2009年7月5日日曜日

債務超過に陥る30代 ~不安的な環境にどう臨むか?~

先週、日銀短観が発表された。

短観に対するマスコミ各社の反応を見るに、景況感は大底を打って持ち直しているという見方だった半面、設備や雇用には依然、過剰感が強まっている、という論調で報じているところが多かったように思う。

なかには、「企業は過剰感が緩和に転じると見込むが、設備投資の抑制や人件費削減はさらに強まる恐れもある」(7月1日 ブルームバーグ)の見方を示すところもある。

先週、このブログで物価と雇用の関係から今後も厳しい雇用状況が続くとお話ししたが、この短観の内容は、雇用環境の厳しさが裏付けられたような格好で、いささか複雑な心境だ。

そんななか、並行して、日経新聞では、「家計の選択」という特集記事が組まれた。
(日経新聞を読み返されるのもいいが、「金さんのセカンドライフ自立への道」というサイトでは各記事がJPEG形式で読めるようになっている)

その記事から、もはや貯蓄性向の高い日本人という姿がなくなりつつある現状がうかがい知れる。

不安定な雇用を反映して消費を手控える若者層の姿(「シンプル族」)や、実質的に親子孫で住居などもまとめて「連結」する家族、やや行き過ぎたものだと、なけなしの金利に満足できず、「貯金頼みも限界」として高リスク・ハイリターンを目指す20代の女性の運用の姿なども描かれている。

日経新聞をはじめ、マスコミ各社の悪いところは、変化する経済・金融の実情・実態を考慮せず、金融機関の押し売りに歩調を合わせたかのように、「貯蓄から運用へ」のようなキャッチ・フレーズで、リスク・マネーにお金を向かわせようとするところである。

往々にして、このような煽りを受けて、リスクに無自覚なまま、お金をつかうと、多大な被害にあう。

その記事のなかで、私が胸を痛めたのが、住宅ローンの返済に追われる30代のサラリーマンの姿である。

 『「残業がなくなって返済が困難になった」。東京・杉並の日本司法支援センター(法テラス)のコールセンター。相談の中心は30~40代だ。5月は住宅ローン返済にかかわる相談件数が前年同月から約6割増えた。』(2009/06/30、「家計の選択(下)揺らぐ「国富の8割」―閉塞打破は資産活用から」、日本経済新聞 朝刊)

5月に相談が増えたのは、予想外のボーナスの減額にあわてたからであろうか。

さらに、純貯蓄は減り、「債務超過」となった働き盛りの姿は赤裸々に語られる。

 『住友信託銀行によると、勤労者世帯の貯蓄から負債を引いた純貯蓄は2008年で588万円と10年前に比べ2割減。30代に限れば、純貯蓄が77万円のプラスから157万円のマイナスとなった。マイホームを手に入れるなら、若くて、金利も低い今のうちに――。こんな判断をした働き盛り。雇用や所得への不安で「借金も財産のうち」とは言いにくくなった。』(2009/06/30、「家計の選択(下)揺らぐ「国富の8割」―閉塞打破は資産活用から」、日本経済新聞 朝刊)

貯蓄から負債を引いた純貯蓄は若い世代ほど多くなっているという。各世代の純貯蓄の推移は以下のとおり。

30代: 77万円(1998年)→マイナス157万円(2008年)
貯蓄現象の要因: 最大の要因は住宅取得。30代で住宅ローンを借りている人の割合は「08年に37.9%と00年代に入って6ポイント強上昇した」(住友信託銀行)。
 
40代: 464万円(1998年)→242万円(2008年)
貯蓄現象の要因: 住宅取得などで負債が増える一方、子供の教育にお金がかかる時期にあたることも貯蓄水準の下押し要因に

50代: 1,280万円(1998年)→1,075万円(2008年)
貯蓄現象の要因: (日経新聞での言及はなし)

もちろん、各世代ともに10年経てば年をとるので、2008年の40代は10年前の30代であり、これも世代間ギャップが反映されているといえるだろう。

言い換えると、バブル期以前に社会人になっていた世代は純貯蓄を保ち、バブル崩壊後世代は、債務超過に陥っている、と。

その要因は、雇用の不安定が増すなか、バブル期以前に入社した世代に倣い、低金利というベネフィットのみに目を向けて多大な借金までして住宅を取得したことによるという。

しかも、住宅ローンを借りている30代の人の割合が2000年に比べて増えている。

一方で現実に目を向ければ、冒頭の短観ではないが、この先、しばらくは雇用環境は上向かないだろう。

5月に住宅ローン返済に関する相談件数が6割も増えるくらいだから、恐らく30代を中心に、住宅ローンによる債務超過の問題が顕在化するに違いない。

その時を見越して、どう予防線を張るか?

結婚して所帯をもっている人はお金を持つ両親世代との同居で生活を「連結」してしまうのがベターであろう。

貯蓄に余裕のある世代と一緒になることで経済的にも負担が共有できるし、老人介護という観点からも、一定の合理性があると思われる。

生活が落ち着いたならば、親と同居というのも悪くないだろう。

ならば、単身世帯はどうするか。

ルーム・シェアなんかどうであろう?気心のあった人と一緒に住居を賃貸する。

経済的な負担もあるが、昨今の自殺が増加している原因は人との関係の希薄化だと思う。孤立化は避けなければならない。

私も社会人になって大学院で勉強したときは寮生活に戻った。

当初、30歳を過ぎて寮生活なんて、プライバシーは保てないし、拘束されることが多くなるのではと懸念したが、実際はそれほどでもなく、むしろ、気軽に話ができる環境が快く感じた程だった。

そんな人と人とのつながりが「緩めに」拘束される環境がひとつの解になる気がする。


K

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