2009年2月7日土曜日

Winners and losers in IT Industries <2> -Apple

会社に入社したての十数年前、AppleのMacintoshを持つということはそれなりのステータスで、冬のボーナスと身内から借りたお金で最初にMacを買ったときは、このうえなくうれしかった。




でも、今の20代の方は、Appleといえば、Macというより、iPodやiTuneの印象のほう強いだろうか。これらのポータブル・オーディオ製品とサービスは、若い人の「Way of Life」を変えたと言っていいだろう。そのために、痛手を負った日本の電機メーカーも数知れず。。。




そして、その「i」カルチャーは、ついに携帯電話に進出した。日本でも昨年、Softbankの携帯電話端末としてリリースされた。Mac世代からすると、iPhoneなんて、まだ、「ひよっこ」くらいの印象しかないが、このiPhoneが、今や、Appleの牽引役となっているのだ。
iPhoneは、「Apple computer Inc.」から「computer」が抜け、「Apple Inc.」にさせた象徴的な商品だ。

先のIBMと同様に、Appleの事業内容を商品ごとに見ていただきたい。

<事業別売上構成>



<事業別売上成長率>



どの商品がどれくらいの割合が占めているか、というのに、サプライズはあまりないであろうが、成長率については、驚かれる方も多いのではないか。実は、Appleの成長を担い、この未曽有の不景気に負けない業績が残せているのは、このiPhoneのお陰といっても過言ではない。

売上高で10%そこそこの商品が、なぜ、そんなに影響力をもっているのか。実は、会計システムが多分に影響している。下記は、CNET News.comのTom Krazit氏の記事。iPhoneを巡る会計処理と、Apple全体における事業インパクトが読み取れる。

「Appleでは、サブスクリプションベースの会計処理方法を使って、iPhoneとApple TVの(将来にわたる)売り上げから売上高を想定している。
(中略)
iPhoneのすべての売上高は24カ月間で計上されることを発表し、iPhoneのソフトウェアアップグレードを無料で提供できるようにした。
(中略)
 この会計処理の問題点は、iPhoneの販売に関連する売上高の大半が先送りにされるため、販売されてからかなり時間が経たないと、そこからいくらの売上高および利益が生み出されているのかを投資家が判断するのが難しいということだ。しかも、Appleは、iPhoneの販売に関連するエンジニアリングおよびマーケティングの費用については24カ月間ではなくその費用が発生した四半期で計上しなければならない。」
(「「iPhone」がアップルの最重要製品になった理由--第4四半期決算を読み解く」よりURL: http://tb.japan.cnet.com/tb.php/20382535 )

お分かりであろうか?iPhoneの売上は、米国公認会計士協会の意見書「SOP97-2」に従い、契約期間に按分して売り上げを計上する「サブスクリプション・アカウンティング」を採用し、2年間に分割して売り上げを計上している。つまり、2008年2月に399ドルのiPhoneを1台売って、2008年9月期決算で計上できる売り上げは399ドル×8/24カ月で133ドルとなる(引用元:「iPod Touch 有償アップグレードの不思議 経済のサービス化で変わる売り上げの計上基準」杉田 庸子氏 著/URL: http://business.nikkeibp.co.jp/article/pba/20080221/147767/」)。このため、一時的な経済環境の悪化などの外的要因には左右されないしくみになっているともいえる。しかも、SGAとしてカウントされるマーケティング費用は発生月で処理されるのであれば、あらかじめ予測された売上の範囲で、費用をコントロールすることも可能であろう。

対称的に、アメリカでiPhoneを採用している携帯電話会社のAT&Tは、iPhoneを200ドルで支給するために、Appleに支払った補助金が利益を圧迫し、その他の費用も加わって、前年同期比で減益となったと発表している。ただ、これもiPhoneユーザーが、インターネット閲覧などよりデータサービスを利用するという皮算用があってこその支援である。

強い商品力と決算期毎にブレない会計処理・・・他のIT企業との差はこんなところから出ている。Steve Jobs CEOの体調不良のために、今後の同社の先行きを危ぶむ声もあるが、そう容易にAppleの優位性は崩れそうにない。

K

英文会計の勉強には・・・

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