最悪期を脱したとの見方も出てきたと報じている。

その記事では、主要データとして、以下のように紹介している。

・4~6月期の全産業の連結経常損益は9,783円の黒字

・主因は製造業の合理化効果。輸出企業は工場再編や人員整理に踏み切り、製造業の赤字は2,552億円と1~3月期の約9分の1に縮小。

それを踏まえ、ドイツ証券の神山直樹チーフエクイティストラテジストの、

「経済危機が日本企業の収益を直撃した原因は低い利益率。03年以降の構造調整をしのぐ再編や、生産性向上を通じた体質改善を続ける必要がある」

コメントを紹介している。

およそ金融機関のアナリスト・コメントとしては、平均的なコメントと見るが、それほど、簡単な問題だろうか?

それを考える上で、先週発表された、完全失業率と物価指数の推移に注目してみよう。

以下、その主要項目。

(失業率)
・6月 完全失業率(季節調整値): 5.4%/完全失業者数: 348万人
-2003年4月に記録した過去最悪の5.5%に迫る
-就業者数は前年同月比151万人減と過去最大の落ち込み(6,300万人)
-製造業や建設業で落ち込みが激しい
-生産活動の縮小などに伴う「勤め先都合」の失業者が121万人と最も多く、定年や自己都合を上回った。

・6月の有効求人倍率(季節調整値): 0.43倍(2カ月連続で過去最低を更新)

(物価指数)
・消費者物価指数: 前年同月比1.7%低下
-消費者物価が大きく落ち込んだ最大の要因はガソリン価格の減少が大きいが、石油製品や電気代などの特殊要因を除いた内閣府試算の総合指数(コアコアCPI)は6月に0.4%低下し、2カ月連続のマイナスに

やはりというか、失業率の悪化と緩やかなデフレの進行が確認される結果となった。

そこで、企業業績の回復の指標として株価をとり、今年に入ってからの各々のデータと比較したグラフを作ってみた。



まず、日経平均株価と失業率のグラフだが、完全にその足並みがそろっていることがわかるだろう。やや専門的になるが、両者の相関関数は+0.89でポジティブな相関がみられる。

言い換えると、リストラの進行が企業の業績を押し上げるという構図だ。

これを物価指数との関係でみると、下記のようになる。



失業による所得減少の影響が、モロに効いていると解釈できる。

しかも5月以降の消費者物価指数の下がり具合はかなり極端だ。

通常、消費者物価指数の先行指数として、企業物価指数が用いられるが、それと比較するとこうなる。



ここから読み取れるのは、さらなる物価下落の兆候が見られるということ。

単純には比較できないと思うが、企業物価の1月時点を消費者物価の4月と重ね合わせて単純計算すると、消費者物価は7月以降の約半年感で3%前後下がってもおかしくないようにみえる。

以上から見えてくるのは、人員削減を通じた企業の業績回復とおよび本格的なデフレ時代への逆行である。

さらに、下記のグラフを加えて考察すると・・・



株価と企業物価の完全な逆行状態が見て取れる。

先週の日経ヴェリタスを見るに、この現象は中国でも見られ、上海総合指数と卸売物価が完全に逆相関となっていた。

ヴェリタスの記事では、この中国の状況について、原油価格の下落要因以外に、投資急増による過大設備による需給ギャップが原因とみて、今後の実体経済への不安要因を指摘していたが、日本も同じ状況にあるといえないか。

まとめると、4-6月期の企業業績の回復においては、様々な要因のうちのひとつが人員削減であり、その効果は自動車・電機など製造業において顕著。

ただし、以前、物価は下がり続けているため、設備の過剰感は拭えず、このため、単純に企業業績が上向くとは予想しづらい要因となっている。
(日本株への投資は要注意か?)

言い換えると、やはり、いままでの産業の枠組みで景気回復は難しいということか。。。

やはり、新しい経済の「エンジン」を考えねばならない。

K

0 件のコメント: