今週末より、バリ島に「ヨガ修行」に出掛けるため、このBlogが今年最後のアップになりそうだ。
今年最後のBlogということで、2009年を振り返ってみたいと思う。
今年は、一言でいえば、「変化/Change」の年だった。
思い起こせば、海の向こうでは黒人初の大統領が誕生し、日本でも夏の衆議院選を経て、鳩山政権が生まれ、日米ともにそれまでの保守系政党から政権が交代した。
また、経済では、昨年末からの金融危機の影響もし、両国を代表する企業である、GMやJALといった企業が経営危機に陥り、政府支援を受けて再生スキームに取り組むという、以前では考えられない状況となった。
一方で、新旧交代が進み、デフレ経済を利用し、ユニクロブランドを引っ提げて、ファーストリテイリングが快進撃を続け、その影響は日経平均株価にも及ぶに至った。
こういった社会全般の状況と並行し、私の周囲も様々な変化があった。
こちらのブログでも紹介したが、春に引越しをした。
今回の引越しで、野球観戦、Jazz鑑賞、そして、ヨガなど週末の楽しみも増えた。
そういった周囲の環境変化と並行して、私の気持ちも大きく変化した。
年明け早々は、希望が持てず、目標らしいものを失っていたといえるだろう。
資本主義という仕組みへ信頼が持てなくなり、それが仕事や投資、そして、社会の考え方に影響を与えるなかで、Obama政権の誕生に刺激され、また、Harvard Kennedy Schoolに関する書籍に出会い、公共政策学という領域に関心を持った。
もう一度、大学院生活に戻ろうと、海外の学校への入学を目指し、半年近く時間を費やしただろうか。
ただ、そのうち、自分のなかで疑問を感じてきた。
大学院で勉強して、結局、どうする?
2年間、勉学に勤しんでも、結局は、公的機関、NGO、NPO、企業のいずれかに所属するか、または、自ら会社を起こすかして社会に戻る、という当たり前のことを思い返し、同じ時間とお金を使うなら、実際、普段の生活のなかで実践できることをやったほうが現実的ではないかという考えに至った。
そして、身近なことから始めてみようと思い、ここ2~3か月は、何かできることはないかといろいろと模索してきた。
急激な失業率の上昇もあり、雇用対策や住居支援などに関心を持ったこともあった。
でも、もっと社会的に弱い立場の人を助ける必要はないのかと思うようになり、子供好きなのもあって、子供達に何か役に立つことをしようと思い立った。
最近になってあるアクションを始めたのだが、この話は、また、別の機会にお話ししようと思う。
また、以前にも紹介したが、「坂の上の雲」がドラマ化された。
7年近く待ちわびた作品で、原作にいろんな思い出が詰まっているだけに、初回の放送では、始って30分くらいは、涙が止まらなかった。。。
決して、楽しいことばかりではなかったが、後から振り返って、あの年から変わったんだよね、と言える年になるような気がする。
拙い私のBlogであるが、最後まで、読んでくれた方に感謝!
ちょっと早いですが、皆様、良いお年をお迎えください。
K
2009年12月20日日曜日
2009年12月12日土曜日
アメリカの新しい経済トレンドに見る政治的意図と日本の課題 ~日本の「New Normal」はどうあるべきか?
秋くらいから、アメリカの経済指標と株価の推移を見ながら、やや違和感を感じていた。
10%を越える失業率など経済指標は軟調に推移する一方で、株価は堅調に上昇している。
また、為替レートも大量の通貨供給の影響などもあって、円に対してドル安が続いているが、先月末の円高を期にようやく動き出した日本政府や日銀を尻目に、アメリカ政府は至って静観しているように見える。
90年代の半ばからアメリカは「強いドルは国益」として海外からお金を集め、そのお金を使って海外に投資するなどして経済を回してきた。
国全体が、預金口座のお金でビジネスを行う、銀行のようなことをやっていたのだが、その流れが変わりつつあることを実感する。
どうもゲームのルールが変わったようだ。
「New Normal」という表現で、金融危機後の新しい経済状況を表現したのは、米国の債券運用会社PIMCOの最高経営責任者であるMohamed El-Erian氏だ。
経済は元には戻らない、という基本的な見解の下、金融業界への規制が進んで借金をして投資を行うレバレッジが規制対象となり、新興国が高成長を享受するなか、先進国は低成長に甘んじる、といったことを指摘している。
金融業界への規制により、金融経済から実体経済への回帰も示唆した内容で、ちょうど、日本時間の今朝ほど、金融規制改革法案が議会を通過した。
また、RPテック代表 倉津康行氏は、11月29日の日経ヴェリタスにて、アメリカの代表的な企業が「アメリカでリストラし、海外で収益を伸ばす」構造へと変化している点を指摘、これに加え、当局は、春の大手銀行に対するストレステストの結果、危機に瀕した銀行はない、と公表したり、会計制度の修正して証券化商品などの評価損を凍結させるなどして、金融問題の封じ込めを成功させた、としている。
そして、11月25日付NewsWeekは、「株価が国内経済の見通しを反映するという考え方自体が時代遅れになった可能性もある」とし、アメリカの大手企業が海外での事業を拡大させていることや、海外で作って、海外で売っている状況を説明している。
低金利や過剰に流動性のある金融環境の下、レバレッジによる破壊的な経済リスクをコントロールしようという試みが、いままでなかったのが不思議なくらいで、額に汗してまじめに働く人たちが不意に職を失ったり、財産を手放さざるをえなくなったりする事態は避けるべきであろう。
ただ、急回復を望む市場のプレッシャーにより、企業は収益向上に躍起となる一方で、新興国のビジネスが急速に立ち上がったために、業績が上がっても、アメリカ国内で雇用が増えない、空洞化現象が顕在化しつつあるのは問題だ。
アメリカの買収ファンド大手のKKR(Kohlberg Kravis & Roberts)のHenry Kravis氏は、一部投資先の経営者から「景気が回復しても増員しなくていい」という声を聞くという。景気悪化でやむなく人員を削減したが、経営に支障はなく、過大な従業員を抱えていたことがわかったというのだ。
いずれにしても、企業経営者にとっては明るい材料がないわけではないが、従業員にとって苦しい環境が続く、という見通しに変わりはない。
また、資金を集めるのに好循環をもたらしたドル高政策も、実体経済への回帰によって、海外での収益をドル安にすることで売上・利益を上積みするドル安政策に変わろうとしている、ということだろう。
これを裏付ける兆候は、10日にアメリカ・商務省が発表した、10月の貿易赤字額(329億3,600万ドルのマイナス)に表れており、前月比で赤字額が減少したのは6か月連続で、金額ベースでは、既に金融危機直後の2008年11月以来の高い水準に戻っているという。
これらの状況をひとつひとつ眺めると、冒頭の「違和感」といった現象は、決して説明がつかないことではないことがわかる。
言い換えると、中身のいい悪いは別にして、政府・中央銀行・経済界が連携して、経済を浮上させるべく動かそうという意思が確認できるのだ。
さて、これに比して、日本はどうか?
残念ながら、日本の動きは遅く、インパクトに欠け、首相の「友愛」精神とは裏腹に、政府・与党・日銀・経済界の足並みが揃っているようには見えない。
先月末に、唐突に発表された政府の「デフレ発言」も、私が このBlogで夏前にはデフレの長期化を指摘できたくらいだから、日銀や政府がわかっていなかったはずがない。
にもかかわらず、先月の急激な円高や「Dubai Shock」が勃発するまで、対応する政策を打ち出さず、先週になって、日銀が事実上の金融緩和策を発表するも、アナリストからは「規模が小さい」と指摘される始末。
補正予算についても、一次補正については、事業の執行スピードを犠牲に、「無駄をなくす」という前政権との違いをアピールすることを優先させた一方で、浮かせた予算を二次補正の財源にして規模も上積みさせようとしている。
無駄をなくすことには賛成だが、テレビの討論ショウのような「事業仕分け」にしても、結局、3兆円削減の目標に対して7,000億円程度の削減しか踏み込めず、予算の決定プロセスを「透明化」させる以上の意義を見出せなった。
個人的には、補正予算は前政権の内容を受け入れて、内容よりもスピードを重視し、景気浮揚、特に雇用への対策を即効あるものとし、むしろ、来年度予算の規模と内容を集中審議して、新政権のカラーを打ち出したほうが良かったと思う。
アメリカのFRBと政府、特に財務省との蜜月ぶりを見るにつけ、その中身は賛否あるにせよ、もっと、日本政府は日銀と連携して、財政と連携させた金融政策を打ち出すべきだ。
メディアで言われるマクロ政策の欠如や、国の基本戦略が見えないといった指摘は、以上のようなことが顕在化したことで、浮き彫りになるのだろう。
例えば、「日本列島改造論」といったわかりやすいキーワードで語れるほど、今の日本の課題はシンプルではないのかもしれないが、ちょうど、今、Copenhagenで暑い議論が繰り広げられている環境問題や少子化問題は、広く共感を得られやすいテーマだと思われる。
であるならば、「環境と人に優しい社会づくり」といったテーマを掲げ、政策や予算の優先順位付けを行うべきだと思うが、いかがであろうか?
日本の「New Normal」を形作るべく、さらなる政治のリーダーシップを期待したいものである。
K

債券王ビル・グロース常勝の投資哲学
10%を越える失業率など経済指標は軟調に推移する一方で、株価は堅調に上昇している。
また、為替レートも大量の通貨供給の影響などもあって、円に対してドル安が続いているが、先月末の円高を期にようやく動き出した日本政府や日銀を尻目に、アメリカ政府は至って静観しているように見える。
90年代の半ばからアメリカは「強いドルは国益」として海外からお金を集め、そのお金を使って海外に投資するなどして経済を回してきた。
国全体が、預金口座のお金でビジネスを行う、銀行のようなことをやっていたのだが、その流れが変わりつつあることを実感する。
どうもゲームのルールが変わったようだ。
「New Normal」という表現で、金融危機後の新しい経済状況を表現したのは、米国の債券運用会社PIMCOの最高経営責任者であるMohamed El-Erian氏だ。
経済は元には戻らない、という基本的な見解の下、金融業界への規制が進んで借金をして投資を行うレバレッジが規制対象となり、新興国が高成長を享受するなか、先進国は低成長に甘んじる、といったことを指摘している。
金融業界への規制により、金融経済から実体経済への回帰も示唆した内容で、ちょうど、日本時間の今朝ほど、金融規制改革法案が議会を通過した。
また、RPテック代表 倉津康行氏は、11月29日の日経ヴェリタスにて、アメリカの代表的な企業が「アメリカでリストラし、海外で収益を伸ばす」構造へと変化している点を指摘、これに加え、当局は、春の大手銀行に対するストレステストの結果、危機に瀕した銀行はない、と公表したり、会計制度の修正して証券化商品などの評価損を凍結させるなどして、金融問題の封じ込めを成功させた、としている。
そして、11月25日付NewsWeekは、「株価が国内経済の見通しを反映するという考え方自体が時代遅れになった可能性もある」とし、アメリカの大手企業が海外での事業を拡大させていることや、海外で作って、海外で売っている状況を説明している。
低金利や過剰に流動性のある金融環境の下、レバレッジによる破壊的な経済リスクをコントロールしようという試みが、いままでなかったのが不思議なくらいで、額に汗してまじめに働く人たちが不意に職を失ったり、財産を手放さざるをえなくなったりする事態は避けるべきであろう。
ただ、急回復を望む市場のプレッシャーにより、企業は収益向上に躍起となる一方で、新興国のビジネスが急速に立ち上がったために、業績が上がっても、アメリカ国内で雇用が増えない、空洞化現象が顕在化しつつあるのは問題だ。
アメリカの買収ファンド大手のKKR(Kohlberg Kravis & Roberts)のHenry Kravis氏は、一部投資先の経営者から「景気が回復しても増員しなくていい」という声を聞くという。景気悪化でやむなく人員を削減したが、経営に支障はなく、過大な従業員を抱えていたことがわかったというのだ。
いずれにしても、企業経営者にとっては明るい材料がないわけではないが、従業員にとって苦しい環境が続く、という見通しに変わりはない。
また、資金を集めるのに好循環をもたらしたドル高政策も、実体経済への回帰によって、海外での収益をドル安にすることで売上・利益を上積みするドル安政策に変わろうとしている、ということだろう。
これを裏付ける兆候は、10日にアメリカ・商務省が発表した、10月の貿易赤字額(329億3,600万ドルのマイナス)に表れており、前月比で赤字額が減少したのは6か月連続で、金額ベースでは、既に金融危機直後の2008年11月以来の高い水準に戻っているという。
これらの状況をひとつひとつ眺めると、冒頭の「違和感」といった現象は、決して説明がつかないことではないことがわかる。
言い換えると、中身のいい悪いは別にして、政府・中央銀行・経済界が連携して、経済を浮上させるべく動かそうという意思が確認できるのだ。
さて、これに比して、日本はどうか?
残念ながら、日本の動きは遅く、インパクトに欠け、首相の「友愛」精神とは裏腹に、政府・与党・日銀・経済界の足並みが揃っているようには見えない。
先月末に、唐突に発表された政府の「デフレ発言」も、私が このBlogで夏前にはデフレの長期化を指摘できたくらいだから、日銀や政府がわかっていなかったはずがない。
にもかかわらず、先月の急激な円高や「Dubai Shock」が勃発するまで、対応する政策を打ち出さず、先週になって、日銀が事実上の金融緩和策を発表するも、アナリストからは「規模が小さい」と指摘される始末。
補正予算についても、一次補正については、事業の執行スピードを犠牲に、「無駄をなくす」という前政権との違いをアピールすることを優先させた一方で、浮かせた予算を二次補正の財源にして規模も上積みさせようとしている。
無駄をなくすことには賛成だが、テレビの討論ショウのような「事業仕分け」にしても、結局、3兆円削減の目標に対して7,000億円程度の削減しか踏み込めず、予算の決定プロセスを「透明化」させる以上の意義を見出せなった。
個人的には、補正予算は前政権の内容を受け入れて、内容よりもスピードを重視し、景気浮揚、特に雇用への対策を即効あるものとし、むしろ、来年度予算の規模と内容を集中審議して、新政権のカラーを打ち出したほうが良かったと思う。
アメリカのFRBと政府、特に財務省との蜜月ぶりを見るにつけ、その中身は賛否あるにせよ、もっと、日本政府は日銀と連携して、財政と連携させた金融政策を打ち出すべきだ。
メディアで言われるマクロ政策の欠如や、国の基本戦略が見えないといった指摘は、以上のようなことが顕在化したことで、浮き彫りになるのだろう。
例えば、「日本列島改造論」といったわかりやすいキーワードで語れるほど、今の日本の課題はシンプルではないのかもしれないが、ちょうど、今、Copenhagenで暑い議論が繰り広げられている環境問題や少子化問題は、広く共感を得られやすいテーマだと思われる。
であるならば、「環境と人に優しい社会づくり」といったテーマを掲げ、政策や予算の優先順位付けを行うべきだと思うが、いかがであろうか?
日本の「New Normal」を形作るべく、さらなる政治のリーダーシップを期待したいものである。
K
債券王ビル・グロース常勝の投資哲学
2009年12月5日土曜日
JAL再建に見る日本の課題~レガシーコストにどう立ち向かうか?(4)
しばらくインターバルが空いたが、再び、この話題に戻って締め括りたい。
前回のブログでは、JAL再建に向けて、下記のモデルを用い、海外におけるLow-Cost Carrier(LCC)などの事例を用いながら、πの最大化に向けた意見をまとめた。
π=p・q-k
π: 利益
p: 価格/単価
q: 数量
k: コスト
航空業界に携われている方から見れば突飛な意見ばかりかと思うが、裏を返せば、そのくらい飛躍的なことをしないと、重くのしかかる年金という、レガシーコストはおろか、日々の運営すらもままならない、ということだと認識している。
どう解決するかは関係者の対応次第であるが、仮に公的資金活用が決まった暁には、いたずらに税金がJALという一企業の資金繰りや企業年金の原資にならないよう、願うばかりである。
さて、今回は、日本の公的年金について、このモデルを用いて考えてみたい。
まず、前提として、年金がどんな収入と支出があり、また、これまでの累積として、どの程度、ストックがあるのかを調べなければならなかったのだが、これがなかなか容易ではなかった。。。
この仕組みをどうやって数十年も維持するのか、現在、年金原資を支払う保険者として、そして、将来は、それを受け取る受給者として、不安を感じなくはない。
ただ、不安ばかりを感じていては、前に進まないので、まず、その仕組みからみていこう。
まず、かなり基本的な仕組みであるが、日本の年金制度は、現役世代の保険料負担で高齢者世代の年金給付に必要な費用を賄う、「世代間扶養」で運営されていることを確認しておきたい。
いい方を変えると、現役時代、こつこつと保険料を払っても、将来、自分が受給者になったときに、その原資を払ってくれる現役世代の保険者がいなければ、成り立たない仕組みである。
この点が、少子高齢化が急速に進行している日本で、年金制度の不安を煽る要因となっているわけだ。
テレビでよく見かける、何人の保険者で何人の受給者を賄うというような紹介をされると、日本は少子高齢化社会を迎えるので、年を経れば経るほど、保険料を支払う保険者の人数が少なくなっていく。
最も直近の厚生省のデータによれば、国民年金も厚生年金も、現在、だいたい2.6人に1人を養うようになっているらしい。
次に、収入、支出、そして積立金について。
(収入の構成)
1. 保険料収入(現役世代が支払うもの)
2. 国庫負担(国が「金庫」から負担する分)
3. 財産収入(専門の独立法人が年金運用から生みだした収入)
(支出の構成)
4. 給付金(年金受給者が受け取るもの)
5. 基礎年金拠出金(国民年金に使われるお金で、主に厚生年金と共済年金から支払われる)
この収入と支出の差額が、毎年、年金の積立金となって貯まっていく。
だから、冒頭のモデルを当てはめると、以下のようになると想定できると思う。
π= 年金の積立金
p・q= 保険料収入(=保険を支払う人 X 保険料)+国庫負担+財産収入
k= 給付金+基礎年金拠出金
年金原資が多ければ、年金支給もより安定すると解釈できるので、この設定で無理はないだろう。
今回、年金積立額の残高を調べてみたが、今年2月に試算された財政見通しでは、今年度末の積立金は144.4兆円、2050年度には544兆円を越えると書いてあり、やれやれ安心と胸をなで下したのも束の間。。。
これは、あくまで現行制度下の話で、5月に発表された厚生省の発表では、仮に給付財源について、あらかじめ蓄える「積み立て方式」に当てはめると、財源不足は現時点で500兆円になるという。
何がどうなるとそこまで差が出るのか、甚だ疑問であるが、いずれにしても、この144兆円を鵜呑みにするのも危険である。
ついでなので、厚労省が打ち出す、2050年度に500兆円を越える試算もこのモデルを用いて説明できそうだ。
まず、収入サイドについてであるが、基礎年金給付額に対する国庫負担金の割合を今年度から1/3から1/2に引き上げ(実施済み/p・q増)、保険料を現行の15.35%から2020年度には18.3%まで増やし(p増)、このデフレまっただ中な状況で、賃金上昇率を2.5%と仮定し、運用利回りの設定も4.1%へと引き上げている(p・q増)。
(ちなみにJALの年金運用利回りは、4.5%から1.5%に引き下げるべく交渉しようとしている)
一方で、支出サイドだが、経済成長率も出生率も中レベルとして、平均的な所得レベルから置き換えた比率を、2038年度以降、50.1%を保つとしているが、今年度の62.3%から10%以上削減する見込みを立てている(k減)。
また、一方で、年金の安定収入確保のために、消費税率を上げるという議論が上がったりしている。
この試算とて何もかも反対なわけではないが、すべてが「仮定通りになれば」という但し付きになるし、また、どれもこれも、中身のない財布からお金をむしり取ろうとしているようにしか見えないが、これ以外にどんな対策が打てるか?
先のモデルを用いて考えた時、これらの試算や意見で漏れていることがある。
国庫負担金、保険料、運用利回、消費税などの目的税は、いずれもpの要素に偏りすぎているように思えるのだが、qを増やす、つまり、保険料を払ってくれる人を増やす、という視点が欠けているように思えるのだ。
そういうと、必ずといっていいほど、出生率の話につながるが、子供が保険料を払うまで年数が掛かりすぎる。
そうではなく、今すぐにでも保険料を払ってくれる人、すなわち、日本に居住してくれる外国人を増やせばいいと思う。
調べてみると、日本の年金制度に国籍は関係なく、「日本国内に住所を有している」と、年金についての権利・義務が発生するそうである。
だから、外国人にとっては、保険料の支払い義務が発生する一方で、受給の権利ももらえるため、老齢年金であれば日本人と同じく25年以上の受給資格期間を満たせば年金が支給されるとのこと。
また、途中で帰国してしまうケースも考えられるが、その際、帰国する国が日本と「年金通算協定」を結んでいれば、日本で納めた保険料は母国の年金に反映されるので、掛け捨てや2重払いの心配もないそうだ。
社会保険庁のWebによれば、2007年度時点で、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国、ベルギー 、フランスとは協定を締結済み、カナダ、オーストラリア、オランダについては、交渉中とのこと。
少なくとも、ここに上がった国の人については、もっと日本の年金をアピールすべきで、これに中国を加えれば、世界経済で主要な国の人を取り込むことも夢ではない。
そして、いささかずるいやり方かもしれないが、外国人が将来の日本永住を前提にすれば、日本の年金は世代間扶養が原則なのだから、日本人に住む外国人が支払ってくれる保険料によって、現役世代の負担は減り、引退世代の支給に賄うことも可能になるはずだ。
来てくれる外国人が若い世代であればある程、年金のみならず、所得税、住民税、消費税など税収面でもメリットが出てくるので、積極的に外国から若い人を呼んで日本で働いてもらうべきなのだ。
そうすれば、年金問題も解消されることだろうし、保険料や消費税も、今の想定程は上げなくていいかもしれない。
さらにいえば、祖国との行き来が増えれば、外国便に強みを持つJAL再生の一助になるに違いない。
ただ、いいことずくめのようだが、それには、日本が外国から人を呼べるほど、魅力的な国でなくてはいけない、という前提がつく。
これも難問だが、今なら、間に合うのではないか。
こうして、「内なるグローバル化」は日本の年金問題(JAL再生問題も?)を解決するかもしれない。
個人的には、身近に接することができる若い外国人が増えて、しかも、月々の年金負担が減る、なんてことを考えるだけでわくわくしてしまうが、皆さんはいかがであろうか?
また、グローバル化という観点では、年金運用利率は、日本の年金は、海外と比べ、かなり見劣りしている。
年金積立金管理運用独立行政法人が発表した、今年度上期における年金向け運用実績は5.0%になったそうだが、これに対し、ノルウェーの年金基金が18.2%、カルフォルニア州職員退職金基金は16.4%、カナダの年金基金が12.0%、スウェーデンが7.1%、となっているのでかなり見劣りしている。
同法人の発表によれば、運用における株式比率の違いが結果に表れており、債券中心の日本は、より「安全重視の運用」となっているそうだが、これは上記のような、今の日本の年金の実情から考えれば、由々しき問題ではないか。
きちんと運用すれば稼げる運用利益を稼いでいないのだから、機会損失も甚だしく、しかも、安易に足りない分を保険料や給付削減に付け替えているのなら大問題で今後の改善を期待したいところだ。
「内なるグローバル化」の推進-JALと年金問題を考えるシリーズの結びの言葉として提案したい。
K
前回のブログでは、JAL再建に向けて、下記のモデルを用い、海外におけるLow-Cost Carrier(LCC)などの事例を用いながら、πの最大化に向けた意見をまとめた。
π=p・q-k
π: 利益
p: 価格/単価
q: 数量
k: コスト
航空業界に携われている方から見れば突飛な意見ばかりかと思うが、裏を返せば、そのくらい飛躍的なことをしないと、重くのしかかる年金という、レガシーコストはおろか、日々の運営すらもままならない、ということだと認識している。
どう解決するかは関係者の対応次第であるが、仮に公的資金活用が決まった暁には、いたずらに税金がJALという一企業の資金繰りや企業年金の原資にならないよう、願うばかりである。
さて、今回は、日本の公的年金について、このモデルを用いて考えてみたい。
まず、前提として、年金がどんな収入と支出があり、また、これまでの累積として、どの程度、ストックがあるのかを調べなければならなかったのだが、これがなかなか容易ではなかった。。。
この仕組みをどうやって数十年も維持するのか、現在、年金原資を支払う保険者として、そして、将来は、それを受け取る受給者として、不安を感じなくはない。
ただ、不安ばかりを感じていては、前に進まないので、まず、その仕組みからみていこう。
まず、かなり基本的な仕組みであるが、日本の年金制度は、現役世代の保険料負担で高齢者世代の年金給付に必要な費用を賄う、「世代間扶養」で運営されていることを確認しておきたい。
いい方を変えると、現役時代、こつこつと保険料を払っても、将来、自分が受給者になったときに、その原資を払ってくれる現役世代の保険者がいなければ、成り立たない仕組みである。
この点が、少子高齢化が急速に進行している日本で、年金制度の不安を煽る要因となっているわけだ。
テレビでよく見かける、何人の保険者で何人の受給者を賄うというような紹介をされると、日本は少子高齢化社会を迎えるので、年を経れば経るほど、保険料を支払う保険者の人数が少なくなっていく。
最も直近の厚生省のデータによれば、国民年金も厚生年金も、現在、だいたい2.6人に1人を養うようになっているらしい。
次に、収入、支出、そして積立金について。
(収入の構成)
1. 保険料収入(現役世代が支払うもの)
2. 国庫負担(国が「金庫」から負担する分)
3. 財産収入(専門の独立法人が年金運用から生みだした収入)
(支出の構成)
4. 給付金(年金受給者が受け取るもの)
5. 基礎年金拠出金(国民年金に使われるお金で、主に厚生年金と共済年金から支払われる)
この収入と支出の差額が、毎年、年金の積立金となって貯まっていく。
だから、冒頭のモデルを当てはめると、以下のようになると想定できると思う。
π= 年金の積立金
p・q= 保険料収入(=保険を支払う人 X 保険料)+国庫負担+財産収入
k= 給付金+基礎年金拠出金
年金原資が多ければ、年金支給もより安定すると解釈できるので、この設定で無理はないだろう。
今回、年金積立額の残高を調べてみたが、今年2月に試算された財政見通しでは、今年度末の積立金は144.4兆円、2050年度には544兆円を越えると書いてあり、やれやれ安心と胸をなで下したのも束の間。。。
これは、あくまで現行制度下の話で、5月に発表された厚生省の発表では、仮に給付財源について、あらかじめ蓄える「積み立て方式」に当てはめると、財源不足は現時点で500兆円になるという。
何がどうなるとそこまで差が出るのか、甚だ疑問であるが、いずれにしても、この144兆円を鵜呑みにするのも危険である。
ついでなので、厚労省が打ち出す、2050年度に500兆円を越える試算もこのモデルを用いて説明できそうだ。
まず、収入サイドについてであるが、基礎年金給付額に対する国庫負担金の割合を今年度から1/3から1/2に引き上げ(実施済み/p・q増)、保険料を現行の15.35%から2020年度には18.3%まで増やし(p増)、このデフレまっただ中な状況で、賃金上昇率を2.5%と仮定し、運用利回りの設定も4.1%へと引き上げている(p・q増)。
(ちなみにJALの年金運用利回りは、4.5%から1.5%に引き下げるべく交渉しようとしている)
一方で、支出サイドだが、経済成長率も出生率も中レベルとして、平均的な所得レベルから置き換えた比率を、2038年度以降、50.1%を保つとしているが、今年度の62.3%から10%以上削減する見込みを立てている(k減)。
また、一方で、年金の安定収入確保のために、消費税率を上げるという議論が上がったりしている。
この試算とて何もかも反対なわけではないが、すべてが「仮定通りになれば」という但し付きになるし、また、どれもこれも、中身のない財布からお金をむしり取ろうとしているようにしか見えないが、これ以外にどんな対策が打てるか?
先のモデルを用いて考えた時、これらの試算や意見で漏れていることがある。
国庫負担金、保険料、運用利回、消費税などの目的税は、いずれもpの要素に偏りすぎているように思えるのだが、qを増やす、つまり、保険料を払ってくれる人を増やす、という視点が欠けているように思えるのだ。
そういうと、必ずといっていいほど、出生率の話につながるが、子供が保険料を払うまで年数が掛かりすぎる。
そうではなく、今すぐにでも保険料を払ってくれる人、すなわち、日本に居住してくれる外国人を増やせばいいと思う。
調べてみると、日本の年金制度に国籍は関係なく、「日本国内に住所を有している」と、年金についての権利・義務が発生するそうである。
だから、外国人にとっては、保険料の支払い義務が発生する一方で、受給の権利ももらえるため、老齢年金であれば日本人と同じく25年以上の受給資格期間を満たせば年金が支給されるとのこと。
また、途中で帰国してしまうケースも考えられるが、その際、帰国する国が日本と「年金通算協定」を結んでいれば、日本で納めた保険料は母国の年金に反映されるので、掛け捨てや2重払いの心配もないそうだ。
社会保険庁のWebによれば、2007年度時点で、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国、ベルギー 、フランスとは協定を締結済み、カナダ、オーストラリア、オランダについては、交渉中とのこと。
少なくとも、ここに上がった国の人については、もっと日本の年金をアピールすべきで、これに中国を加えれば、世界経済で主要な国の人を取り込むことも夢ではない。
そして、いささかずるいやり方かもしれないが、外国人が将来の日本永住を前提にすれば、日本の年金は世代間扶養が原則なのだから、日本人に住む外国人が支払ってくれる保険料によって、現役世代の負担は減り、引退世代の支給に賄うことも可能になるはずだ。
来てくれる外国人が若い世代であればある程、年金のみならず、所得税、住民税、消費税など税収面でもメリットが出てくるので、積極的に外国から若い人を呼んで日本で働いてもらうべきなのだ。
そうすれば、年金問題も解消されることだろうし、保険料や消費税も、今の想定程は上げなくていいかもしれない。
さらにいえば、祖国との行き来が増えれば、外国便に強みを持つJAL再生の一助になるに違いない。
ただ、いいことずくめのようだが、それには、日本が外国から人を呼べるほど、魅力的な国でなくてはいけない、という前提がつく。
これも難問だが、今なら、間に合うのではないか。
こうして、「内なるグローバル化」は日本の年金問題(JAL再生問題も?)を解決するかもしれない。
個人的には、身近に接することができる若い外国人が増えて、しかも、月々の年金負担が減る、なんてことを考えるだけでわくわくしてしまうが、皆さんはいかがであろうか?
また、グローバル化という観点では、年金運用利率は、日本の年金は、海外と比べ、かなり見劣りしている。
年金積立金管理運用独立行政法人が発表した、今年度上期における年金向け運用実績は5.0%になったそうだが、これに対し、ノルウェーの年金基金が18.2%、カルフォルニア州職員退職金基金は16.4%、カナダの年金基金が12.0%、スウェーデンが7.1%、となっているのでかなり見劣りしている。
同法人の発表によれば、運用における株式比率の違いが結果に表れており、債券中心の日本は、より「安全重視の運用」となっているそうだが、これは上記のような、今の日本の年金の実情から考えれば、由々しき問題ではないか。
きちんと運用すれば稼げる運用利益を稼いでいないのだから、機会損失も甚だしく、しかも、安易に足りない分を保険料や給付削減に付け替えているのなら大問題で今後の改善を期待したいところだ。
「内なるグローバル化」の推進-JALと年金問題を考えるシリーズの結びの言葉として提案したい。
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