2009年6月21日日曜日

日本のGDPが世界第3位になるということ・・・日本の備えは?

今週、中国の方と仕事で接する機会があり、その熱意の程とビジネスの勘どころの鋭さに驚かされた。

そんなことがあったので、近い将来、中国の経済は日本を追い抜くだろうなぁ、と、漠然と考えていたところに、以下の記事を見つけた。


「課題解決型国家」を目指せ=中国に抜かれる日本の針路-通商白書

 経済産業省は19日の閣議に2009年版通商白書を報告した。名目GDP(国内総生産)で世界3位の中国が来年には日本を追い抜くとの国際通貨基金(IMF)の経済予測を踏まえ、「『世界2位の経済大国』としての(日本の)地位も残りわずか」と、日中逆転に初めて言及。その上で、日本の針路として「課題解決型国家」を掲げ、地球温暖化をはじめ世界が直面する問題の解決に貢献することで存在感を示すよう訴えた。
(2009/06/19-09:29)


バブル後遺症を引きずってきた日本を傍目に、開放政策の下、高い経済成長率を実現し、日本の10倍もの人口を抱える国内市場も活気づき、頭ではいつかは抜くだろうとわかってはいても、その時が、もう来年に迫っていると考えるとなかなかの衝撃である。

記事で紹介されているほど、中国に抜かれるからこういう施策が必要、というトーンではないのだが、「2009年版 通商白書」では、様々な厳しい現実を受けとめ、今後日本が取り組むべき指針がまとめられている。

興味がある方は、リンクにアクセスして、直接、ダウンロードしてご覧いただきたい。「概要版」のほうは、パワーポイントスタイルでまとめられているので、内容を確認しやすいだろう。

こんなかで、日本が取り組むべき重点施策について、4つのことに言及している。

1.「内外一体の経済対策」:貿易立国日本にとって世界の内需拡大が最大の景気対策
~ アジア経済倍増構想の推進
~ 保護主義の抑止(WTOドーハラウンド、経済連携協定等)
~ 電力・交通・水ビジネス等のインフラ関連産業、サービス産業コンテンツ産業の国際的展開

2 「ボリュームゾーン・イノベーション」:投資先の多角化には新興国の市場開拓が必須
~ 低コスト化技術による新たなイノベーションの促進
~ 投資協定、知的財産保護による投資環境整備
~ 海外投資収益の国内還流促進

3.低炭素革命の世界展開:地球的課題に対応する「課題解決国家」を目指す
~ 省エネ国際協力等の推進
~ 低炭素技術を軸とした海外市場戦略の推進

4.資源国への産業協力等の重層的展開:大学連携や環境技術提供など幅広い産業協力の推進
~ 技術等を資源国に提供し国作り支援
~ 観光・教育など幅広い分野での交流の強化


これを見てどう思いになられるだろうか?

はたして、この方針で日本の根本的な課題は解決できるであろうか?

経済産業省がまとめる「通商白書」という性格上、経済発展、産業復興の視点から自体と解決策をまとめるのは致し方ないだろう。

ただ、昨年からの金融危機からダメージ、そして、昨今の経済回復の遅れの原因となっている、輸出主導型製造業を軸とした日本のビジネスモデルの脆さの解決につながるであろうか?

これは環境問題の解決策にも表れる。あくまで、技術輸出型モデルの視点でしか語られていない。

その点については、6月10日の麻生首相の記者会見で公表された、温室効果ガス削減目標の背景にも通じるところがある。

麻生首相はこの発表のなかで、2005年比で温室効果ガスを15%削減するために、1世帯当たり4万円/年の可処分所得の負担と、光熱費 3万円/年の負担をお願いしたいという。

この国民負担については、種々、マスコミで指摘されていることではあるが、私は冒頭の日本の重点施策という観点からとらえてみたい。

まず、低炭素社会実現のためには、そもそも二酸化炭素の出ない社会を目指すのが筋であろう。

よって、これまでの工業化路線から、徐々に脱・工業化社会を目指すべきである。

さらに、二酸化炭素の排出を少なくするとともに、排出したものをいかに削減するかも必要なので、ビルや街の緑化政策というレベルのみならず、絶対的な資源・食料不足を背景とした食料自給問題を正面から取り組む意味でも、農業政策を今後の政策重点課題とすべきであろう。
(ここら辺は経済産業省では打ち出しにくい方策ですね)

以上を踏まえて、今後、日本が戦略的に取り組むべきは、高い輸出主導の工業化比率を下げて、国内の食料受給率を上げて安心・安全な食料を確保し、環境にやさしい社会を実現するために、農業化比率を上げる政策だと思う。

1日の暮らしを振り返って、自分の身の回りで接することの多い財・サービスの充実、言い換えると、余分なお金を払わずに日々の生活を享受できることを目指すべきだと思う。

そのために、農業分野での規制緩和は必要であろうし(例えば、事業会社の参入を促す…とか)、若い世代の雇用の受け皿になれる農業事業も必要である。

その結果として、輸入に伴って外国へ支払ってきたお金を国内に留め、農業シフトを促すことで都市から地方への動きが促進され、持家・家賃から食料・生活費までのコストが全般的に下がるであろう。

これが実現すれば、お給料が飛躍的に上がりはしないかもしれないが、国内における職業の確保は維持、もしくは上昇、生活関連の価格上昇を抑えることも期待できるのではないか。

この結果、相対的にインフレの起こりにくい(むしろ、ややデフレ気味?)環境も整い、社会保障費の不足という課題にも一定の効果があるように思う。


太陽光発電も大いに結構。

ハイブリッド車や節電家電の普及も結構。

「エコ」の名の下で、ゴミの分別も進めるのも結構。。。


でも、これで飛躍的に我々の生活が変わるのであろうか?

もっと切実な言い方をすれば、10年後も豊かな社会を実感して生活できるのであろうか。


GDPのような規模の大きさを追い求めず、会社のため、とか、社会のため、とかいう前にまずは、自分たちの周りの生活に豊かさを実感できることが重要なのであろう。

その意味で、GDPが3位になろうとそれ自身は根本的な問題ではなく、むしろ、各人の生活に不安がなく、明日への望みが持てるように、国内の課題に向き合い、それを克服できる「課題解決型国家」となることが重要なのだろう。


K

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