2009年7月19日日曜日

「スマート消費」-「The Rise of the Rich」-Entrepreneurship

既にご覧になられている方もいらっしゃると思うが、17(金)より日経新聞では、「スマート消費が来る」というタイトルで、経済危機後に顕著になってきている新しい消費スタイルを紹介している。

これまでの教科書に代わって使われる、アマゾン・ドット・コムの電子書籍端末「Kindle DX」、話題の村上春樹著「1Q84」の上巻を新刊、中古で売りわけるフタバ図書TERA、カーシェア世界最大手のジップカーなどの事例が紹介されている。

また、第1回となる17日(金)の記事で、豊かさを手に入れた後は「所有より効用が重要になる」とする、仏経済学者 ジャック・アタリ氏の論説(「所有の歴史」)も紹介された。

一方で、昨日の記事では、そのような消費トレンドを裏付けるデータとして、日本の大手企業の売上高を危機前の2008年3月期と10年3月期予想を比較し、自動車の売上高は35%、電機は21%の減少としている。

この特集記事の印象が頭の片隅に残るなか、昨日、経済史について意見を交わす機会があった。

主要なテーマのひとつとして、New Liberalism、Political Economy、という2つの軸で経済動向を分析する手法が紹介され、前者はFinance Capital(金融資本)/Small State主導(=小さな政府)・Middle Classの地位低下、後者はProduction Capital(メーカー資本)/Big Sate(=大きな政府)・Middle Classの地位向上、が顕著になるとしていた。

これらの軸は、社会情勢により行ったり来たりするとのことだったが、最近はさらに3つ目の軸として、国家・政治の枠組みを越えた、企業・個人によるmultilateralismの台頭(The Rise of the Rich)も認識される、という意見だった。

このフレームワークを使い、それでは、今の日本はどうだろう?ということを問題提起してみた。

私は、日本は輸出主導の製造業が産業の中心、基本的に政府の関与が大きいものの、昨今の派遣問題に見られるように、必ずしもMiddle Classの地位が安定しているわけではない、という認識の下、これら2つの軸における状況はきれいに分けづらいのでは?と問題提起を行った。

それに対して、日本はPolitical EconomyからNew Liberalismへ移行期ではないか、との意見が寄せられ、妙に合点がいった。

中国・韓国・台湾・インドなどアジア系新興国が労働集約を武器に、製造業において攻勢をかけるなか、このまま、日本の輸出製造業主導の経済が見直されないわけはない。

そうしたなか、かつてアメリカがそうだったように、New Liberalismが台頭し、製造業のような資産・人的資本中心の社会から、規制緩和などを通じた、金融資本中心の社会となり、持てるもの・持たざるものの格差が広がってしまう、というシナリオが全くあり得ないと言い切れるだろうか。

前段の事例は、その兆候と見れなくはない、という想いが重なり、なおのこと、合点がいってしまったのだ。

ただ、昨日の議論では、そのやり取りの前に、New Liberalism、Political Economyの間の行き来のなかで、その兆候を個人として取り込めれば、The Rise of the Richの一員として、個人が活路を見いだすことも可能ではないか、という意見があった。



その第3の軸が個々人のライフスタイルにうまく反映できれば、これはこれでHappyではないかという気もした。

名の通った会社でも、政治・行政でもない、それら既存組織・団体ではない、個人が社会に働きかける社会。

かつて、Peter F. Druckerは、Innovationは、既存の枠組みで縛られた大企業ではなく、小規模な組織・団体で促すべしとし、Entrepreneurshipの重要性を「Innovation and Entrepreneurship」(翻訳タイトル「イノベーションと企業家精神」、ダイヤモンド社)で説いた。




1985年の著書ということだから、まさしくレーガンの新自由主義政策が推進、小さな政府が標榜され、経済では日本メーカーの台頭により製造業の凋落が始まり、金融へのシフトが始まりだした、ちょうど歴史的な転換期のなかの著書であった。


経済・政治の落ち込みとともに、個人の生活が息詰まるのではやりきれない。個々人の小さい活動の積み重ねから、大きな変化・トレンドを生み出せるようにできないものか。

環境への依存心が強くてもいけないが、日本が、今、確実に個人の生活が重視される社会に動きつつあることを願いたい。

K

P.S.
以後、また、機会があれば、「The Rise of the Rich」についてこのBlogでふれていきたい。

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