2009年10月11日日曜日

経済発展と環境にやさしい社会の実現 ~『Gaia Capitalism』

私の住むこの街では、昨日と本日、年に一度の大イベントが開かれ、大いに賑わっている。

「Jazz Promenada2009」と題される、そのイベントは、日本からはもちろん、海外からもJazzミュージシャンが集い、それこそ、一日中、市内の各ホール・イベント会場で何かしらJazzの演奏が楽しめる。

ここ最近、Jazzライブに足しげく通う私にとって、(今の若い人の表現を借りれば)「やばい」イベントなのである。

昨日は、今月から始めたヨガのレッスンで精神と肉体を「清めた」後、その足で会場に向かい、ほぼ半日、いろんな場所でそれこそJazzで「お腹がいっぱい」になるような気分が味わえた。

ヴィブラフォンとピアノのデュオから始まり、ブラジル出身のアーティトが奏でるサンバのリズム、アメリカからの参加したピアニストがリードする伝統派Jazz、そして、日本のJazzの重鎮が集ったオールスターセッションなどを満喫、本当に素晴らしい演奏ばかりだった。

なかでも、最後のセッションのSaxの音色はとても「艶やか」に感じ、会場を出るころはうっとりしてしまった。

やはり、たまにはこういう右脳の刺激は貴重である。


さて、本日の本題。

昨今の「ホットな」課題の一つに環境問題がある。

鳩山総理の国連の演説で、温暖化ガスを2020年までに1990年比で25%削減する中期目標を表明したのは記憶に新しい。

読売新聞によれば、国民の7割以上がこの表明に賛成の意向を示したというが、これに対し、産業界の反応はやや冷やかだ。

いまのところ、7日に経済同友会が賛同の意を表明した以外、反対と慎重な姿勢を表明するほうが多い。

こちらの以前のBlogでもお伝えしたが、この課題について話す経団連の御手洗会長の表情はとても堅く、バブル後に日本経済をけん引してきた会社のトップとは思えないほどだ。

この背後には、温暖化ガス削減の取り組みが企業に大きな負担がある。

特に日本は輸出主導の製造業がけん引する産業構造なので、工場などで排出される温暖化ガスの取り扱いは、極めてSensitiveな課題と言わざるを得ない。

しかし、だからこそ、前向きに取り組む価値があるという見方もあるはずで、その辺は先の経済同友会の会長 桜井氏が会長を務めるリコーや、2日の会見でハイブリッド車の供給などを通じて積極的に温暖化ガス削減に取り組むことを表明したトヨタ自動車などの姿勢をみると、明るい材料もあるのも確かだ。

確かに、当初、企業側は大きな負担を強いられるのだろうが、その取り組みは最終的には環境意識の高い消費者から支持されるはずだ。

また、CSRの観点で投資先を選別する投資ファンドもこれまでになく、増えてきているので、投資家からの支持もほぼ間違いないだろう。

だから、もっと地球温暖化に積極的に賛同の意を示す企業、及び経営者が出しきて欲しいと強く思っているのだが、世界には既にトップ自らが旗を振って積極的に取り組んでいる会社もある。

メディアや航空会社、鉄道など参加に幅広い事業を持つ、Virgin Groupはひとつのベンチマークになるだろう。

今、そのVirginを率いるトップ Richard Branson氏の著書「
僕たちに不可能はない」を読んでいるが、その本では、Branson氏が提唱している『Gaia Capitalism』というコンセプトが紹介されている。

一言でいえば、自社の事業の発展と環境問題を両立させようというコンセプトなのだが、2006年にAl Gore氏のプレゼンで環境問題に「目覚めた」Branson氏が、自社グループで何ができるか検討を重ねて打ち出したひとつの方向性である。

本のなかでは、Branson氏は以下のように述べている。

「この名前(=Gaia Capitalism)の下にベンチャー・キャピタル的ビジネス手法によって、今後10年間、Virginが正々堂々お金を稼ぎながら世の中に本当の変化をもたらすと信じている」

航空事業などを傘下に収めるVirginにとっても、少なからず、負担を強いられる課題であるはずなのだが、Branson氏の想いは相当なものだ。

なんでも、2004年から2006年の間にVirginが支払う航空燃料は5億ドル(当時のレートで約520億円)も上昇していたそうで、そういったコスト要因の解決という意味合いもあるようだ。

例えば、航空滑走路において一部飛行機を特殊車両でけん引することで燃料代を削減する案や代替エネルギーの研究なども提唱している。

結果的に具体策としては、温暖化問題の解決につながるアイディアに賞金を出すような、先にコメントにもあるベンチャー・ファンドの創設に結びついた。

様々な具体策のひとつひとつについての是非はあるだろうが、最も大事なことは、企業が、特にそのトップ自らが環境問題の重要性を理解し、Sustainableな社会の実現に向けて取り組むことである。

引退を目前に、花道を飾りたいトップでは無理かなぁとは思いつつも、先のBranson氏も来年は還暦を迎える(イギリスにはそういう考え方はない?)。

その氏がここまで情熱を燃やすのだから、年齢は関係ないはずだ。

要は、課題に取り組む意思(Intent)と、状況変化に応じてプライオリティを置き換えられる柔軟さ(Flexibility)である。

早く産業界版「鳩山イニシアティブ」を打ち出す気概に満ちた日本の経営者が出てきてほしいものである。

K

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