それはヴァイオリン奏者の寺井尚子さんで、演奏の実力もさることながら、ルックスの良さに加え、情熱的な演奏はこれまでにないもので、当時、私が読んだ新聞記事は、今までにない新しいジャンルを切り拓く期待の新星、と紹介していたように記憶している。
勉強を終え、会社勤めに復活したら、いつかコンサートに行こうと思いながら、この数年、なかなかそれが実現しなかったのだが、今週、その機会が突如、訪れた。
先週のJazzイベントのさなか、会場のポスターで近くのホールでコンサートが催されるのを知ったわけだが、平日開催だったために行けないことも考えられ、あまり意識しないように過ごしてきた。
だが、コンサート当日となる昨日金曜日、仕事が早く切り上げられそう期待がもてた時点で、早速、空き状況を確認するため、電話をしてみた。
「はい、いのちの電話 事務局でございます」
ん?
この一週間というもの、仕事のことを気にしつつ、チケットが手に入るか否かは私にとって相当な懸案事項だったが、いのちに関わるほど深刻ではない。
間違い電話??
「あの~、本日の寺井尚子のコンサートのことでお電話したのですが・・・」
「ご連絡、ありがとうございます。このお電話で承ります」
あれっ?この電話でよかった??
手元の資料を見てわかったのだが、今回のコンサートは、いのちの電話が企画したコンサートだったのだ。
電話で当日券に余裕があることを確認し、早々に仕事を切り上げて会場に向かったわけだが、会場に着いてさらに驚いた。
先週の市を上げてのJazzイベントや日頃出掛けるJazzバーとは明らかに異なるシニアの方々で、会場がごった返していたからである。
会場のホールは、おじさま、おばさま方でほぼ満員、入口の付近で催されていたバザーにもシニアの方々がたくさんいらっしゃった。
おそらく、寺井さんのコンサートを通じて、いのちの電話の活動を広く知っていただくとともに、同時に催されるバザーや寄付などで活動資金を集めるのが目的なのだろう。
まさしく寺井尚子さんにつられてきた私のような新参者は格好のターゲットだったわけだが、来場者の多くはいのちの電話の活動を支援している方と思われ、会場ではその熱気に押されるようだった。
寺井さんのライブは予想に違わず、素晴らしく、そのヴァイオリンの音色にすっかり魅了されてしまったが、純粋な音楽好きが集う会場とは、また、違う雰囲気に触れて、こういう社会的な支援の仕方もあるんだなと実感した次第である。
家に帰って調べたところ、いのちの電話のボランティアスタッフも高齢化が進み、これまで続けてきた24時間対応ができない地域もでてきたようなので、今回のような活動によって、少しでも、いのちの電話に助けを求める人たちや運営側に回っているスタッフへの理解が高まり、社会的に後押しできる機運が拡がればいいと思う。
それにしても、その主役の一端を担っているのが、その会場にいらっしゃったシニアの方々かと思うと、「世代間格差」などと軽はずみに、シニアの方々に対してやや刺激の強い主張をしてきた自分が恥ずかしくなってしまった。
一方で、私も含め、もっと若い世代が後押ししてもいいんだろうとも思う。
前回紹介した、Virgin GroupのRichard Branson氏の本(
僕たちに不可能はない)によれば、Virgin Groupはチャリティー活動として、いのちの電話と同じような活動をVirgin Uniteというプログラムで行っているとのこと。
しかも、この取り組みはVirginが大きくなってから始めたものではなく、Virginの初期の事業のひとつである、「Student」という雑誌を発行していたときから行ってきたものだという。
社会貢献活動において先駆けた取り組みの多いイギリスならではの話だと思うが(いのちの電話ももともとはイギリスの活動にヒントを得たものとのこと)、近年、うつ病を発症する方や自殺者が増加している日本でも、もっと社会的なインパクトを持てるように、活動に厚みが出てくることを期待する。
個々人の活動に対する支援の気持ちが重要なのは疑いようもないが、今回のような著名なアーティストやVirginのような世界的な企業の協力を仰ぐような、広報的なアプローチも必要だろうと思う。
これはマーケティング活動と同じような考え方だと思うのだが、認知もなく、関心も持たれないことにサポーターの協力は得られない。
そう思うと、対象がなんであれ、自分の得意な分野で社会に役立つことができるのではないか思えるわけである。
楽器がまともに演奏できない自分には音楽で社会貢献はできないだろうが、自分の好きなことや強みと思えることで何か役立つことができるかもしれない。
そういう想いに至ったことで、今回のコンサートはいいきっかけを与えてくれたと思うと同時に、自分に何ができるのか真摯に考えなければならないという想いが強くなった次第である。
K
P.S.
本当は、今日、参加したイベントで実感した、シニアの方々によるもうひとつの社会貢献活動を紹介したかったのだが、やや長くなったので、また、機会があったら、紹介したいと思う。
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